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第1章 光の導き手
第39.5話 無知
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「さてと……では取り敢えず」
野菜と同様に異次元からメジャーを取り出したヒナは、ゆっくりとユウトに歩み寄った。
「何が、さてと……だ!一体何をしようと言うんですかヒナ先生!」
メジャーを見たユウトは露骨に嫌な表情を浮かべ、ヒナが歩み寄った分だけ離れながら距離の均衡を保っていた。
「何って……胸囲の採寸ですが?」
ユウトの質問に対して、ヒナは頭上にハテナを浮かべながら首を傾げた。
「何で?」
首を傾げるヒナに、ユウトは間髪入れずに再び質問を投げ掛けた。
「下着のサイズを把握する為ですよ?」
ユウトの質問に対して、ヒナは逆側に首を傾げ再びハテナを浮かべた。
「何で!」
移動し続けていたユウトは最終的にレンの背後に隠れ、歩み寄るヒナをレンの影から見つめ距離を把握し続けた。
「レン、俺達同じ男だろ?女性物の下着なんて……着れる訳無いよな?」
「……」
レンは無言のまま振り返り、背後に隠れていたユウトの両脇の下を掴んで持ち上げると、そのままヒナの前にユウトを差し出した。
「ごめんねユウト……僕は女の子じゃないからよく分からないけど、下着はちゃんと着けないと駄目だと思うよ?」
「俺は女の子じゃねぇし!ヒナもやめて!まだ間に合うから……早まるな!」
半泣き状態で空中をジタバタしているユウトを見て流石に気が引けたヒナは、ユウトの胸に巻いたメジャーをそっと戻した。
「うぅ……もうお婿に行けない……」
空中にぶら下げられたまま、ユウトは俯きながら唸り始めた。
「大丈夫さ。僕がお嫁さんに貰ってあげるから」
俯きながら嘆いているユウトに対して、レンは優しく告げた。
「うぅぅ……何も大丈夫じゃない」
何の励ましにもなっていないレンの言葉を聞いたユウトは、俯いたまま唸り続けていた。
「ユウト?その姿になってしまっている以上は、そのまま下着を着けない訳にはいきません!もし採寸を嫌がるのであれば、自分で女性物の下着を創造して下さい!」
ヒナは頬を膨らませて、ユウトを指差し二つの選択肢を選ぶ様に告げた。
「下着を創造って……変態みたいじゃないか」
「私からすれば、それだけ豊満なお胸があるのに下着を着けずに外を出歩いている人の方が変態だと思います!」
ヒナの言葉を近くで聞いていたユウは、何も言わずに小さく頷いていた。
「……と言うかそれ以前に俺、女性用の下着なんて知らないんだけど」
ユウトは、宙に浮かべられたまま首を傾げた。
「それなら、参考資料を持ってきましょうか?」
「う~ん……まぁ、取り敢えずやってみるか」
レンに降ろされたユウトは、渋々と女性物の下着を創造し始めた。
(創造する物は……)
ユウトが瞳を閉じると、衣服の下に結晶が集まり女性物の下着を上だけ創造した。
「……こんな感じか?」
「「駄目っ!!!」」
創造を終えたユウトが徐に上着を脱ごうとした為、それを見たヒナとユウは大声で脱衣を静止させた。
「何脱ごうとしてるんですか!露出狂ですか?」
「え?だって脱がないと見せられないだろ?」
ユウトは呆然としながら、ヒナの問い掛けに答えた。
「他にも確認する方法はありますよ!なので服は脱がないで下さい!レンだって居るんですよ?」
「別に……俺は気にしないけど?」
「……はぁ」
小さく溜息を吐いたヒナは、唐突にユウトを水属性で包み込んだ。
「ちょっ!」
「ユウトは少し女の子について勉強する必要がある様ですから……少しの間ユウトをお借りしますね?」
「ユウトをよろしくお願いします。先生」
ユウは無表情のまま小さくお辞儀をして、ユウトの身柄を明け渡した。
「えぇー!なぁ助けてくれよレン!」
水の中でジタバタしていたユウトは、唯一助けてくれそうなレンに救いの眼差しを向けた。
「君も可愛い女の子なんだから……しっかり勉強して来るだよ?」
「俺は男だ!それと……可愛い言うなぁー!!」
水の中で叫びながらルミナ内に連行されたユウトの声は、徐々に遠ざって行き出入り口の扉によって遮断された。
「ははは……可愛いなぁ。君もそう思うよね?」
レンの隣でユウトを見送ったユウは、レンの問いに小さく頷いていた。
―*―*―*―*―
数時間後
「……」
(一つだけ分かった事は……女の子って大変)
ヒナの女性指導を受けたユウトは、謎の疲労を抱えながらフラフラと治癒室前を通りかかった。
通り過ぎようとした瞬間、治癒室で身体を全快させて出て来た所のエムと目が合った。
「あ……」
「……あ?」
同時に視線の合った二人は、互いに顔を見合わせたまま固まった。
「誰だお前。俺になんか用か?」
「あー」
(気付いてねぇー)
エムが自身の正体に気付いていない事を知ったユウトは、心の中で不適な笑みを浮かべた。
「すみません……ちょっとこれ持って貰えますか?」
優しく微笑みながらエムに近付いたユウトは、後ろ手に創り出した桃色の球を差し出した。
「あ?別に良いけどよ。なんだこの球は?」
「持ってるだけで大丈夫です……後は勝手に起爆するから」
桃色の球を受け取り首を傾げているエムに対して、ユウトは笑顔でとんでもない事を打ち明けた。
「なっ!」
瞬間、エムの持っていた結晶爆弾(色付き)は、轟音を立てて爆発した。
エムの周囲には視認し難い障壁が展開されており、周辺への被害に備えていた。
「退院出来て良かったなエム!退院祝いの花火を食らった気分はどうだ?」
黒煙が障壁内に充満する中、エムはゆっくりとユウトの前に黒焦げになった状態で姿を現した。
黒焦げになった自分の事を不敵な笑みを浮かべながら見ている姿から、エムは目の前にいる少女の正体に気が付いた。
「お前……ユカリに見た目が似てると思ったらユウトか。てめぇ、全快したばかりの俺に何しやがんだっ!!」
「気付いてなかったから教えてやったんだ!」
「教え方がなってねぇんだよ!ったくよ……これだから素人は困るぜ」
既にシュウとカイ以外にもルミナの隊員達が教え子にいるエムは、黒焦げになったドヤ顔をユウトに向けた。
「いや、顔良く見えないし……まぁ取り敢えず退院おめでとう!」
「待てっ!」
黒焦げになったエムを他所に、何食わぬ顔で立ち去ろうとしたユウトに向けて、エムは大声で静止させた。
「どっか行く前にこれ解いてくれねぇか?これがあるとお前をぶっ飛ばせないだろ?」
そう告げたエムは、周囲にある障壁を右手で数回叩いた。
「お前……女性に手をあげるのか?」
「確かに俺は、女に手を出さない……が、お前は別だ」
障壁に覆われながら右手の人差し指を動かして挑発するエムに対して、底知れる怒りを覚えたユウトは障壁を解除すると同時に戦闘態勢になった。
「良いぜ……ぶっ飛ばせるかどうか試してみろドM野郎っ!」
二人の戦闘が開始してから数秒後、強くなったユウトによって秒殺されたエムは、ユウトによって応急処置が施された後、意識のないエムはユウトによって治癒室へと運ばれた。
ピコーン
(っ!ユウトセンサーに反応有りです!)
橙色の髪の少女は想い人の気配を察知すると、ユウトのいる位置に向かって駆け出した。
―*―*―*―*―
エムを治癒室に運び終えて出て来たユウトの元に駆け寄って来たのは、エムよりも先に傷の回復を終えていたフィリアだった。
「はぁ……はぁ……ユウト?」
「フィリア……久し振りだな。どうかしたのか?」
(というか、よく俺だと分かったな)
「本当にユウトなんですね……こんなに可愛いくなって!」
恍惚とした瞳を向けていたフィリアは、満面の笑みを浮かべてユウトを力一杯抱き寄せた。
「むぎゅっ!」
(い、息出来ない)
胸元に押し付けられたユウトは、息をする事が出来ずにジタバタと抵抗していた。
「はぁ……ユウトは女の子になっても誰かを惹きつける何かを持って居るんですね!」
息が出来なかったユウトの意識は、その言葉を聞き取ると同時に薄れていった。
―*―*―*―*―
数分後にようやくユウトを開放したフィリアは、意識を取り戻したユウトの姿を隅々まで確認し始めた。
「あんまりジロジロ見るなよ……は、恥ずかしいだろ?」
「顔を赤らめると逆効果だと思いますよ?」
少しだけ顔を赤らめたユウトに対して真顔で告げたフィリアは、何かを企てている様な煌々とした瞳を向けて徐にユウトの手を握った。
「さぁ、ユウト!女の子についてまだ理解が浅いでしょうから……私の部屋でお勉強しましょうねー!」
「へ?……し、した!もう勉強はしたから離して!」
(目が怖い!凄く身の危険を感じるっ!)
握られた手を振り解こうと何度も腕を振ったユウトだったが、予想以上に強固なフィリアの拘束から抜け出す事が出来なかった。
「嘘はいけませんよユウト……大丈夫です!ちゃんと優しくしますから」
「優しくって何!」
(逃げられない……こうなったら!)
ユウトは結晶で自身を覆う様に偽物を創り出すと同時に拘束から抜け出し、フィリアに気付かれない様に全速力で逃げ出した。
―*―*―*―*―
「何とか見つからずに、ここまで来られたな」
自身の部屋に辿り着いたユウトは、近くにいるかもしれないフィリアを警戒しながら慎重に扉を開けた。
「……ユウト?」
部屋に入ったユウトは聞き慣れた声に視線を向けると、外の景色を眺めていたユウと案内を密かに頼んでいたユカリの二人の姿があった。
ユカリは、扉越しにユウトの気配を把握していたのか、扉を開ける前からユウトに視線を向けていた。
ユカリは名を呼んだユウトの側へと歩み寄ったが、何故か合わせていた視線を逸らし、声を掛ける事は無く横を通り過ぎた。
「ユウト……この平和な時間が、ずっと続けば良いですよね」
扉を開けた所で立ち止まったユカリは先程までの出来事を思い返し、背後に立つユウトに声を掛けながら安らかに微笑んだ。
「あぁ……そうだな」
表情は見えなかったが、ユカリが微笑んでいると感じたユウトは視線を合わせる事なく優しく微笑んでいた。
こんな平和な日々が、数日後には跡形もなく崩壊する事を、この時のユウトは知る由も無かった。
野菜と同様に異次元からメジャーを取り出したヒナは、ゆっくりとユウトに歩み寄った。
「何が、さてと……だ!一体何をしようと言うんですかヒナ先生!」
メジャーを見たユウトは露骨に嫌な表情を浮かべ、ヒナが歩み寄った分だけ離れながら距離の均衡を保っていた。
「何って……胸囲の採寸ですが?」
ユウトの質問に対して、ヒナは頭上にハテナを浮かべながら首を傾げた。
「何で?」
首を傾げるヒナに、ユウトは間髪入れずに再び質問を投げ掛けた。
「下着のサイズを把握する為ですよ?」
ユウトの質問に対して、ヒナは逆側に首を傾げ再びハテナを浮かべた。
「何で!」
移動し続けていたユウトは最終的にレンの背後に隠れ、歩み寄るヒナをレンの影から見つめ距離を把握し続けた。
「レン、俺達同じ男だろ?女性物の下着なんて……着れる訳無いよな?」
「……」
レンは無言のまま振り返り、背後に隠れていたユウトの両脇の下を掴んで持ち上げると、そのままヒナの前にユウトを差し出した。
「ごめんねユウト……僕は女の子じゃないからよく分からないけど、下着はちゃんと着けないと駄目だと思うよ?」
「俺は女の子じゃねぇし!ヒナもやめて!まだ間に合うから……早まるな!」
半泣き状態で空中をジタバタしているユウトを見て流石に気が引けたヒナは、ユウトの胸に巻いたメジャーをそっと戻した。
「うぅ……もうお婿に行けない……」
空中にぶら下げられたまま、ユウトは俯きながら唸り始めた。
「大丈夫さ。僕がお嫁さんに貰ってあげるから」
俯きながら嘆いているユウトに対して、レンは優しく告げた。
「うぅぅ……何も大丈夫じゃない」
何の励ましにもなっていないレンの言葉を聞いたユウトは、俯いたまま唸り続けていた。
「ユウト?その姿になってしまっている以上は、そのまま下着を着けない訳にはいきません!もし採寸を嫌がるのであれば、自分で女性物の下着を創造して下さい!」
ヒナは頬を膨らませて、ユウトを指差し二つの選択肢を選ぶ様に告げた。
「下着を創造って……変態みたいじゃないか」
「私からすれば、それだけ豊満なお胸があるのに下着を着けずに外を出歩いている人の方が変態だと思います!」
ヒナの言葉を近くで聞いていたユウは、何も言わずに小さく頷いていた。
「……と言うかそれ以前に俺、女性用の下着なんて知らないんだけど」
ユウトは、宙に浮かべられたまま首を傾げた。
「それなら、参考資料を持ってきましょうか?」
「う~ん……まぁ、取り敢えずやってみるか」
レンに降ろされたユウトは、渋々と女性物の下着を創造し始めた。
(創造する物は……)
ユウトが瞳を閉じると、衣服の下に結晶が集まり女性物の下着を上だけ創造した。
「……こんな感じか?」
「「駄目っ!!!」」
創造を終えたユウトが徐に上着を脱ごうとした為、それを見たヒナとユウは大声で脱衣を静止させた。
「何脱ごうとしてるんですか!露出狂ですか?」
「え?だって脱がないと見せられないだろ?」
ユウトは呆然としながら、ヒナの問い掛けに答えた。
「他にも確認する方法はありますよ!なので服は脱がないで下さい!レンだって居るんですよ?」
「別に……俺は気にしないけど?」
「……はぁ」
小さく溜息を吐いたヒナは、唐突にユウトを水属性で包み込んだ。
「ちょっ!」
「ユウトは少し女の子について勉強する必要がある様ですから……少しの間ユウトをお借りしますね?」
「ユウトをよろしくお願いします。先生」
ユウは無表情のまま小さくお辞儀をして、ユウトの身柄を明け渡した。
「えぇー!なぁ助けてくれよレン!」
水の中でジタバタしていたユウトは、唯一助けてくれそうなレンに救いの眼差しを向けた。
「君も可愛い女の子なんだから……しっかり勉強して来るだよ?」
「俺は男だ!それと……可愛い言うなぁー!!」
水の中で叫びながらルミナ内に連行されたユウトの声は、徐々に遠ざって行き出入り口の扉によって遮断された。
「ははは……可愛いなぁ。君もそう思うよね?」
レンの隣でユウトを見送ったユウは、レンの問いに小さく頷いていた。
―*―*―*―*―
数時間後
「……」
(一つだけ分かった事は……女の子って大変)
ヒナの女性指導を受けたユウトは、謎の疲労を抱えながらフラフラと治癒室前を通りかかった。
通り過ぎようとした瞬間、治癒室で身体を全快させて出て来た所のエムと目が合った。
「あ……」
「……あ?」
同時に視線の合った二人は、互いに顔を見合わせたまま固まった。
「誰だお前。俺になんか用か?」
「あー」
(気付いてねぇー)
エムが自身の正体に気付いていない事を知ったユウトは、心の中で不適な笑みを浮かべた。
「すみません……ちょっとこれ持って貰えますか?」
優しく微笑みながらエムに近付いたユウトは、後ろ手に創り出した桃色の球を差し出した。
「あ?別に良いけどよ。なんだこの球は?」
「持ってるだけで大丈夫です……後は勝手に起爆するから」
桃色の球を受け取り首を傾げているエムに対して、ユウトは笑顔でとんでもない事を打ち明けた。
「なっ!」
瞬間、エムの持っていた結晶爆弾(色付き)は、轟音を立てて爆発した。
エムの周囲には視認し難い障壁が展開されており、周辺への被害に備えていた。
「退院出来て良かったなエム!退院祝いの花火を食らった気分はどうだ?」
黒煙が障壁内に充満する中、エムはゆっくりとユウトの前に黒焦げになった状態で姿を現した。
黒焦げになった自分の事を不敵な笑みを浮かべながら見ている姿から、エムは目の前にいる少女の正体に気が付いた。
「お前……ユカリに見た目が似てると思ったらユウトか。てめぇ、全快したばかりの俺に何しやがんだっ!!」
「気付いてなかったから教えてやったんだ!」
「教え方がなってねぇんだよ!ったくよ……これだから素人は困るぜ」
既にシュウとカイ以外にもルミナの隊員達が教え子にいるエムは、黒焦げになったドヤ顔をユウトに向けた。
「いや、顔良く見えないし……まぁ取り敢えず退院おめでとう!」
「待てっ!」
黒焦げになったエムを他所に、何食わぬ顔で立ち去ろうとしたユウトに向けて、エムは大声で静止させた。
「どっか行く前にこれ解いてくれねぇか?これがあるとお前をぶっ飛ばせないだろ?」
そう告げたエムは、周囲にある障壁を右手で数回叩いた。
「お前……女性に手をあげるのか?」
「確かに俺は、女に手を出さない……が、お前は別だ」
障壁に覆われながら右手の人差し指を動かして挑発するエムに対して、底知れる怒りを覚えたユウトは障壁を解除すると同時に戦闘態勢になった。
「良いぜ……ぶっ飛ばせるかどうか試してみろドM野郎っ!」
二人の戦闘が開始してから数秒後、強くなったユウトによって秒殺されたエムは、ユウトによって応急処置が施された後、意識のないエムはユウトによって治癒室へと運ばれた。
ピコーン
(っ!ユウトセンサーに反応有りです!)
橙色の髪の少女は想い人の気配を察知すると、ユウトのいる位置に向かって駆け出した。
―*―*―*―*―
エムを治癒室に運び終えて出て来たユウトの元に駆け寄って来たのは、エムよりも先に傷の回復を終えていたフィリアだった。
「はぁ……はぁ……ユウト?」
「フィリア……久し振りだな。どうかしたのか?」
(というか、よく俺だと分かったな)
「本当にユウトなんですね……こんなに可愛いくなって!」
恍惚とした瞳を向けていたフィリアは、満面の笑みを浮かべてユウトを力一杯抱き寄せた。
「むぎゅっ!」
(い、息出来ない)
胸元に押し付けられたユウトは、息をする事が出来ずにジタバタと抵抗していた。
「はぁ……ユウトは女の子になっても誰かを惹きつける何かを持って居るんですね!」
息が出来なかったユウトの意識は、その言葉を聞き取ると同時に薄れていった。
―*―*―*―*―
数分後にようやくユウトを開放したフィリアは、意識を取り戻したユウトの姿を隅々まで確認し始めた。
「あんまりジロジロ見るなよ……は、恥ずかしいだろ?」
「顔を赤らめると逆効果だと思いますよ?」
少しだけ顔を赤らめたユウトに対して真顔で告げたフィリアは、何かを企てている様な煌々とした瞳を向けて徐にユウトの手を握った。
「さぁ、ユウト!女の子についてまだ理解が浅いでしょうから……私の部屋でお勉強しましょうねー!」
「へ?……し、した!もう勉強はしたから離して!」
(目が怖い!凄く身の危険を感じるっ!)
握られた手を振り解こうと何度も腕を振ったユウトだったが、予想以上に強固なフィリアの拘束から抜け出す事が出来なかった。
「嘘はいけませんよユウト……大丈夫です!ちゃんと優しくしますから」
「優しくって何!」
(逃げられない……こうなったら!)
ユウトは結晶で自身を覆う様に偽物を創り出すと同時に拘束から抜け出し、フィリアに気付かれない様に全速力で逃げ出した。
―*―*―*―*―
「何とか見つからずに、ここまで来られたな」
自身の部屋に辿り着いたユウトは、近くにいるかもしれないフィリアを警戒しながら慎重に扉を開けた。
「……ユウト?」
部屋に入ったユウトは聞き慣れた声に視線を向けると、外の景色を眺めていたユウと案内を密かに頼んでいたユカリの二人の姿があった。
ユカリは、扉越しにユウトの気配を把握していたのか、扉を開ける前からユウトに視線を向けていた。
ユカリは名を呼んだユウトの側へと歩み寄ったが、何故か合わせていた視線を逸らし、声を掛ける事は無く横を通り過ぎた。
「ユウト……この平和な時間が、ずっと続けば良いですよね」
扉を開けた所で立ち止まったユカリは先程までの出来事を思い返し、背後に立つユウトに声を掛けながら安らかに微笑んだ。
「あぁ……そうだな」
表情は見えなかったが、ユカリが微笑んでいると感じたユウトは視線を合わせる事なく優しく微笑んでいた。
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