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第1章 光の導き手
第27話 後悔
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「まさか……ユキとこんなに早く共闘出来るとはね!」
二人の少女がいるであろうルクス二階への階段を駆け上がっていたレンは、目の前を走るユキに向けて告げた。
「嫌なの?」
「そんな訳無いよ。相手の実力が解るからこそ、信頼出来る君に僕は心の底から背中を任せる事が出来るからね!」
「……そう」
二人は長い階段を数分間登り続け、ようやく二階に辿り着く事が出来た。
「ようやく着いたわね……実際に登ったのは初めてだけど、ホントこの階段長過ぎ」
「そうだね……ん?ちょっと待ってユキ」
「何よ。あそこにいる女でしょ?流石に気付いてるわよ」
ブルーグリーンの髪をした少女ティーレは、障害物の無い二階中央で、双頭刃式の槍を両手で持ったまま二人の到着を静かに待っていた。
「いや、一人足りな——」
「お前の相手は私!」
レンが視線の先に見えるティーレに違和感を感じた瞬間、レンの言葉は背後から突如現れた少女の叫びによって遮られた。
背後から現れた桜色の髪をした少女アイリは、ユキに向け薙刀を一閃した。
「なっ!」
咄嗟に振り向こうとするレンを突き飛ばしたユキは、同時に雪月花を創造した。
「とっくに気付いてたわよ。気配消すの下手なんじゃないの?」
自身に向けて振るわれた薙刀を、ユキは雪月花で受け止めた。
階層内に金属音が響き渡り、両者の刃から激しく火花が散った。
「は?……甘く見ないでっ!」
「くっ!」
少女は競り合いを力任せに押し切り、ユキを後方へと吹き飛ばした。
「ユキ!」
「私の事は良いから!あんたにはあんたのやる事があるでしょうが!」
吹き飛んだユキは、レンに向けて叫ぶと後ろ向きに一回転した後に着地し、アンリからの追撃に備えた。
「まだまだよ!」
少女は薙刀を両手で回しながら接近すると、勢いを殺す事なくユキに向けて振り下ろした。
「単調な攻撃してんじゃ無いわよ!」
ユキは雪月花で、振り下ろさせた刃を受け流しながら刀身を滑らせる様に接近すると、柄頭でアイリの顔を突いた。
「ぶっ!」
顔面を突かれたアイリは、後方へと吹き飛ばされ床に倒れ込んだ。
「ユキ……任せたよ」
ユキの戦闘を見守っていたレンは、中央で未だに立ち尽くしている少女へと駆け出した。
―*―*―*―*―
(私は……選択を間違えた)
レンは少女に駆け寄りながら、アンリが戦闘を始めているにも関わらず、反応も無く立ち尽くしている少女に違和感を感じていた。
(あれ、もしかして寝てる?)
ティーレとの距離を十メートル程まで縮めた所で、少女が瞳を閉じたまま立っていた事に気が付いた。
(立ったまま寝てる人初めて見たよ)
「そろそろ起きなよ!」
その声にパチリと目を開けた少女は、双頭刃式槍を両手で回し始めた。
「少し……思い出していただけです。寝てた訳じゃないです」
「……そうなんだ」
(なんでだろう。居眠りしてた時の言い訳みたいに聞こえるんだよね)
「ありがとうございます」
「え?何に対しての感謝だい?」
「貴方が声を掛けてくれなければ、私は過去の記憶から抜け出す事が出来なかったと思います。なので、貴方が死ぬ前に感謝の意を伝えようと思って」
「残念だけど……僕は死なないよ。ユカリ達の導く世界を見届けるまではね!」
「貴方に選択肢は無いんです。潔く落命される事を勧めます」
「辛い過去を持っている君達の方こそ、僕達に倒される事を勧めるよ。〝転生〟した君達を救う手段が他に無い事には、僕も悲憤を感じるけどね」
レンの言葉を聞いたティーレは、少しだけ目を見開いた。
「何で……私達が転生した事を知ってるの?」
「君達は、お互いに〝名前〟で呼び合っていたじゃないか。転生した人間でない限りは、闇の人間が名前を持つ事は無いんだよ。自分で名前を考えた……みたいな例外もあるけどね」
「……そうだったんですね」
そう言うとティーレは回していた双頭刃式槍をピタリと止め、槍先をレンに向けた。
「ティーレ……それが私の名前です。私も、まだ死ねません。もう二度と選択を違えない為に、アイリと一緒に貴方達を殺します」
片側の刃に紅の雷、もう片側の刃には蒼い水を纏わせると再び双頭刃式槍を回転させ始めた。
刃に付いた属性は回転によって徐々に範囲を広げ始め、双頭刃式槍全体だけでなくティーレの身体を包み込む程に広がっていった。
(彼女は、雷と水の二種属性使いか!)
レンは腰に差していた刀を抜き、紅蓮の炎を纏わせた。
(二種属性使いと戦うのは初めてだけど)
「ユキと鍛錬して成長した僕の実力、見せてあげるよ!」
―*―*―*―*―
(あっちの属性は異なる二種属か)
「余所見すんな!」
苛立った叫びを上げながら薙ぎ払われた薙刀を身を屈めて回避したユキは、低い姿勢のままアイリの腹部目掛けて渾身の蹴りを放った。
「ふぎゅっ!」
ユキは、蹴りを喰らったアンリが後方へと吹き飛ぶ事を想定していた。
しかしアイリは地面に薙刀を突き刺すと、持ち手を掴んで一回転すると同時に薙刀を引き抜き、ユキへ向けて再び薙ぎ払った。
「あんたも懲りないわね!」
ユキは、先程よりも低い位置に薙ぎ払われた薙刀を受け止める位置に雪月花を構えた。
「ふっ甘いわね!」
不適な笑みを浮かべたアイリは、左手を離すと淀んだ蒼い火球をユキに向け放った。
(創造する物は、〝属性の影響を受けないU字パイプ〟)
ユキは火球の進行方向にU字パイプを創り出し、そのパイプ内を火球が通過すると、火球はそのままアイリへと向かって帰って行った。
「はぇ?……ばふっ!」
激しい爆発音と共に、アイリは自身の放った火球の爆発を顔面に受けた。
「うぅぅ……何すんの!馬鹿っ!アホっ!」
火球を受けたアンリは、後方へと吹き飛ばされると、呻き声を上げながら上体を起こし、ユキに向けて罵倒を始めた。
(……うるさ)
「はぁ……あんたがこんなに弱いなら、レンに任せれば良かったわ。あっちの子の方が〝強そう〟だし」
その言葉を聞いた瞬間、ユキに対する罵倒をピタリと止めると、先程までとはまるで別人の様に怒りに満ちた眼差しをユキに向けた。
「この私が……ティーレより弱いですって!」
ゆっくりと立ち上がったアイリの周囲を二種の属性が覆い始めた。
「私を、あんな〝雑魚〟と一緒にしないで!!」
アイリの怒りに呼応して、属性の荒々しくが増大していった。
「ティーレがいなければ……あんな奴がいなければ、私は〝死なずに済んだんだ〟!」
「……アイリ」
レンと戦っていたティーレは、怒りの声を上げるアイリをじっと見つめていた。
「……」
対峙していたレンも動きを止め、悲しげな表情をしているティーレの様子を静かに見つめていた。
「私は……」
(私は……選択を間違えた)
二人の少女がいるであろうルクス二階への階段を駆け上がっていたレンは、目の前を走るユキに向けて告げた。
「嫌なの?」
「そんな訳無いよ。相手の実力が解るからこそ、信頼出来る君に僕は心の底から背中を任せる事が出来るからね!」
「……そう」
二人は長い階段を数分間登り続け、ようやく二階に辿り着く事が出来た。
「ようやく着いたわね……実際に登ったのは初めてだけど、ホントこの階段長過ぎ」
「そうだね……ん?ちょっと待ってユキ」
「何よ。あそこにいる女でしょ?流石に気付いてるわよ」
ブルーグリーンの髪をした少女ティーレは、障害物の無い二階中央で、双頭刃式の槍を両手で持ったまま二人の到着を静かに待っていた。
「いや、一人足りな——」
「お前の相手は私!」
レンが視線の先に見えるティーレに違和感を感じた瞬間、レンの言葉は背後から突如現れた少女の叫びによって遮られた。
背後から現れた桜色の髪をした少女アイリは、ユキに向け薙刀を一閃した。
「なっ!」
咄嗟に振り向こうとするレンを突き飛ばしたユキは、同時に雪月花を創造した。
「とっくに気付いてたわよ。気配消すの下手なんじゃないの?」
自身に向けて振るわれた薙刀を、ユキは雪月花で受け止めた。
階層内に金属音が響き渡り、両者の刃から激しく火花が散った。
「は?……甘く見ないでっ!」
「くっ!」
少女は競り合いを力任せに押し切り、ユキを後方へと吹き飛ばした。
「ユキ!」
「私の事は良いから!あんたにはあんたのやる事があるでしょうが!」
吹き飛んだユキは、レンに向けて叫ぶと後ろ向きに一回転した後に着地し、アンリからの追撃に備えた。
「まだまだよ!」
少女は薙刀を両手で回しながら接近すると、勢いを殺す事なくユキに向けて振り下ろした。
「単調な攻撃してんじゃ無いわよ!」
ユキは雪月花で、振り下ろさせた刃を受け流しながら刀身を滑らせる様に接近すると、柄頭でアイリの顔を突いた。
「ぶっ!」
顔面を突かれたアイリは、後方へと吹き飛ばされ床に倒れ込んだ。
「ユキ……任せたよ」
ユキの戦闘を見守っていたレンは、中央で未だに立ち尽くしている少女へと駆け出した。
―*―*―*―*―
(私は……選択を間違えた)
レンは少女に駆け寄りながら、アンリが戦闘を始めているにも関わらず、反応も無く立ち尽くしている少女に違和感を感じていた。
(あれ、もしかして寝てる?)
ティーレとの距離を十メートル程まで縮めた所で、少女が瞳を閉じたまま立っていた事に気が付いた。
(立ったまま寝てる人初めて見たよ)
「そろそろ起きなよ!」
その声にパチリと目を開けた少女は、双頭刃式槍を両手で回し始めた。
「少し……思い出していただけです。寝てた訳じゃないです」
「……そうなんだ」
(なんでだろう。居眠りしてた時の言い訳みたいに聞こえるんだよね)
「ありがとうございます」
「え?何に対しての感謝だい?」
「貴方が声を掛けてくれなければ、私は過去の記憶から抜け出す事が出来なかったと思います。なので、貴方が死ぬ前に感謝の意を伝えようと思って」
「残念だけど……僕は死なないよ。ユカリ達の導く世界を見届けるまではね!」
「貴方に選択肢は無いんです。潔く落命される事を勧めます」
「辛い過去を持っている君達の方こそ、僕達に倒される事を勧めるよ。〝転生〟した君達を救う手段が他に無い事には、僕も悲憤を感じるけどね」
レンの言葉を聞いたティーレは、少しだけ目を見開いた。
「何で……私達が転生した事を知ってるの?」
「君達は、お互いに〝名前〟で呼び合っていたじゃないか。転生した人間でない限りは、闇の人間が名前を持つ事は無いんだよ。自分で名前を考えた……みたいな例外もあるけどね」
「……そうだったんですね」
そう言うとティーレは回していた双頭刃式槍をピタリと止め、槍先をレンに向けた。
「ティーレ……それが私の名前です。私も、まだ死ねません。もう二度と選択を違えない為に、アイリと一緒に貴方達を殺します」
片側の刃に紅の雷、もう片側の刃には蒼い水を纏わせると再び双頭刃式槍を回転させ始めた。
刃に付いた属性は回転によって徐々に範囲を広げ始め、双頭刃式槍全体だけでなくティーレの身体を包み込む程に広がっていった。
(彼女は、雷と水の二種属性使いか!)
レンは腰に差していた刀を抜き、紅蓮の炎を纏わせた。
(二種属性使いと戦うのは初めてだけど)
「ユキと鍛錬して成長した僕の実力、見せてあげるよ!」
―*―*―*―*―
(あっちの属性は異なる二種属か)
「余所見すんな!」
苛立った叫びを上げながら薙ぎ払われた薙刀を身を屈めて回避したユキは、低い姿勢のままアイリの腹部目掛けて渾身の蹴りを放った。
「ふぎゅっ!」
ユキは、蹴りを喰らったアンリが後方へと吹き飛ぶ事を想定していた。
しかしアイリは地面に薙刀を突き刺すと、持ち手を掴んで一回転すると同時に薙刀を引き抜き、ユキへ向けて再び薙ぎ払った。
「あんたも懲りないわね!」
ユキは、先程よりも低い位置に薙ぎ払われた薙刀を受け止める位置に雪月花を構えた。
「ふっ甘いわね!」
不適な笑みを浮かべたアイリは、左手を離すと淀んだ蒼い火球をユキに向け放った。
(創造する物は、〝属性の影響を受けないU字パイプ〟)
ユキは火球の進行方向にU字パイプを創り出し、そのパイプ内を火球が通過すると、火球はそのままアイリへと向かって帰って行った。
「はぇ?……ばふっ!」
激しい爆発音と共に、アイリは自身の放った火球の爆発を顔面に受けた。
「うぅぅ……何すんの!馬鹿っ!アホっ!」
火球を受けたアンリは、後方へと吹き飛ばされると、呻き声を上げながら上体を起こし、ユキに向けて罵倒を始めた。
(……うるさ)
「はぁ……あんたがこんなに弱いなら、レンに任せれば良かったわ。あっちの子の方が〝強そう〟だし」
その言葉を聞いた瞬間、ユキに対する罵倒をピタリと止めると、先程までとはまるで別人の様に怒りに満ちた眼差しをユキに向けた。
「この私が……ティーレより弱いですって!」
ゆっくりと立ち上がったアイリの周囲を二種の属性が覆い始めた。
「私を、あんな〝雑魚〟と一緒にしないで!!」
アイリの怒りに呼応して、属性の荒々しくが増大していった。
「ティーレがいなければ……あんな奴がいなければ、私は〝死なずに済んだんだ〟!」
「……アイリ」
レンと戦っていたティーレは、怒りの声を上げるアイリをじっと見つめていた。
「……」
対峙していたレンも動きを止め、悲しげな表情をしているティーレの様子を静かに見つめていた。
「私は……」
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