モデルファミリー <完結済み>

MARU助

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嵐の前の静けさ

49話:ケンジとタキ

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 金曜日の朝、ケンジとタキは連れ立ってとあるところに出かけていた。
 数日前に、進藤つかさがやってきて以来、なんとなく家族の間に白けたムードが漂い始めている。家にいるのはなんとなく落ち着かない。

 みんな気付いているが、あえて口に出さなかったこと。
 それがあさこという名の少女によって、白日の元にさらされた気分だった。

<今の家族は偽物>

 実に的を得ている。
 表面だけを見ればキラキラした理想の家族像だが、その中身は空っぽ。すべてが虚構で成り立っているのだ。
 あさこはそれを見抜いていた。

 CMやインタビュー記事、テレビ番組の出演などで世良田一家を目にすることがあっただろう。それを目にしたうえであの頃の一家と違う、そう感じたのだ。

「栄子さんは大丈夫かね」

 ケンジが聞く。
 栄子は昨日の衝撃が大きすぎたのか、夜になって体調を崩し、今日は大人しく部屋で寝ているようだ。

「ええ、だいぶ熱は下がったみたいですから。私たちが出かけると言ったら大喜びでしたよ」
「フン、邪魔者が消えるとでも思ったんじゃろう」

 苦虫をつぶしたような顔をしたケンジを見て、タキが品よく笑う。

「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません」
「なんじゃ、その言いぐさは」
「私たちに風邪をうつしたら大変、そう言ってましたよ」
「それが本音なら可愛い嫁なんじゃが」

 ケンジは元樹と結婚したばかりの頃の栄子を思い出していた。
 優しく朗らかな性格で、栄子がいるだけで家が明るくなった。まるで華が咲いたように笑う姿は、一家の幸せの象徴だった。
 当時はいい嫁をもらったと喜んでいたが、今となっては毒花にしか見えない。

「あの嫁も昔は可愛げがあったんじゃが、最近はわしらのことを邪魔者扱いしおって」
「仕方ないですよ、年よりは嫌われるもんです。それに栄子さんも悪い人じゃないんですよ。元樹が浮気ばかりするもんだから、気持ちがトゲトゲするんですよ」

 ふんわりとほほ笑んだタキは「さぁ着きましたよ」と一軒の建物の前で足を止めた。
 シンプルだが使い勝手のよさそうなタワーマンションの入り口には、介護付き有料老人ホーム、の看板が高々と掲げられていた。

「ふん、見た目は悪くないのぉ」

 ケンジは独りごちて、スタスタとエントランスを潜り抜けた。タキものんびりとした足取りでその後に続いた。
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