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243.ソフィアちゃんたちの里帰り
ソフィアちゃんたちが里帰りすることになった。
実を言うと、今までも2、3日は帰ったりしてたのだ。でも、そのときは一人ずつだったし、私の護衛があるからとすぐに戻ってきてしまっていた。
今回の里帰りの期間は、学校の長期休みのスケジュールに合わせてあって、その長さは一ヶ月ほど。公爵家で6年間がんばってきたソフィアちゃんたちへのご褒美みたいなものだった。
ソフィアちゃんたちのお父さん、お母さんも、この時期にあわせて休みを貰っていて、一緒に過ごせることになっている。
せっかくだから家族水入らずの時間を邪魔するまいと、静かにみんなを送り出そうと思っていた私だけど、そんな私にソフィアちゃんたちから提案があった。
「エトワさまも私たちの家にいらっしゃいませんか?」
「えええ、さすがにそれはソフィアちゃんたちのご両親に申し訳ないよ。私は6年間も一緒に過ごさせてもらってるわけだし」
「大丈夫です。一ヶ月もお休みももらっていますから。家族で過ごす時間はたっぷりあります。ですから、エトワさまが私たちのところに6日間ずつ滞在してくだされば、みんな平等にエトワさまと過ごすことができます」
うんうん、とミントくんとリンクスくんが頷いている。すでに二人には話が通ってるらしい。
「えっ、その話だと僕の家にも来るんですけど……本気ですか?」
クリュートくんだけ、びっくりしたあとちょっと嫌そうな顔をした。クリュートくんには話が通ってなかったらしい。
「我が家はいつでも歓迎ですよ。もちろん最終的にはエトワさまのご意志にお任せしますが」
スリゼルくんはいつもの感情の見えない笑顔だった。
う~ん、どうしよう。正直、みんなのご両親に会ってみたいという気持ちはある。仕事が忙しいらしく、今まで会ったことがなかったし。でも、本当にお邪魔していいものだろうか。
ソフィアちゃんたちは歓迎してくれているようだけど、クリュートくんなんかは露骨に嫌がってるし。
そう思ってたら、背後から声がかかった。
「行ってきなさい」
「お母さま……!? あっ、いえ、ダリアさま」
背後の扉から、部屋に入ってきたのはお母さまだった。そういえば別邸に帰ってきていたのだ。溜まっていた仕事を四分の一終わらせたあと、家臣たちに休息が必要だと主張して、この別邸に戻ってきていたのである。
帰ってくるという表現が正しいのかはわからないけど、この家はお父様とお母様のものなのだから、おかしくはない表現のはずだ。
それよりもお母さまと呼んでしまったのがまずかったかもしれない。お父様は呼び慣れてるから、ちゃんと名前で呼べるんだけど、お母様はまだ慣れてないから間違ってしまう。
ほら、呼び間違ってしまったせいで、お母様の眉間にシワが浮かんでいる。ここは素直に謝ろう。
「ごめんなさい、ダリアさま」
「いえ……その……別にいいのよ……お母さまと呼んでも……」
「いえいえ、しっかりやらせていただきます!」
廃嫡された身でありながら置いてもらってるのだから、お家の人にはできるだけ気持ち良くなってもらえる応対をしたい!
ギュッと握り拳を作った私の思いとは裏腹に、その後、数秒間ちょっと気まずい沈黙が流れた。
うーん……えっと、あれ、何の話してたんだっけ。
「コホンッ、とにかく行ってくるといいわ。シルウェストレの人たちなら、あなたを無碍に扱ったりはしないでしょう」
そうそう、ソフィアちゃんたちのお家を訪問するという話だった。
「それに、あなたに渡さなきゃいけないものがあるのよ……」
そう言うお母様の顔は、なぜか気が進まなそうな表情だった。渡さなきゃいけないものとはいったいなんなんだろう。
首を傾げる私に、手渡されたのは一枚の手紙だった。
『エリデ男爵より エトワさまへ』
封筒にはそう書かれている。
エリデ男爵……? 聞き覚えのない人だ。
「公爵家の老人たちがそろそろ会わせる時期だろうって勝手に話を進めていたの。私は反対したのよ……。でも、クロスウェルさまは本人に選択肢は与えるべきだろうだって……」
どうやらシルフィール公爵家の意思が関わることで、どうしてかお母様はこの手紙を私に渡したくなかったようだ。
「開けてみてもいいですか?」
とにかく、内容がわからないことには、どのように反応していいかわからないので、中を見てみたい。お母様がこくっと頷いたので、私は手紙を開けて、中の文章を読み始める。
「これは……招待状ですか?」
手紙の内容を要約すると、そういうことだった。エリデ男爵という人が、私をお家にお招きしようとしているらしい。
お母様がため息を吐きながら肯く。
「ええ、そうよ。エリデ男爵の所領は、アリエル侯爵家の領地から南西に行ったところにあるわ。不本意だけど、そこに旅行する予定があるならちょうどいいのよ。それに他に予定があれば、老人たちも長期休暇の間、ずっと男爵領に居ろと言うことはないでしょ」
どうにも、お母様の口ぶりからすると、招待を受けることは強制のようだった。
「わかりました。ソフィアちゃんたちのお家を回ったあとに行ってみます」
行きたくないと言って困らせるのもあれだし、そもそも私としては断る理由もないから、招待を受けることにした。そうなると、護衛役の子たちのお家巡りは、スリゼルくんの家が最後になる。
うーん、男爵家ではいったい何があるんだろう。気になるけど、お母様はあんまり話たくなさそうだった。
最後にお母様は膝をついて、私と視線を合わせると、真剣な表情で言った。
「誰にどんなことを言われても、あなたの意思で決めていいんだからね……」
よくわからないけど、頷いておいた。
その後、ソフィアちゃんたちとお家訪問の予定を詰めたりしたあと、部屋に戻ってきた。
私はベッドに寝転がりながら、もう一度手紙を開く。
そこには綺麗な字で、こう書かれていた。
『エトワさまへ
今年の長期休暇は、ぜひ我が家に遊びにお越しください。暖かな家族と静かな場所があなたをお待ちしています——。
忘れられた地の領主 エリデ男爵より』
実を言うと、今までも2、3日は帰ったりしてたのだ。でも、そのときは一人ずつだったし、私の護衛があるからとすぐに戻ってきてしまっていた。
今回の里帰りの期間は、学校の長期休みのスケジュールに合わせてあって、その長さは一ヶ月ほど。公爵家で6年間がんばってきたソフィアちゃんたちへのご褒美みたいなものだった。
ソフィアちゃんたちのお父さん、お母さんも、この時期にあわせて休みを貰っていて、一緒に過ごせることになっている。
せっかくだから家族水入らずの時間を邪魔するまいと、静かにみんなを送り出そうと思っていた私だけど、そんな私にソフィアちゃんたちから提案があった。
「エトワさまも私たちの家にいらっしゃいませんか?」
「えええ、さすがにそれはソフィアちゃんたちのご両親に申し訳ないよ。私は6年間も一緒に過ごさせてもらってるわけだし」
「大丈夫です。一ヶ月もお休みももらっていますから。家族で過ごす時間はたっぷりあります。ですから、エトワさまが私たちのところに6日間ずつ滞在してくだされば、みんな平等にエトワさまと過ごすことができます」
うんうん、とミントくんとリンクスくんが頷いている。すでに二人には話が通ってるらしい。
「えっ、その話だと僕の家にも来るんですけど……本気ですか?」
クリュートくんだけ、びっくりしたあとちょっと嫌そうな顔をした。クリュートくんには話が通ってなかったらしい。
「我が家はいつでも歓迎ですよ。もちろん最終的にはエトワさまのご意志にお任せしますが」
スリゼルくんはいつもの感情の見えない笑顔だった。
う~ん、どうしよう。正直、みんなのご両親に会ってみたいという気持ちはある。仕事が忙しいらしく、今まで会ったことがなかったし。でも、本当にお邪魔していいものだろうか。
ソフィアちゃんたちは歓迎してくれているようだけど、クリュートくんなんかは露骨に嫌がってるし。
そう思ってたら、背後から声がかかった。
「行ってきなさい」
「お母さま……!? あっ、いえ、ダリアさま」
背後の扉から、部屋に入ってきたのはお母さまだった。そういえば別邸に帰ってきていたのだ。溜まっていた仕事を四分の一終わらせたあと、家臣たちに休息が必要だと主張して、この別邸に戻ってきていたのである。
帰ってくるという表現が正しいのかはわからないけど、この家はお父様とお母様のものなのだから、おかしくはない表現のはずだ。
それよりもお母さまと呼んでしまったのがまずかったかもしれない。お父様は呼び慣れてるから、ちゃんと名前で呼べるんだけど、お母様はまだ慣れてないから間違ってしまう。
ほら、呼び間違ってしまったせいで、お母様の眉間にシワが浮かんでいる。ここは素直に謝ろう。
「ごめんなさい、ダリアさま」
「いえ……その……別にいいのよ……お母さまと呼んでも……」
「いえいえ、しっかりやらせていただきます!」
廃嫡された身でありながら置いてもらってるのだから、お家の人にはできるだけ気持ち良くなってもらえる応対をしたい!
ギュッと握り拳を作った私の思いとは裏腹に、その後、数秒間ちょっと気まずい沈黙が流れた。
うーん……えっと、あれ、何の話してたんだっけ。
「コホンッ、とにかく行ってくるといいわ。シルウェストレの人たちなら、あなたを無碍に扱ったりはしないでしょう」
そうそう、ソフィアちゃんたちのお家を訪問するという話だった。
「それに、あなたに渡さなきゃいけないものがあるのよ……」
そう言うお母様の顔は、なぜか気が進まなそうな表情だった。渡さなきゃいけないものとはいったいなんなんだろう。
首を傾げる私に、手渡されたのは一枚の手紙だった。
『エリデ男爵より エトワさまへ』
封筒にはそう書かれている。
エリデ男爵……? 聞き覚えのない人だ。
「公爵家の老人たちがそろそろ会わせる時期だろうって勝手に話を進めていたの。私は反対したのよ……。でも、クロスウェルさまは本人に選択肢は与えるべきだろうだって……」
どうやらシルフィール公爵家の意思が関わることで、どうしてかお母様はこの手紙を私に渡したくなかったようだ。
「開けてみてもいいですか?」
とにかく、内容がわからないことには、どのように反応していいかわからないので、中を見てみたい。お母様がこくっと頷いたので、私は手紙を開けて、中の文章を読み始める。
「これは……招待状ですか?」
手紙の内容を要約すると、そういうことだった。エリデ男爵という人が、私をお家にお招きしようとしているらしい。
お母様がため息を吐きながら肯く。
「ええ、そうよ。エリデ男爵の所領は、アリエル侯爵家の領地から南西に行ったところにあるわ。不本意だけど、そこに旅行する予定があるならちょうどいいのよ。それに他に予定があれば、老人たちも長期休暇の間、ずっと男爵領に居ろと言うことはないでしょ」
どうにも、お母様の口ぶりからすると、招待を受けることは強制のようだった。
「わかりました。ソフィアちゃんたちのお家を回ったあとに行ってみます」
行きたくないと言って困らせるのもあれだし、そもそも私としては断る理由もないから、招待を受けることにした。そうなると、護衛役の子たちのお家巡りは、スリゼルくんの家が最後になる。
うーん、男爵家ではいったい何があるんだろう。気になるけど、お母様はあんまり話たくなさそうだった。
最後にお母様は膝をついて、私と視線を合わせると、真剣な表情で言った。
「誰にどんなことを言われても、あなたの意思で決めていいんだからね……」
よくわからないけど、頷いておいた。
その後、ソフィアちゃんたちとお家訪問の予定を詰めたりしたあと、部屋に戻ってきた。
私はベッドに寝転がりながら、もう一度手紙を開く。
そこには綺麗な字で、こう書かれていた。
『エトワさまへ
今年の長期休暇は、ぜひ我が家に遊びにお越しください。暖かな家族と静かな場所があなたをお待ちしています——。
忘れられた地の領主 エリデ男爵より』
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