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連載
239.
村の小さな宿に荷物を降ろして、私たちは見張りをはじめた。
宿は村をふいに訪れた旅人のために置かれてるらしいけど、ゼイラードさんが来る前は一年前に迷い人が泊まったきりだったらしい。
宿の主人がいるわけでもなく、村人が交代ごうたいで管理してるみたいだ。
私たちはその宿の屋根に登らせてもらって村を見張ることにした。
この村では一番高い建物で見晴らしがいいからだ。
虫除けの薬を撒いて、それから毛布を二人で被って、お茶を飲みながら魔物が出現するのを待つ。日が落ちてきてみえてくる星空は綺麗で、こうしてるとキャンプに来たみたいだ。
まあ、あまり呑気にしてるのもどうかと思うけど。
そうやって時間が経ち、日が落ちてだいたい9時ぐらいの時刻なった。けれど、まだ魔物は姿を現さない。よい子のソフィアちゃんは少し眠そうにしていた。
私たち以外の人は、家にこもったっきり出てくる気配はない。まあみんな魔物をかなり怖がってたし、私たちに任せるつもりなのだろう。
そんなことを思ってたら、酒場から一人、恰幅のよいおじいちゃんがでてきた。ゼイラードさんだ。
ゼイラードさんはお酒を飲んだのか顔を赤くして、気持ち良さそうな表情で歩きながら、宿の屋根にいる私たちに話しかけてきた。
「おーい、子供が夜更かしかー?」
「見張りですのでー」
私が答えると、ゼイラードさんは楽しそうに笑いながら、右手の酒瓶を掲げてきた。
「じゃあ、これでも飲むといい。もちろん俺のおごりだ。なんつってったって、俺は小金持ちだからな!」
「未成年なので~」
私はゼイラードさんの勧めたお酒を断る。
この世界ではお酒は二十歳になってからというわけではないけれど、体が大きくなるまではあまり飲むことは進められてない。だいたい15歳ぐらいから解禁だろうか。
断ると、ゼイラードさんは酔っ払い特有の謎の大笑いをしながら、「がんばれよー」と言って酒場に戻っていった。変なお爺ちゃんである。
それから一時間ぐらい経ったころ。
「エトワさま、あれ!」
「うん、来たみたいだね」
森の奥から、こちらにやってくる気配があった。
のっしのしと、獣特有の消音された足音が、けれど耳に聞こえる感じで響いてくる。音を消しきれないということはそれだけ、重量が大きいということだ。パキッバキッという木の枝が折れる音も聞こえてくる。
どうやらあんまり隠密行動は得意じゃない魔物のようだった。
隠密行動が得意ではないということは犬型の魔獣だろうか。猫型の魔獣の場合は静かに動くタイプが多い。私はまだ見ぬ魔獣へ、どきどきと少し不謹慎な期待も膨らませながら、相手が目の前に現れるのを待った。
そして森の間から、ついに『それ』は姿を現した。
森の木々よりも、頭ひとつ分ぐらい高い、大きな体を持つ魔物。目は丸くぎょろりとして、左右で別方向を向いていてちょっと不気味だ。しかも、口からはベロをだしっぱなしにしていて、なんとなくだらしない。
なんというか……犬型とも猫型とも言い難い感じの……。変な感じの魔物、もしくは魔獣だった。
その魔物が現れた瞬間。
「きゃぁああああああああああ!」
ソフィアちゃんが悲鳴をあげた。
***
私は隣からあがった悲鳴にびっくりした。それがソフィアちゃんの声だったからだ。
ソフィアちゃんが悲鳴をあげた!?
そんなこと四歳のころから一緒に暮らしてこれまで、ほとんどなかったことのはずだ。
ソフィアちゃんの方向を振り返った私の目に映ったのは、顔を真っ青にして恐怖に震えるソフィアちゃんの姿……ではなかった。
「きゃー! きゃー! かわいいー! かわいいー!」
モンスターの方を見て、顔を真っ赤にして、子供のように(子供だけど)はしゃいでいるソフィアちゃんの姿だった。頬に手をあてて首を振りながら、その場でジャンプをしている。
「えっ、なに、あれ。どうしたの? あれ?」
私は首を傾げながら、ソフィアちゃんと魔物を交互に見る。
「見ましたか? エトワさま! あれはムイムイって魔物です! とてもかわいい魔物なんです!」
かわいい……?
控えめに言って、出来損ないのぬいぐるみのようなモンスターへの表現に私は首を傾げた。それからあることに気づく。
あれっていつもソフィアちゃんが寝るとき抱き枕にしているモンスターのぬいぐるみのモンスターだ。縮尺が違いすぎて気づかなかったけど、たしかに同じ特徴を持っていた。
ソフィアちゃんはムイムイの方を見ながら、嬉しそうに私に語りかける。
その間に、ムイムイとやらは、最初は村を警戒するように見てたけど、見張りが私たち子供二人しかいないと察知したのか、のしのしと村に侵入をはじめた。
おおぉぉい、ソフィアちゃん! 村に侵入されてるよ!? 大丈夫なの、これ!?
「わぁ、まさか村長さんが言ってたモンスターがムイムイだったなんて! ルヴェント周辺ではめったに見られないんですよ! 本当なら国境を越えて北に行くか、西の巨獣火山にいくか。でも巨獣火山は基本入れないので、やっぱり北にいくしか見られないんです! 灼熱地帯と寒冷な北の大地に住んでるのを不思議に思われるかもしれませんが、本来は寒い地域に住んでいて、灼熱地帯に適応したのは亜種だと言われています。亜種は毛が少し短く、色が薄くなってるのが特徴なんですが……さすがに夜だとあまりわかりませんね?」
ソフィアちゃんがムイムイトークで盛り上がろうとしてる間に、ムイムイは村の民家のひとつへと向かっていく。
「ムィムィイ~~~」
ムイムイはその名前の由来なのか、だらしなく開いた口から舌をだしたまま、よだれを垂らしながら野太い声でそんな鳴き声をあげた。
「わぁ! ムイムイの生鳴き声です! 生で聴けるなんて感動ですね! 徹夜したかいがありましたね! はぁ、近くで見ると、本当に可愛いです……。あ、もちろんエトワさまはあの子の百倍かわいいですよ?」
え……私、あれと同軸上に置かれてるの……? ソフィアちゃんの中で……。
よく言ってくれるかわいいの意味って……。?
私は生まれて初めて、ソフィアちゃんに対して不審感を抱いた。
そうしてる間にムイムイは民家に、その巨体で前足をかける。何かするつもりなのだ。
私は慌てて意識を、目の前のことに戻す。
「そ、ソフィアちゃん、それよりあれやばそうだよ! 魔物なんでしょ!? とりあえず倒そうよ!」
「えっ、あんなに可愛いのに倒さなきゃいけないんですか!?」
私の言葉に、ソフィアちゃんはショックを受けた表情をした。
「ムイィっ! ムイィイイ!」
そうしてある間に、ムイムイに乗っかられた民家がミシミシと音を立ててはじめる。
ソフィアちゃんは頬に手を当てて、小首を傾げて悲しそうに呟いた。
「倒したらかわいそうじゃありませんか? あんなにかわいいのに……」
その瞬間、ミシミシと音を立てていた家が、バキバキッとひしゃげた。
ソフィアちゃぁあああん!? どう考えてもあいつ、可愛いからって放っておいていい方向性の魔物じゃないよぉぉおっ!?
「ひぃいいいいい!?」
中に住んでる村の人が悲鳴をあげながら外に走り出てくる。
その二十秒後ぐらいにムイムイの体重で、家が完全に倒壊する。ムイムイは瓦礫になった家の中から、何かをぺろぺろと食べ始めた。心眼で見てみたところ、昨日の夕飯の残りみたいだった。
いやいや、残飯を漁る獣っていうのはいるっちゃいるけど、さすがにやり方と大きさがありえない。
そしてムイムイは当然、その程度じゃ満腹にならなかったのか、次の民家へと向かい始める。体の大きさから予想できる胃袋の大きさから見て、この村全部の家の残飯を食べ終えてもそれでお腹いっぱいになるのか……。
私は慌ててソフィアちゃんを説得する。
「ソフィアちゃん! あれは倒さなきゃダメな魔物だよ! そうじゃなきゃこの村が潰されちゃうよ! とにかく倒さないにしてもなんとか撃退しようよぉおおおおお!」
「は、はい! わかりました……! そうですよね! このままじゃ村の人が可哀想ですよね!」
私の説得を聞いてくれたのか、ソフィアちゃんはキリッとした表情で魔物の方向を向く。
そして目をつむり魔力を編み上げ、ムイムイに向かって魔法を放った。ソフィアちゃんはまだ小学生でありながら、この国でも有数の魔法の使い手なのである。本気になれば魔物が敵うはずがない!
これでムイムイとやらもおしまいだ!
ということにはならず……ソフィアちゃんの魔法はムイムイを宙にやさしくもちあげただけだった。
「やさしく、怪我させないように、慎重に……」
ソフィアちゃんはそのまま、魔法でムイムイを浮かせながら、割れ物を扱うようにやさしく慎重に森へと向かって移動させはじめる。どうやら、普段の魔法より神経を使うらしく、その全身は汗だくだった。
ふわふわと空に浮かぶムイムイが、ゆっくりと森の彼方へと離れていく。
そしてある程度離れたところで、ソフィアちゃんはムイムイを森の地面にそっと置いた。
「ふうっ……なんとか怪我させずに運べました!」
ソフィアちゃんが大仕事を終えたように、額の汗を拭う。
それで撃退できるの……? そんな不安が私の胸をよぎったけど、ムイムイは魔法で持ち上げられたことに驚いたのか、逃げるように村と反対方向へ走り去っていった。
「ムイムイさん……さようなら……」
ソフィアちゃんは悲しそうにその姿を見送る。
※ここで一旦完結、下は没に続く部分です。
そんなソフィアちゃんの悲しみに答えたわけではないだろうけど、ムイムイは翌日も村に姿を現した。
今度はお昼頃、数を増やして……。
※本当はソフィアちゃんのぬいぐるみのモンスターを書きたかっただけの話なので、ここで終わる予定のエピソードだったんですけどもうちょっと続きます。
予定外の話がここからは入っていくので、うまく落ちつけられなかったら……ちょっとここのオチで終わるように書き直すかもです。その時はお許しを……!
宿は村をふいに訪れた旅人のために置かれてるらしいけど、ゼイラードさんが来る前は一年前に迷い人が泊まったきりだったらしい。
宿の主人がいるわけでもなく、村人が交代ごうたいで管理してるみたいだ。
私たちはその宿の屋根に登らせてもらって村を見張ることにした。
この村では一番高い建物で見晴らしがいいからだ。
虫除けの薬を撒いて、それから毛布を二人で被って、お茶を飲みながら魔物が出現するのを待つ。日が落ちてきてみえてくる星空は綺麗で、こうしてるとキャンプに来たみたいだ。
まあ、あまり呑気にしてるのもどうかと思うけど。
そうやって時間が経ち、日が落ちてだいたい9時ぐらいの時刻なった。けれど、まだ魔物は姿を現さない。よい子のソフィアちゃんは少し眠そうにしていた。
私たち以外の人は、家にこもったっきり出てくる気配はない。まあみんな魔物をかなり怖がってたし、私たちに任せるつもりなのだろう。
そんなことを思ってたら、酒場から一人、恰幅のよいおじいちゃんがでてきた。ゼイラードさんだ。
ゼイラードさんはお酒を飲んだのか顔を赤くして、気持ち良さそうな表情で歩きながら、宿の屋根にいる私たちに話しかけてきた。
「おーい、子供が夜更かしかー?」
「見張りですのでー」
私が答えると、ゼイラードさんは楽しそうに笑いながら、右手の酒瓶を掲げてきた。
「じゃあ、これでも飲むといい。もちろん俺のおごりだ。なんつってったって、俺は小金持ちだからな!」
「未成年なので~」
私はゼイラードさんの勧めたお酒を断る。
この世界ではお酒は二十歳になってからというわけではないけれど、体が大きくなるまではあまり飲むことは進められてない。だいたい15歳ぐらいから解禁だろうか。
断ると、ゼイラードさんは酔っ払い特有の謎の大笑いをしながら、「がんばれよー」と言って酒場に戻っていった。変なお爺ちゃんである。
それから一時間ぐらい経ったころ。
「エトワさま、あれ!」
「うん、来たみたいだね」
森の奥から、こちらにやってくる気配があった。
のっしのしと、獣特有の消音された足音が、けれど耳に聞こえる感じで響いてくる。音を消しきれないということはそれだけ、重量が大きいということだ。パキッバキッという木の枝が折れる音も聞こえてくる。
どうやらあんまり隠密行動は得意じゃない魔物のようだった。
隠密行動が得意ではないということは犬型の魔獣だろうか。猫型の魔獣の場合は静かに動くタイプが多い。私はまだ見ぬ魔獣へ、どきどきと少し不謹慎な期待も膨らませながら、相手が目の前に現れるのを待った。
そして森の間から、ついに『それ』は姿を現した。
森の木々よりも、頭ひとつ分ぐらい高い、大きな体を持つ魔物。目は丸くぎょろりとして、左右で別方向を向いていてちょっと不気味だ。しかも、口からはベロをだしっぱなしにしていて、なんとなくだらしない。
なんというか……犬型とも猫型とも言い難い感じの……。変な感じの魔物、もしくは魔獣だった。
その魔物が現れた瞬間。
「きゃぁああああああああああ!」
ソフィアちゃんが悲鳴をあげた。
***
私は隣からあがった悲鳴にびっくりした。それがソフィアちゃんの声だったからだ。
ソフィアちゃんが悲鳴をあげた!?
そんなこと四歳のころから一緒に暮らしてこれまで、ほとんどなかったことのはずだ。
ソフィアちゃんの方向を振り返った私の目に映ったのは、顔を真っ青にして恐怖に震えるソフィアちゃんの姿……ではなかった。
「きゃー! きゃー! かわいいー! かわいいー!」
モンスターの方を見て、顔を真っ赤にして、子供のように(子供だけど)はしゃいでいるソフィアちゃんの姿だった。頬に手をあてて首を振りながら、その場でジャンプをしている。
「えっ、なに、あれ。どうしたの? あれ?」
私は首を傾げながら、ソフィアちゃんと魔物を交互に見る。
「見ましたか? エトワさま! あれはムイムイって魔物です! とてもかわいい魔物なんです!」
かわいい……?
控えめに言って、出来損ないのぬいぐるみのようなモンスターへの表現に私は首を傾げた。それからあることに気づく。
あれっていつもソフィアちゃんが寝るとき抱き枕にしているモンスターのぬいぐるみのモンスターだ。縮尺が違いすぎて気づかなかったけど、たしかに同じ特徴を持っていた。
ソフィアちゃんはムイムイの方を見ながら、嬉しそうに私に語りかける。
その間に、ムイムイとやらは、最初は村を警戒するように見てたけど、見張りが私たち子供二人しかいないと察知したのか、のしのしと村に侵入をはじめた。
おおぉぉい、ソフィアちゃん! 村に侵入されてるよ!? 大丈夫なの、これ!?
「わぁ、まさか村長さんが言ってたモンスターがムイムイだったなんて! ルヴェント周辺ではめったに見られないんですよ! 本当なら国境を越えて北に行くか、西の巨獣火山にいくか。でも巨獣火山は基本入れないので、やっぱり北にいくしか見られないんです! 灼熱地帯と寒冷な北の大地に住んでるのを不思議に思われるかもしれませんが、本来は寒い地域に住んでいて、灼熱地帯に適応したのは亜種だと言われています。亜種は毛が少し短く、色が薄くなってるのが特徴なんですが……さすがに夜だとあまりわかりませんね?」
ソフィアちゃんがムイムイトークで盛り上がろうとしてる間に、ムイムイは村の民家のひとつへと向かっていく。
「ムィムィイ~~~」
ムイムイはその名前の由来なのか、だらしなく開いた口から舌をだしたまま、よだれを垂らしながら野太い声でそんな鳴き声をあげた。
「わぁ! ムイムイの生鳴き声です! 生で聴けるなんて感動ですね! 徹夜したかいがありましたね! はぁ、近くで見ると、本当に可愛いです……。あ、もちろんエトワさまはあの子の百倍かわいいですよ?」
え……私、あれと同軸上に置かれてるの……? ソフィアちゃんの中で……。
よく言ってくれるかわいいの意味って……。?
私は生まれて初めて、ソフィアちゃんに対して不審感を抱いた。
そうしてる間にムイムイは民家に、その巨体で前足をかける。何かするつもりなのだ。
私は慌てて意識を、目の前のことに戻す。
「そ、ソフィアちゃん、それよりあれやばそうだよ! 魔物なんでしょ!? とりあえず倒そうよ!」
「えっ、あんなに可愛いのに倒さなきゃいけないんですか!?」
私の言葉に、ソフィアちゃんはショックを受けた表情をした。
「ムイィっ! ムイィイイ!」
そうしてある間に、ムイムイに乗っかられた民家がミシミシと音を立ててはじめる。
ソフィアちゃんは頬に手を当てて、小首を傾げて悲しそうに呟いた。
「倒したらかわいそうじゃありませんか? あんなにかわいいのに……」
その瞬間、ミシミシと音を立てていた家が、バキバキッとひしゃげた。
ソフィアちゃぁあああん!? どう考えてもあいつ、可愛いからって放っておいていい方向性の魔物じゃないよぉぉおっ!?
「ひぃいいいいい!?」
中に住んでる村の人が悲鳴をあげながら外に走り出てくる。
その二十秒後ぐらいにムイムイの体重で、家が完全に倒壊する。ムイムイは瓦礫になった家の中から、何かをぺろぺろと食べ始めた。心眼で見てみたところ、昨日の夕飯の残りみたいだった。
いやいや、残飯を漁る獣っていうのはいるっちゃいるけど、さすがにやり方と大きさがありえない。
そしてムイムイは当然、その程度じゃ満腹にならなかったのか、次の民家へと向かい始める。体の大きさから予想できる胃袋の大きさから見て、この村全部の家の残飯を食べ終えてもそれでお腹いっぱいになるのか……。
私は慌ててソフィアちゃんを説得する。
「ソフィアちゃん! あれは倒さなきゃダメな魔物だよ! そうじゃなきゃこの村が潰されちゃうよ! とにかく倒さないにしてもなんとか撃退しようよぉおおおおお!」
「は、はい! わかりました……! そうですよね! このままじゃ村の人が可哀想ですよね!」
私の説得を聞いてくれたのか、ソフィアちゃんはキリッとした表情で魔物の方向を向く。
そして目をつむり魔力を編み上げ、ムイムイに向かって魔法を放った。ソフィアちゃんはまだ小学生でありながら、この国でも有数の魔法の使い手なのである。本気になれば魔物が敵うはずがない!
これでムイムイとやらもおしまいだ!
ということにはならず……ソフィアちゃんの魔法はムイムイを宙にやさしくもちあげただけだった。
「やさしく、怪我させないように、慎重に……」
ソフィアちゃんはそのまま、魔法でムイムイを浮かせながら、割れ物を扱うようにやさしく慎重に森へと向かって移動させはじめる。どうやら、普段の魔法より神経を使うらしく、その全身は汗だくだった。
ふわふわと空に浮かぶムイムイが、ゆっくりと森の彼方へと離れていく。
そしてある程度離れたところで、ソフィアちゃんはムイムイを森の地面にそっと置いた。
「ふうっ……なんとか怪我させずに運べました!」
ソフィアちゃんが大仕事を終えたように、額の汗を拭う。
それで撃退できるの……? そんな不安が私の胸をよぎったけど、ムイムイは魔法で持ち上げられたことに驚いたのか、逃げるように村と反対方向へ走り去っていった。
「ムイムイさん……さようなら……」
ソフィアちゃんは悲しそうにその姿を見送る。
※ここで一旦完結、下は没に続く部分です。
そんなソフィアちゃんの悲しみに答えたわけではないだろうけど、ムイムイは翌日も村に姿を現した。
今度はお昼頃、数を増やして……。
※本当はソフィアちゃんのぬいぐるみのモンスターを書きたかっただけの話なので、ここで終わる予定のエピソードだったんですけどもうちょっと続きます。
予定外の話がここからは入っていくので、うまく落ちつけられなかったら……ちょっとここのオチで終わるように書き直すかもです。その時はお許しを……!
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