76 / 146
動き始めた闇
74話:誠の決意
しおりを挟む
誠は部屋を出た後、さっと左右を見渡して壁に沿って並んでいる花瓶の台座の下に潜り込んだ。
ちょうと台座には白い布がかけてあり、誠をすっぽり覆い隠してくれた。
さっきのトワの言葉は、大部分が的を得ていただけに言い返すこともできなかった。
あれだけの家族に囲まれながら、いつも孤独を感じていたのは本当で、自分と同じように独りぼっちの子供を見つけて、傷を舐め合いたかったのも本当だ。
毎日良い子の演技をし、学校で一人ぼっちなのを隠して笑って過ごす。
家庭崩壊を目の前にしても無関心を装い、一家離散した後の自分の身の置き先に不安を感じているのにそれが言い出せない。毎日不安で寂しくて叫びだしそうだった。
だから、トワが一人ぼっちなのを知って心に通じるものがあった。と、同時に羨ましくも思えた。
トワは誠とは違って皆に心配され、愛されているのだから。
誠はリュックから買い物袋を取り出すと、さっき買ってきたばかりのものを手に取った。
トワが誠よりもマツムラを選ぶ事は予想がついていた。
誠とトワはネットを通じて1年ほどの交流があるのみで、出会ったのはおとついが初めてだ。
昨日、今日友人になった誠と、何十年一緒にいたマツムラ。彼がどちらを信じるのかと言えば答えは明白だ。
だからこそ、こうやって準備をしているのだ。
誠は急いで鞄からノートパソコンを取り出し、画面を立ち上げる。
金曜の夜、勝手に家を出たきりで連絡せず、家族は心配しているだろうか。
ふと新着メッセージが届いている事に気づく。
差出人は「TUKASA」。
進藤つかさだ。誠はすぐにメッセージ画面を開く。
――家族みんなで日記を読んだ。お前のことをすごく心配している。無事かどうか連絡が欲しい。 つかさ――
しばらくその画面を見つめていた誠だが、深呼吸して返信メッセージを打つ。
自分がいなくなることで、どれほどモデルファミリーとしての家族に大打撃を与えたか考えていないわけではない。むしろ考えたからこそ、今ここにいるのだ。
すでに栄子の言う「天使の誠ちゃん」は彼らの中で形を失っているだろう。
まさかこんな事態になるとは思ってもいなかったが、もしかしてこれはチャンスなのかもしれない。
モデルファミリーが本物になるために、神様が与えてくれた最後のチャンス。
「だったら、僕はそれに賭ける――」
誠はひとつの決意を込めて送信画面を押した。
その時だった、廊下の奥で何やら騒がしい声がする。
誠はさっき袋から取り出したものをぎゅっと握り締め、事態が動くのを待った。
ちょうと台座には白い布がかけてあり、誠をすっぽり覆い隠してくれた。
さっきのトワの言葉は、大部分が的を得ていただけに言い返すこともできなかった。
あれだけの家族に囲まれながら、いつも孤独を感じていたのは本当で、自分と同じように独りぼっちの子供を見つけて、傷を舐め合いたかったのも本当だ。
毎日良い子の演技をし、学校で一人ぼっちなのを隠して笑って過ごす。
家庭崩壊を目の前にしても無関心を装い、一家離散した後の自分の身の置き先に不安を感じているのにそれが言い出せない。毎日不安で寂しくて叫びだしそうだった。
だから、トワが一人ぼっちなのを知って心に通じるものがあった。と、同時に羨ましくも思えた。
トワは誠とは違って皆に心配され、愛されているのだから。
誠はリュックから買い物袋を取り出すと、さっき買ってきたばかりのものを手に取った。
トワが誠よりもマツムラを選ぶ事は予想がついていた。
誠とトワはネットを通じて1年ほどの交流があるのみで、出会ったのはおとついが初めてだ。
昨日、今日友人になった誠と、何十年一緒にいたマツムラ。彼がどちらを信じるのかと言えば答えは明白だ。
だからこそ、こうやって準備をしているのだ。
誠は急いで鞄からノートパソコンを取り出し、画面を立ち上げる。
金曜の夜、勝手に家を出たきりで連絡せず、家族は心配しているだろうか。
ふと新着メッセージが届いている事に気づく。
差出人は「TUKASA」。
進藤つかさだ。誠はすぐにメッセージ画面を開く。
――家族みんなで日記を読んだ。お前のことをすごく心配している。無事かどうか連絡が欲しい。 つかさ――
しばらくその画面を見つめていた誠だが、深呼吸して返信メッセージを打つ。
自分がいなくなることで、どれほどモデルファミリーとしての家族に大打撃を与えたか考えていないわけではない。むしろ考えたからこそ、今ここにいるのだ。
すでに栄子の言う「天使の誠ちゃん」は彼らの中で形を失っているだろう。
まさかこんな事態になるとは思ってもいなかったが、もしかしてこれはチャンスなのかもしれない。
モデルファミリーが本物になるために、神様が与えてくれた最後のチャンス。
「だったら、僕はそれに賭ける――」
誠はひとつの決意を込めて送信画面を押した。
その時だった、廊下の奥で何やら騒がしい声がする。
誠はさっき袋から取り出したものをぎゅっと握り締め、事態が動くのを待った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる