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嵐の前の静けさ
53話:元樹と栄子
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夜中に帰宅した元樹は、コンビニ袋を片手にいそいそと寝室に入る。
「おい栄子、体調どうだ」
今朝から風邪気味で寝込んでいる栄子のために、栄養ドリンクと熱冷ましシートを買ってきて手渡す。
「あら。気が利くじゃない」
栄子は生温かくなっているおでこのタオルを外し、嬉しそうに元樹が買ってきたシートを取り出す。
その様子を見ながら、元樹は黙ってベットの端に腰を下ろした。
しばらくそうして栄子の様子を見ていたが、何かを決心したように口を開く。
「――なぁ俺たち間違ってるのかな?」
「どうしたのよ急に」
栄子は元樹の奇妙な態度に、眉を寄せた。
「結構へこんでるんだよ、あさこちゃんの言葉。的を得すぎてるっているのか、金のためにやってるわけなんだけど、ふと思う時があるんだよ。何やってんだろ俺たちって」
「何をいまさら」
栄子は呆れたように言い、栄養ドリンクに手を伸ばす。
その様子を見守りつつ、元樹は言う。
「なぁ、栄子。3年前に俺が記者会見開いた時どう思った?」
「どうって?」
「お前、なんにも言わなかったじゃないか。黙って“いってらっしゃい“って。あの時、何考えてた?」
「特にこれといってないわよ。ただ、テレビで発言してる元樹さんを見てると、昔と変わらないなぁって」
「変わらないか、俺」
腹の出てきたお腹をさすり、元樹が聞き返す。
「見た目じゃなくて、中身よ。あなたってほら、真っすぐだから嘘をついてもすぐ顔に出る。美園も勇治もそうよ。見てて笑っちゃうときがあるもの。ああ、親子だなって」
「そうかな」
褒められてるのか貶されているのか判断できず、元樹はあいまいに笑う。
「そもそもお前は俺のどこがよくて結婚してくれたんだ?」
「は? なに、そんな大昔のことまで遡って思い出せっていうの? 病人の私に? 今?」
いやいや悪い、と苦笑いした元樹は、栄子が飲み干したドリンクの瓶をコンビニ袋に詰める。
ついでにゴミ箱のゴミも回収すると、テレビのリモコンを栄子が取りやすい位置に置き直す。
かいがいしく動き回る元樹を横目に、栄子は気だるそうに横になり、布団に潜って顔を隠した。
元樹は静かに部屋の電気を消し、そっと出て行こうとしたが、栄子の言葉に足を止める。
「――このまま偽装家族を続ける気があるなら、せめてよその女の匂いは外で払ってきてちょうだい」
そう言われ、元樹は八ッとしてワイシャツに顔を近づける。
甘い香りがした。
「――悪い」
栄子は何も言わない。布団で顔を隠しているため、表情もうかがい知れない。
「ほんとごめん」
元樹はもう一言謝って、静かに部屋を出て行った。
栄子はさらに布団を深くかぶり、深呼吸して目を閉じた。
「おい栄子、体調どうだ」
今朝から風邪気味で寝込んでいる栄子のために、栄養ドリンクと熱冷ましシートを買ってきて手渡す。
「あら。気が利くじゃない」
栄子は生温かくなっているおでこのタオルを外し、嬉しそうに元樹が買ってきたシートを取り出す。
その様子を見ながら、元樹は黙ってベットの端に腰を下ろした。
しばらくそうして栄子の様子を見ていたが、何かを決心したように口を開く。
「――なぁ俺たち間違ってるのかな?」
「どうしたのよ急に」
栄子は元樹の奇妙な態度に、眉を寄せた。
「結構へこんでるんだよ、あさこちゃんの言葉。的を得すぎてるっているのか、金のためにやってるわけなんだけど、ふと思う時があるんだよ。何やってんだろ俺たちって」
「何をいまさら」
栄子は呆れたように言い、栄養ドリンクに手を伸ばす。
その様子を見守りつつ、元樹は言う。
「なぁ、栄子。3年前に俺が記者会見開いた時どう思った?」
「どうって?」
「お前、なんにも言わなかったじゃないか。黙って“いってらっしゃい“って。あの時、何考えてた?」
「特にこれといってないわよ。ただ、テレビで発言してる元樹さんを見てると、昔と変わらないなぁって」
「変わらないか、俺」
腹の出てきたお腹をさすり、元樹が聞き返す。
「見た目じゃなくて、中身よ。あなたってほら、真っすぐだから嘘をついてもすぐ顔に出る。美園も勇治もそうよ。見てて笑っちゃうときがあるもの。ああ、親子だなって」
「そうかな」
褒められてるのか貶されているのか判断できず、元樹はあいまいに笑う。
「そもそもお前は俺のどこがよくて結婚してくれたんだ?」
「は? なに、そんな大昔のことまで遡って思い出せっていうの? 病人の私に? 今?」
いやいや悪い、と苦笑いした元樹は、栄子が飲み干したドリンクの瓶をコンビニ袋に詰める。
ついでにゴミ箱のゴミも回収すると、テレビのリモコンを栄子が取りやすい位置に置き直す。
かいがいしく動き回る元樹を横目に、栄子は気だるそうに横になり、布団に潜って顔を隠した。
元樹は静かに部屋の電気を消し、そっと出て行こうとしたが、栄子の言葉に足を止める。
「――このまま偽装家族を続ける気があるなら、せめてよその女の匂いは外で払ってきてちょうだい」
そう言われ、元樹は八ッとしてワイシャツに顔を近づける。
甘い香りがした。
「――悪い」
栄子は何も言わない。布団で顔を隠しているため、表情もうかがい知れない。
「ほんとごめん」
元樹はもう一言謝って、静かに部屋を出て行った。
栄子はさらに布団を深くかぶり、深呼吸して目を閉じた。
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