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囚われの家 前編
1話
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T県にある自宅から車で3時間ほど、依頼者の住む町はちょうと県境に位置する場所にあった。町の中心地こそ大型ショッピングモールや劇場、遊興施設などで賑やかだったが、そこを通り抜けると風景は一変する。
遠くまで伸びた県道の両脇に、変わり映えのしない山並みが遥か向こうまで延々と連なっていた。
長閑――そんな単語が浮かぶほど何もないところだった。
先の見えない山並みを眺めながら車を運転していると、否応なしに意識が朦朧とし、ついつい眠気が襲ってきてしまう。
俺は眠気覚まし代わりにミントガムを噛みながら、ラジオの音声をわざと大きめにしてぼやける意識を覚醒させた。
見たところ付近に電車は通っておらず、時折ポツンポツンとバス停があるのみだ。しかし、そこに立ち止まっている人間はおらず長閑を通り越して、辺鄙な場所だと感じる。
ここで生活している人たちは車がないと不便だろうな、そんな余計なことを考えながら、終わりの見えない直線道路を目的地へ向かって車を走らせた。
◇ ◇ ◇
依頼者の家は主要道路を逸れて15分、迷路のような住宅地を抜けたさらにその奥に建っていた。
生活道路というのだろうか、車一台すらまともに通り抜けるのが困難なほど細く荒れた道を進む。
周囲に建つ家は疎らで、昼間だというのに両脇に生い茂った木々が木陰を作り辺り一帯の光を奪っていた。
本来であれば涼し気な光景なのだろうが、どういうわけだか樹海に迷い込んだように暗澹とした雰囲気を醸し出す土地だった。
依頼者の家はそんな鬱蒼とした木々の最終地点、ちょうど行き止まりに位置する場所にあった。ナビがなければ確実に迷っていた場所である。
この家に用がない者しかこの辺りまで車を乗り入れてこないだろうと判断し、俺は車がギリギリ一台通れる道幅を開けて、森の脇に停車した。
俺が乗っているのは赤のスポーツカー……と言いたいところだが実際はワゴンタイプの軽自動車だ。燃費と税金を考えた時、これが一番効率がいい。
お祓い屋が軽自動車から降りてくる姿を見ると興ざめするかもしれないが、今のところそれが原因で取りこぼした仕事はない。
俺は車を降りて目の前の家を眺めた。
田舎の家によくあるような古ぼけた木造平屋の一戸建て。敷地面積は広いが、壁の塗装は剥がれ落ち、腐った木板もそのまま見えているため、古ぼけた印象を受ける。
この家に着く前から感じていた違和感が、この家に到着したことでさらに増していった。
依頼者の家は、離れ小島の位置にあるようだ。
近隣家屋を通り過ぎたのは、おおよそ5分ほど前。車で移動中の5分なのだから、歩くとかなりの距離があるだろう。
どの家も今風な見た目で、比較的、小綺麗なものが多かった。新築したり、定期的にリフォームしたりと大切に手入れをしているのだろう。そこで暮らす住人たちの風景が目に浮かぶようで、いい意味で生活臭がする住宅ばかりだった。
けれどこの家だけは昭和時代そのままの様相で周囲から浮いているように感じる。
鬱蒼とした木々に囲まれた場所にあるため、余計そう感じさせるのだろうが、あまり清潔な印象を受けず、なんとなく湿っぽい雰囲気を漂わせている。
生きた人間が住める場所ではない、そう思わせられるほど寂れた雰囲気を醸し出しており、若干の恐怖を覚えた。
依頼者はこの家に住んでいる、そう考えるだけでなんとなく憂鬱な気分になった。
遠くまで伸びた県道の両脇に、変わり映えのしない山並みが遥か向こうまで延々と連なっていた。
長閑――そんな単語が浮かぶほど何もないところだった。
先の見えない山並みを眺めながら車を運転していると、否応なしに意識が朦朧とし、ついつい眠気が襲ってきてしまう。
俺は眠気覚まし代わりにミントガムを噛みながら、ラジオの音声をわざと大きめにしてぼやける意識を覚醒させた。
見たところ付近に電車は通っておらず、時折ポツンポツンとバス停があるのみだ。しかし、そこに立ち止まっている人間はおらず長閑を通り越して、辺鄙な場所だと感じる。
ここで生活している人たちは車がないと不便だろうな、そんな余計なことを考えながら、終わりの見えない直線道路を目的地へ向かって車を走らせた。
◇ ◇ ◇
依頼者の家は主要道路を逸れて15分、迷路のような住宅地を抜けたさらにその奥に建っていた。
生活道路というのだろうか、車一台すらまともに通り抜けるのが困難なほど細く荒れた道を進む。
周囲に建つ家は疎らで、昼間だというのに両脇に生い茂った木々が木陰を作り辺り一帯の光を奪っていた。
本来であれば涼し気な光景なのだろうが、どういうわけだか樹海に迷い込んだように暗澹とした雰囲気を醸し出す土地だった。
依頼者の家はそんな鬱蒼とした木々の最終地点、ちょうど行き止まりに位置する場所にあった。ナビがなければ確実に迷っていた場所である。
この家に用がない者しかこの辺りまで車を乗り入れてこないだろうと判断し、俺は車がギリギリ一台通れる道幅を開けて、森の脇に停車した。
俺が乗っているのは赤のスポーツカー……と言いたいところだが実際はワゴンタイプの軽自動車だ。燃費と税金を考えた時、これが一番効率がいい。
お祓い屋が軽自動車から降りてくる姿を見ると興ざめするかもしれないが、今のところそれが原因で取りこぼした仕事はない。
俺は車を降りて目の前の家を眺めた。
田舎の家によくあるような古ぼけた木造平屋の一戸建て。敷地面積は広いが、壁の塗装は剥がれ落ち、腐った木板もそのまま見えているため、古ぼけた印象を受ける。
この家に着く前から感じていた違和感が、この家に到着したことでさらに増していった。
依頼者の家は、離れ小島の位置にあるようだ。
近隣家屋を通り過ぎたのは、おおよそ5分ほど前。車で移動中の5分なのだから、歩くとかなりの距離があるだろう。
どの家も今風な見た目で、比較的、小綺麗なものが多かった。新築したり、定期的にリフォームしたりと大切に手入れをしているのだろう。そこで暮らす住人たちの風景が目に浮かぶようで、いい意味で生活臭がする住宅ばかりだった。
けれどこの家だけは昭和時代そのままの様相で周囲から浮いているように感じる。
鬱蒼とした木々に囲まれた場所にあるため、余計そう感じさせるのだろうが、あまり清潔な印象を受けず、なんとなく湿っぽい雰囲気を漂わせている。
生きた人間が住める場所ではない、そう思わせられるほど寂れた雰囲気を醸し出しており、若干の恐怖を覚えた。
依頼者はこの家に住んでいる、そう考えるだけでなんとなく憂鬱な気分になった。
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