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再会
110話:仮面の下
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この豹変振りを前にして、誠は息をのみ、世良田一家は口を閉ざし、トワは小さく息を呑んだ。
「小僧、もういっぺん言ってみろ」
「何度だって言ってやる! 人殺し!」
誠は怯むことなく、マツムラを睨みつけた。
マツムラはまるで汚いものを見るような目つきで誠を見やり、腰に帯同した剣の鞘に手をかける。
「小僧。私相手にそんな口を聞くとは、礼儀を教えた方がよさそうだ」
その様子を見て、慌ててトワがマツムラの前に立つ。
「何を言ってるんだ。誠くんは僕の大事な友達だ」
「だとしたら、付き合う相手を選ぶことですな。彼は王子に悪影響しか与えない」
「マツムラ、どうしてそんな事……」
ほんの数分の間で、マツムラが自分の知らない何かに姿を変えてしまったようで、トワは妙に恐ろしくなった。
目の前で皆を威圧しているこの男は、本当にマツムラなのだろうか?
「それがそいつの本性だ、トワ」
床の上に溜まっていく自身の血を見ながら、仮面の男は囁いた。
本性? これが本性。
テロリストにマツムラの何が分かるというのだ、トワは混乱した表情で仮面の男を見つめた。
腕からは絶えず新しい血が流れ続けているため、早く手当をしなければ気を失ってしまうだろう。それでも男はトワに問い続ける。
「お前の信じているものは本当に正しいのか、疑いを持ったことがないのか?」
美しい黒髪、華奢な体、仮面の下から覗く赤い唇、そして温かなその声。
なぜだか男の存在は、激しくトワの心を揺さぶった。
「あなたの意見など聞いていない。口を謹んでもらおう」
拒絶めいた言葉を口にしたトワだが、仮面の男は俯いたままで反応を示さない。
けれど誠は違った。
栄子の腕の中から抜け出すと、トワに向きなおって訴える。
「トワ、君は間違っている。この人に対してそんな事言っちゃいけない。誰よりも君を心配しているのは彼なんだから」
「誠くん、何を言ってるんだよ」
トワだけでなく、世良田一家やつかさも誠の真意が分からず、不安気に立ちつくす。
けれど、ただ一人美園だけは違った。
さっきから気になっていのは、仮面の男のその声。そして立ち姿。
まさか、という思いを抱きながらも、たぶんそうだ、という確信に近い思いに駆られ仮面の男の前に立つ。
そして、恐る恐るその仮面に手を伸ばすと、一気にそれを剥ぎ取った。
「小僧、もういっぺん言ってみろ」
「何度だって言ってやる! 人殺し!」
誠は怯むことなく、マツムラを睨みつけた。
マツムラはまるで汚いものを見るような目つきで誠を見やり、腰に帯同した剣の鞘に手をかける。
「小僧。私相手にそんな口を聞くとは、礼儀を教えた方がよさそうだ」
その様子を見て、慌ててトワがマツムラの前に立つ。
「何を言ってるんだ。誠くんは僕の大事な友達だ」
「だとしたら、付き合う相手を選ぶことですな。彼は王子に悪影響しか与えない」
「マツムラ、どうしてそんな事……」
ほんの数分の間で、マツムラが自分の知らない何かに姿を変えてしまったようで、トワは妙に恐ろしくなった。
目の前で皆を威圧しているこの男は、本当にマツムラなのだろうか?
「それがそいつの本性だ、トワ」
床の上に溜まっていく自身の血を見ながら、仮面の男は囁いた。
本性? これが本性。
テロリストにマツムラの何が分かるというのだ、トワは混乱した表情で仮面の男を見つめた。
腕からは絶えず新しい血が流れ続けているため、早く手当をしなければ気を失ってしまうだろう。それでも男はトワに問い続ける。
「お前の信じているものは本当に正しいのか、疑いを持ったことがないのか?」
美しい黒髪、華奢な体、仮面の下から覗く赤い唇、そして温かなその声。
なぜだか男の存在は、激しくトワの心を揺さぶった。
「あなたの意見など聞いていない。口を謹んでもらおう」
拒絶めいた言葉を口にしたトワだが、仮面の男は俯いたままで反応を示さない。
けれど誠は違った。
栄子の腕の中から抜け出すと、トワに向きなおって訴える。
「トワ、君は間違っている。この人に対してそんな事言っちゃいけない。誰よりも君を心配しているのは彼なんだから」
「誠くん、何を言ってるんだよ」
トワだけでなく、世良田一家やつかさも誠の真意が分からず、不安気に立ちつくす。
けれど、ただ一人美園だけは違った。
さっきから気になっていのは、仮面の男のその声。そして立ち姿。
まさか、という思いを抱きながらも、たぶんそうだ、という確信に近い思いに駆られ仮面の男の前に立つ。
そして、恐る恐るその仮面に手を伸ばすと、一気にそれを剥ぎ取った。
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