トラワレビト ~お祓い屋・椿風雅の事件簿~

MARU助

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囚われの家 後編

13話

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 ぎしぎしと軋む床をゆっくり踏みしめながら、俺は男の後に続いて奥の部屋を目指す。
 窓が傍にないせいか、廊下はやけに薄暗く、奥に向かうにつれ闇のような暗さはより一層深みを増した。

 人が住んでいないところに水道や電気、ガスを通しておくのはもったいないという理由でどれも半年前に契約を切っているそうだ。そのため、廊下に電気はつかない。昼間だというのに先頭を歩く男の右手には懐中電灯が握られていた。

 廊下の左側は壁、右側に3つほどの部屋があった。空気の入れ替えのためだろう、どの部屋も襖を開けてあり、中の様子が伺えた。

 俺はそのひとつひとつを見るともなしに確認しながら歩を進めていく。

 昔ながらの家屋のため、各部屋はそれぞれ10畳以上はあろうかという広々とした空間だ。採光を取り入れれば雰囲気のいい部屋なのだろうが、半年以上人が住んでいないせいか、畳は薄汚れ、部屋の空気も澱んでいる。

 箪笥や掛け軸など時代を感じさせる調度品が置いてあるのは、前の住人が残していったものだろうか。
 3つの部屋を順番に通り過ぎていったが、どの部屋の間取りも共通しており、襖の真正面に等身大の窓、その右側が押入れという配置だった。

 俺は後ろからついてくる紗里を振り返る。
 紗里は無表情で俺たちの後に付き沿っている。
 この暗闇の中で白地の浴衣を着た彼女は、まるで浮幽霊のようだ。

 紗里がこの闇の奥に反応を示したということは、何らかの霊と遭遇する可能性が高いということだ。彼女には俺以上の霊感がある、そのお陰で過去に何度も助けられたのだ。

 断言しよう、この先に進んでも良い結果は待っていないと。
 霊感とか第六感とかそんなものではなく、家の雰囲気や依頼者母娘の様子から推測して、この家にとり憑く霊が悪霊だと確信しているからだ。

 悪霊相手にインチキお祓い師が勝てるわけがない。命あっての物種、本当にヤバい時は紗里を抱えて一目散に逃げ散ようと心に誓っていた。

 悶々とした俺の不安をよそに、先頭を歩く男はとうとう突き当りの部屋に辿り着いてしまった。
 男は俺を振り返った後、軽く頷いて襖を横にずらした。

「う……」

 俺は思わず悶絶する。
 なんともいえない異臭が鼻を突いた。強烈だ。間違いない、この家に纏わりついている全ての匂いの元凶はここから始まっているのだ。

 俺は部屋に入るのを躊躇したが、男は我関せずという顔をして懐中電灯を上下左右に照らしながら平気な顔で先に進んでいった。

 鈍感もここまでくると心強い。
 俺は男の背後に身を隠すようにして後に続いた。
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