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一章 学園のヘタレ

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 エクシア、ダンテ共々彼を見て頭にはという感想しか無かった。レイトにも、二人の表情からそれが直ぐに分かった。だからこそ余計に不機嫌になる。


「俺も! 団員なんだよ!」


「「え?」」


「あー、待って下さい。彼の言う通りです。彼も私と同じくレイトルバーンの団員です」


 ここでようやくルーナからの助け舟が出た。彼がいつも同じ反応をされて不機嫌になるのは分かっていた。だからこそ、先に話した彼の功績を公にした方が良いと彼女は思ったのだ。


「でも……かなり……」


「それ以上は言わないであげて下さい。というより、言わないで下さい。怒りますので」


 後ろで今にも魔力が噴き出しそうになっているレイトがいるため、火に油を注がないようにと二人に促した。彼の強さを知っているルーナは当たり前の事を言っているつもりだが、それを知らない二人は頭に疑問符が浮かんでいる。


「とりあえず、依頼を出されたのはお二人という事でよろしかったですか?」


 一先ず、軌道修正からとルーナが依頼書を二人に見せた。それを見たエクシアは頭を縦に振る。


「そうです。私達だけではどうにもならなくてレイトルバーンに力を貸して頂きたくて」


「おかしくねえか? 普通、自分のギルドに応援要請を出すだろ」


「確かにそうだ。でも、我々にもそれががあったのだ」


 レイトの疑問に口を開いたのはダンテだった。


「出来ない理由ねえ……。自分のギルドがとか?」


「レイト様、あまり滅多な事は仰らない方が良いですよ!」


「いや、彼の言う通りなんだ。私も彼女も自分達が所属しているギルドを信用していない。多分、我々のギルドの噂はあなたもご存知かと思うが……」


「あ……。ええ……まぁ……」


 ダンテの言った噂とは、エレメントシャードの事についてだった。前ギルドマスターであるガウスが引退した後、新たに息子がギルドマスターになったのだが、どうもその息子が穀潰しらしい。


 ルーナも実はその息子に会った事がある。以前、ギルドの会合があった時、その息子であるイェレンがエレメントシャードの新たなギルドマスターとして参加した。しかし、あまりの酷さに周りのギルドマスター達が表情を強張らせていた時の事を思い出した。


「その穀潰しをギルドマスターから下ろせば良いじゃねえか」


「簡単に言ってくれるな。私達もそうしたいのは山々だが、彼の父親であるガウスさんには大恩がある。その人の息子を我々が穀潰しだからという理由で引き摺り下ろしたら彼に申し訳が立たない」


「もうそれが理由じゃねえか。あんたの息子が穀潰しだからギルドを存続させるにはこうするしかなかったって」


「レイト様、私達はあくまでも第三者です。当事者のお二人と私達では立場が違います」


 ルーナから注意を受けるが、レイトはあまり聞く耳を持つつもりは無いようだ。


「立場って、そんな大事かねえ……」


「少なくとも、彼らには」


「ふーん」


 もう少し相手の気持ちを察する力を身につけて欲しいとルーナとしては思う。だが、立場というものを考える必要のない程の力を持っているゆえに仕方ないのかも知れない。



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