公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!

小択出新都

文字の大きさ
120 / 151
連載

243.ソフィアちゃんたちの里帰り

しおりを挟む
 ソフィアちゃんたちが里帰りすることになった。
 実を言うと、今までも2、3日は帰ったりしてたのだ。でも、そのときは一人ずつだったし、私の護衛があるからとすぐに戻ってきてしまっていた。
 今回の里帰りの期間は、学校の長期休みのスケジュールに合わせてあって、その長さは一ヶ月ほど。公爵家で6年間がんばってきたソフィアちゃんたちへのご褒美みたいなものだった。

 ソフィアちゃんたちのお父さん、お母さんも、この時期にあわせて休みを貰っていて、一緒に過ごせることになっている。
 せっかくだから家族水入らずの時間を邪魔するまいと、静かにみんなを送り出そうと思っていた私だけど、そんな私にソフィアちゃんたちから提案があった。

「エトワさまも私たちの家にいらっしゃいませんか?」
「えええ、さすがにそれはソフィアちゃんたちのご両親に申し訳ないよ。私は6年間も一緒に過ごさせてもらってるわけだし」
「大丈夫です。一ヶ月もお休みももらっていますから。家族で過ごす時間はたっぷりあります。ですから、エトワさまが私たちのところに6日間ずつ滞在してくだされば、みんな平等にエトワさまと過ごすことができます」

 うんうん、とミントくんとリンクスくんが頷いている。すでに二人には話が通ってるらしい。

「えっ、その話だと僕の家にも来るんですけど……本気ですか?」

 クリュートくんだけ、びっくりしたあとちょっと嫌そうな顔をした。クリュートくんには話が通ってなかったらしい。

「我が家はいつでも歓迎ですよ。もちろん最終的にはエトワさまのご意志にお任せしますが」

 スリゼルくんはいつもの感情の見えない笑顔だった。
 う~ん、どうしよう。正直、みんなのご両親に会ってみたいという気持ちはある。仕事が忙しいらしく、今まで会ったことがなかったし。でも、本当にお邪魔していいものだろうか。
 ソフィアちゃんたちは歓迎してくれているようだけど、クリュートくんなんかは露骨に嫌がってるし。

 そう思ってたら、背後から声がかかった。

「行ってきなさい」
「お母さま……!? あっ、いえ、ダリアさま」

 背後の扉から、部屋に入ってきたのはお母さまだった。そういえば別邸に帰ってきていたのだ。溜まっていた仕事を四分の一終わらせたあと、家臣たちに休息が必要だと主張して、この別邸に戻ってきていたのである。
 帰ってくるという表現が正しいのかはわからないけど、この家はお父様とお母様のものなのだから、おかしくはない表現のはずだ。

 それよりもお母さまと呼んでしまったのがまずかったかもしれない。お父様は呼び慣れてるから、ちゃんと名前で呼べるんだけど、お母様はまだ慣れてないから間違ってしまう。
 ほら、呼び間違ってしまったせいで、お母様の眉間にシワが浮かんでいる。ここは素直に謝ろう。

「ごめんなさい、ダリアさま」
「いえ……その……別にいいのよ……お母さまと呼んでも……」
「いえいえ、しっかりやらせていただきます!」

 廃嫡された身でありながら置いてもらってるのだから、お家の人にはできるだけ気持ち良くなってもらえる応対をしたい!
 ギュッと握り拳を作った私の思いとは裏腹に、その後、数秒間ちょっと気まずい沈黙が流れた。

 うーん……えっと、あれ、何の話してたんだっけ。

「コホンッ、とにかく行ってくるといいわ。シルウェストレの人たちなら、あなたを無碍に扱ったりはしないでしょう」

 そうそう、ソフィアちゃんたちのお家を訪問するという話だった。

「それに、あなたに渡さなきゃいけないものがあるのよ……」

 そう言うお母様の顔は、なぜか気が進まなそうな表情だった。渡さなきゃいけないものとはいったいなんなんだろう。
 首を傾げる私に、手渡されたのは一枚の手紙だった。

 『エリデ男爵より エトワさまへ』
 封筒にはそう書かれている。

 エリデ男爵……? 聞き覚えのない人だ。

「公爵家の老人たちがそろそろ会わせる時期だろうって勝手に話を進めていたの。私は反対したのよ……。でも、クロスウェルさまは本人に選択肢は与えるべきだろうだって……」

 どうやらシルフィール公爵家の意思が関わることで、どうしてかお母様はこの手紙を私に渡したくなかったようだ。

「開けてみてもいいですか?」

 とにかく、内容がわからないことには、どのように反応していいかわからないので、中を見てみたい。お母様がこくっと頷いたので、私は手紙を開けて、中の文章を読み始める。

「これは……招待状ですか?」

 手紙の内容を要約すると、そういうことだった。エリデ男爵という人が、私をお家にお招きしようとしているらしい。
 お母様がため息を吐きながら肯く。

「ええ、そうよ。エリデ男爵の所領は、アリエル侯爵家の領地から南西に行ったところにあるわ。不本意だけど、そこに旅行する予定があるならちょうどいいのよ。それに他に予定があれば、老人たちも長期休暇の間、ずっと男爵領に居ろと言うことはないでしょ」

 どうにも、お母様の口ぶりからすると、招待を受けることは強制のようだった。

「わかりました。ソフィアちゃんたちのお家を回ったあとに行ってみます」

 行きたくないと言って困らせるのもあれだし、そもそも私としては断る理由もないから、招待を受けることにした。そうなると、護衛役の子たちのお家巡りは、スリゼルくんの家が最後になる。
 うーん、男爵家ではいったい何があるんだろう。気になるけど、お母様はあんまり話たくなさそうだった。

 最後にお母様は膝をついて、私と視線を合わせると、真剣な表情で言った。

「誰にどんなことを言われても、あなたの意思で決めていいんだからね……」

 よくわからないけど、頷いておいた。
 その後、ソフィアちゃんたちとお家訪問の予定を詰めたりしたあと、部屋に戻ってきた。

 私はベッドに寝転がりながら、もう一度手紙を開く。
 そこには綺麗な字で、こう書かれていた。

『エトワさまへ
 今年の長期休暇は、ぜひ我が家に遊びにお越しください。暖かな家族と静かな場所があなたをお待ちしています——。
                    忘れられた地の領主 エリデ男爵より』
しおりを挟む
感想 1,687

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。