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連載
234.
冒険者免許の発行が終わると、ギルドの中でしばし待機させられることになった。
冒険者の人たちに譲ってもらったカウンター前の席に私たちは座っている。
「遅いわねぇ……」
私と同じテーブルに座るエルフィスちゃんが貧乏ゆすりしながら呟く。
私たちが座ってる席は事前にウィークマン先生に申告したパーティー通りになっている。私とリリーシィちゃんにエルフィスちゃんが私たちのパーティーだ。
エルフィスちゃん、学校にはだいぶ馴染んできたものの、まだまだツンツンした性格のせいで特定の仲良しという子たちはあまりいない。なので私とリリーシィちゃんのパーティーが引き受けることになった。
戦士(見習い)に剣士(見習い)にガイダー(見習い)。なかなかにめちゃくちゃなパーティーバランスだ。前衛2人に非戦闘要因が1人、後衛が誰もいない。
とはいっても、冒険者学校で魔法が使える子はレアなので、だいたいのパーティーが前衛過多になってしまってるのだけど。
「依頼を渡されるんだよね! どんな依頼かなー!」
リリーシィちゃんが楽しそうにそう言う。
そう、今日は冒険者免許をもらえるだけでなく、これから依頼もやらせてもらえるのだ。エルフィスちゃんも、待ち遠しくてそわそわしてはいるものの、退屈そうではない。むしろ待ちきれない感じだ。
ポムチョム小学校の子たちは、落ち着かない様子で、仲良しの子と話したり、天井を見上げて時間を過ごしていた。きっと、将来の自分の活躍を想像してるのだろう。そんな子供たちに、今日の冒険者の視線も集まっていた。
そんな中、若い青年がカウンターの向こうの扉からこそこそするように出てきた。その青年はそのまま走って、冒険者ギルドの建物から出て行ってしまう。
(なんだったんだろう。職員の人かな?)
気づいたのは私だけだったようだ。不審な動きに首を傾げたけど、冒険者ギルドに来たのは二度ほどの私が、答えが出せるわけがない。
それから五分後ぐらいにウィークマン先生と受付嬢さんがでてきた。
「さあ、これがみなさんにやってもらう依頼です」
そう言うと、子供たちがわーと歓声をあげた。封筒に入れられた依頼を、先生と受付嬢さんがそれぞれのパーティーの席に配っている。
封筒は配ってすぐ、子供たちに開けられ、中の依頼を読み上げる声が聞こえてくる。
「どんぐり丘で行方不明になった牧羊犬の捜索依頼だー!」
「あたしたちはクスの林で薬草を取ってくればいいのね!」
依頼はそれぞれパーティーごとに達成できそうなのが選ばれてるみたいだ。それでいて安全なもの。さっきからでてくるのはモンスターのでない場所ばかりだった。
依頼を渡された周りの子たちを見て、リリーシィちゃんもエルフィスちゃんもより一層そわそわする。
ようやく私たちの番がやってきた。
ウィークマン先生は私たちを見ると、ニコッと声をかけた。
「君たちのパーティーには少し難しめの依頼をだしました。でもエトワさんにエルフィスさん、それからリリーシィさんが力を合わせればきっと達成できると信じてますよ」
「はい、せんせー!」
「は~~~い」
「ふん、2人の力なんてなくても私ひとりいればどんな依頼も達成可能よ」
「それからエルフィスさんはガイダーであるエトワさんの言うことをきちんと聞いてくださいね。この前も探索の授業で『私なら楽勝よ』と下調べをせずに失敗しましたよね」
「うっ……」
ついでにエルフィスちゃんは釘も刺された。
「エトワさん、エルフィスさんのことをお願いしますよ」
「は~~~い」
「なんで私がこんな扱いなのよ……」
なんだかんだ、剣の勝負のおかげか、エルフィスちゃんは私の言うことを聞いてくれる。ウィークマン先生もそれをちゃっかり把握していた。
先生が去ったあと、私たちは依頼の封筒を開封する。
『至急コンゴミール村に来てください』
依頼書にはそれだけ書いてあった。何をしてほしいのかも書いてない。現地で聞けということだろうか。他の子がもらった依頼とはなかなか毛色が違うようだ。
それに、コンゴミール村……聞いたことのない村名だ。
先生の選んでくれた依頼だから、そんなに遠くはないと思うけど、相当、小さな村なのだろうか……。
謎の依頼にエルフィスちゃんは逆に燃え上がったようだ。
「ふん、言われた通りなかなか歯ごたえありそうな依頼じゃない。私たちにふさわしいわ」
「楽しみー」
リリーシィちゃんは純粋に楽しそうだ。
まあ、私も出来る限りかんばってみよう。
***
あれから調べたところ、コンゴミール村はルヴェンドの周辺域にある村だった。周辺域とはいっても、かなり離れていて、徒歩では半日ぐらいかかってしまうかもしれない。私が調べた本にも、それ以外の情報は乗っておらず、特産品なんかもないようだった。
交流もそれほどないらしく、馬車も出ていない。これは泊りがけの冒険になりそうだ。
ルーヴ・ロゼには休みますって届け出をだせばいいけど、問題は……。
「というわけで、一泊二日ぐらいで行ってこようと思うんだけど……」
問題は護衛役の子たちだった。
とはいっても、その中で熱心なのは、ミントくん、リンクスくん、ソフィアちゃんの三人。
「むぅ……わかった……」
「まあ……それなら仕方ないか。でも気をつけろよ」
「うんうん、危ないことは絶対しないよ!」
とはいっても、男の子たちは渋い顔をしつつも、なんだかんだオッケーはくれる。
問題は……。
この話を聞いてから、1人だけニコニコ笑顔になったソフィアちゃん。
ソフィアちゃんは笑顔のまま口を開いて言った。
「私も行きます」
私は首を振って止める。
「いやいや、ソフィアちゃんも学校あるでしょ。他の学校の課題なわけだし付き合わせるのは——
「行きます」
あっ……これ……もしかしてダダをこねてるとかそういうのではなく、決定事項っすか…………?
「行きます」
………………あ、はい。行きますよね。
私たちのパーティーにチート後衛が加入しました。
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