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連載
233.
ルヴェンドの冒険者ギルドの前で、子供たちが目を輝かせていた。
「遂に! 私たちも!」
「俺たちも!」
「冒険者!」
その場で小さくぴょんとジャンプするのも可愛らしい。
ウィークマン先生はといえば、ガイドさんよろしく子供たちの前に立って誘導しようとしている。
「それじゃあ、冒険者の人たちに迷惑をかけないように——」
「のりこめー!」
ウィークマン先生の誘導も虚しく、子供たちは冒険者ギルドの中になだれ込んで行った。ウィークマン先生も分かっていたように、苦笑いしながら子供たちの後に付いてギルドの中に入っていく。
私も中に入っていった。
ギルドの中は酒場になっていて、荒くれ者たちが昼間から飲んでいる。
一番入り口近くのテーブルにいる荒くれ者が、入ってきた子供たちを見て声をかけてきた。
「おいおい、ここはガキのくるとこじゃないぜ?」
「へっへっへ、子供は帰ってママのミルクでも飲んでな!」
威圧してくる強面の冒険者たち。
でもご心配なく。この人たちポムチョム小学校の卒業生なのだ。ときどき小学校にも顔を見せていて、子供たちにもしっかり名前と顔を覚えられている。
「テモスたち、うるさーい!」
「一人前になったあたしたちのちからおもいしれー!」
「ははは、そんな力で一人前なんて笑わしてくれるぜーって、ちょっと待て、魔法はやめろ。本気で痛いからやめろって!」
挑発に乗って、足元にまとわりついてきたポムチョム小学校の子供たちに笑いながら対応していたテモスさんたちだけど、一人の子が魔法を唱えはじめた瞬間、顔色が変わった。
「あっちー、あっちぃいー!!」
最終的には500円玉ぐらいの火の塊をぶつけられて、奥の方に逃げていった。
定番の新人いびり(?)を見事はねのけた子供たちは、ふんすっと誇らしげに腰に手を当てて胸を張る。
「かった!」
「あたしたちのしょうり!」
「はいはい、それでは冒険者免許を発行してもらうのでここに並んでください」
ウィークマン先生の呼びかける声に反応して、子供たちはギルドのカウンターの前に綺麗に整列する。やんちゃな子たちだけど、こういう自分たちに利益がありそうなときはビシッと並ぶ。なかなかに現金だ。
私もその後ろにちょっこりと並ばせていただいた。
ニコニコの受付嬢さんが、子供たち一人一人に紙とペンを渡していく。冒険者ギルドに登録。定番のイベントに私もちょっとわくわくしてきた。
ようやく自分の番が来て紙とペンを貰う。
あたりを見まわすと、酒場のテーブルで子供たちが一生懸命、紙に必要事項を記入していた。ポムチョム小学校では、読み書きは重点的に教えてくれるので、みんなしっかり書けてるようだ。
席はどうやら冒険者の人たちが譲ってくれてたようで、子供たちの方を見ながら「もうこんな時期か」などと話し合ってる。そこまで見れば普通の大人だけど、酒をがぶ飲みしながらなので普通ではない。
紙には名前、クラス(先生と話し合ってちゃんとできると言われたものを書いてくださいと手書きで注意書きが追加されている)スキルや特技、持ってる資格なんかを書く欄がある。
スキルは魔法院などの検査で認定を受ける必要がある特殊な能力のこと。特技はそれとは違ってもっと漠然とした本人のアピールポイントで良いようだ。資格は前いた世界とそんなに仕組みは変わらない。
続いて使える武器について書く欄。剣術や槍術など書いて、その横に習った場所や先生の名前を書けば良いみたい。
その下は魔法についての欄だ。魔法が使えるか、使えないか、みたいな基本的な質問から、具体的に使える魔法、素質のある属性などを書いていく。
私は名前をエトワ、クラスをガイダーと書いて、スキルに心眼<マンティア>、それから特技にアルミホイル料理と書いていった。武術の欄はなし。
私の隣に座ったリリーシィちゃんは、武術の欄に剣術、習った場所はポムチョム小学校、それから先生の名前を書いていく。
進路に冒険者がある学校は、ポムチョム小学校以外にもいくつかあって、このルヴェンドでいうとヘルダネント剣術学校っていうところがある。ポムチョム小学校に比べると、だいぶかっちりしてる学校で、基本的な進路は町の警備隊や兵士なんからしい。けれど、毎年1割ぐらいの生徒は冒険者になるんだそうだ。
あとは普通の商家の学校に通って、剣術道場で剣を習う子もいる。そういう場合は、学校ではなく◯◯道場と書くことになる。
もうあまり書くことはないけど、引き続き申し込み用紙への記入を続けていく。魔法の欄は使えないにマルをして終わり。あとは住居やよく使う滞在場所を書いて、最後は冒険者として基礎的な知識があるかの確認——試験ではないので説明を読んでいけばそこに普通に答えも書いてある。
「お父さんお母さんの許可なんかはいらないんですね~」
未成年がこういう書類を書くときは、親御さんの許可がいるのが定番かなと思うんだけど、そういう欄はなかった。ひとりごとに近い私のつぶやきだったけど、近くのテーブルに座ってた冒険者さんがそれを聞いて、笑いながら親指を立てて言った。
「はは、親の許可なんて気にしながら、冒険者なんてできるかよ! やりたいなら気にせずやっちまえ!」
まあ、そう言われると、あらためて親不孝な職業だなぁと思う。ポムチョム小学校に通ってる子たちは、大抵認めてもらってる子なんだろうけど。
書き終えると、また同じカウンターに並んで、受付嬢のお姉さんに紙を提出する。前に並ぶ子供たちが捌けていき、私の番がやってきたので、お姉さんに紙を提出した。
その紙をちらっと見ると、お姉さんは私をまじまじと見て。
「ああ、あなたが噂のガイダー志望の子なのね」
「は、はひ」
なんと答えていいか分からず、私はぎこちなく頷くだけになった。
お姉さんは私の書いた紙の特技欄に、ささっと何個か単語を付け足すと、その紙を問題なしの紙束の方に置いた。問題ありとされた場合、返却されて書きなおしを要求される。
最後の質問事項を飛ばして書いた子供たちが何人か、テーブルに送り返されていた。
「あなたにはギルドのみんなが期待してるわ。がんばってね!」
「ありがとうございます」
失格の子の件についてもそうだけど、知らない人に知られてるのは、なんとも不思議な気分になるものだ。でも、あんまり気にしてもしかたないし、今回は悪い意味ではなかったので、ぺこりと頭を下げて、テーブルに戻った。
それから一時間ぐらい経って冒険者カードができあがった。
私の手元にもそれがやってくる。
お姉さんが配ってくれたカードにはエトワという名前と、ガイダーというクラス、それから特技欄に冒険者Aランク相当以上の地図読解、案内(ガイド)能力と書かれていた。
なんかこう書かれると恐れ多い。そしてアルミホイル料理が消えてしまった!?
いろいろ言いたいこともあったけど、受け取って胸に湧いてくる気持ちは、ワクワクと嬉しいって気持ちが混ざったものだった。すぐにでも冒険にでたくなるようなそんな気持ちかも。
隣でニコニコしてるリリーシィちゃんと目が合う。相変わらずの糸目なんだけど。
「えへへ~、冒険者カードおめでとうエトワちゃん!」
「リリーシィちゃんもおめでとう!」
私はリリーシィちゃんと顔を合わせて、笑いあった。
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