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254.
リオンさんとレイモンドさんについていくと、山小屋まで案内された。
「さっきも言ったようにトラブルが起きてのう。しばらくこの小屋を借りたんじゃよ。持ち主にもちゃんと許可を取っておるから、自分の家だとおもって過ごしておくれ」
レイモンドさんがそう言ってくれる。
リオンさんが扉を開けると、パッと小さな影たちが飛び出してきた。
「わあ、リオン姉ちゃんおかえり~!」
「おかえりなさ~い」
「おそいよ~!」
私よりもちょっと幼い、年中さんぐらいの年頃の子供たちだ。人数は三人。
リオンさんの足元に抱きついたり、背中によじのぼったり、目の前で駄々を捏ねたりしている。
どうやらとても懐かれているようだ。
リオンさんはそんな子供たちを叱る。
「こら、お前ら寝てろって言っただろうが! もう夜も遅いんだよ!」
リオンさんが怒っても、子供たちは怯える気配はない。
子供たちにまとわりつかれる姿は、見た目は怖いけど本性は優しい大型の獣みたいだ。
どれどれ、私も。
「リオンおね~~~さ~~~ん!」
親交を深めようと、私も背後から抱きつこうとすると。
ぴゃっと飛び退かれた。
その動物的な動きは、不思議と見覚えがある気がした。
でも、拒否されたことは少しショックだ。
「なぜに私だけ……」
他の子は抱きついてもいいのに……
目尻に涙を浮かべてみせると、リオンさんがちょっと申し訳なさそうな顔をして捲し立てた。
「あんたが急に動くとピリッとくるんだよ!」
さっきまでほぼ敵視されてる状態だったのに、こういう風に申し訳なさを感じるとは素直な人だ。正直、面白い。
子供たちはようやく私に気付いたようだった。
不思議そうな目で見てくる。
「その子だれ……?」
「だあれ……?」
「何者だ!」
まあ初対面なので、そんな反応になりますよね。
またリオンさんの私を見る瞳の警戒度が上がってしまった。
「あんた本当に怪しい奴じゃないんだろうね……」
「いえいえ、信じてくださいよ。他の人から依頼を受けて探しにきたんですって~」
今のところ怪しい行動は取ってないのと、レイモンドさんは一貫して信じてくれてるので、なんとか受け入れてもらえました。
***
その日は山小屋で泊まり、朝起きるとレイモンドさんから話を聞くことになった。
「ええ、そんなに離れた場所なんですか!?」
私の国の貴族らしき人たちと会ったことから、国内のどこかだと思ってたら、国を三つぐらい挟んでいる場所だった。
距離的には、絶望的なほどは遠くはないけど、結構離れていると言っていい。
私一人が帰るなら、力を解放してしまえば帰れるけど、子供たちも連れて帰るとなると難しい。
「念の為の確認じゃが、お主も遺跡からこの場所に飛ばされてきたということで間違いないか?」
「はい、なぜこの場所に飛ばされたのかは、わからないんですけど」
「それはこの地にも遺跡があるからじゃよ。お主らが飛ばされた遺跡とは対になっておるものじゃ」
「じゃあ、そこを調べれば戻る方法がもしかして!?」
子供たちを帰せる希望が湧いてきたと思ったら、レイモンドさんからは期待以上の答えが帰ってきた。
「わしは各地を周り遺跡の研究をしている貴族でな。こちらの遺跡を使って、お主らを元の場所に帰す方法についてはわかっておる」
「ええ! じゃあ、もう帰れるってことですか!?」
なんて早い問題解決、っと思ってたらレイモンドさんは申し訳なさそうな顔をした。
「それが……先ほどから言っておるトラブルがこれにも絡んでおってな。それについては後で話ていいかのう。お主に見てもらいたいものがあるのじゃよ」
「は、はい。わかりました」
見てもらいたいものってなんだろう。
レイモンドさんとのお話はそこでお開きになり、朝食を食べてから行動しようということになった。
リオンさんは子供たちを連れて、山小屋の外で朝食を作ってくれている。
小屋をすっと出ると、子供たちが火に近づかないように追い払いながら、朝食を作っているリオンさんがいた。
私は気配を消して、背後に立つと声をかける。
「リオンおね~さ~ん」
「ぎゃあっ!」
リオンさんは猫科の動物的な動きでぴゃっと飛び退く。
う~ん、この動き、不思議とまた見たくなっちゃうんだよね。
「あっ、あんたねえ! 気配を消して近づいてくるんじゃないよ!」
ただリオンさんを怒らさせたようだ。ほっぺをぎゅっと掴んで引っ張られる。
結構、痛い。
「ふぁふぁなあ、ふふーにひはふいははへへふほ?」
「嘘つくんじゃないよ! あそこまで完璧に気配を消しておいて、わざとじゃないってあるかい!」
いや、はい、わざとですけど。
かなりびっくりさせてしまったらしい。頬を離してもらったころには、赤く腫れてしまっていた。
早く治るように、しばらくムニムニしておく。
「まったく何者なんだい……。暗殺者に狙われたときだって、ここまで背後からの接近を許したことはないのに……」
それは変わった経歴を持ってらっしゃる。
「朝食作るの手伝いますよ」
私はリオンさんのもとにやってきた本題を告げると、さっと料理の内容をチェックした。
どうやらお鍋を作ってるみたいだ。
手が足りてないところがないか見ていくと、野菜をまだ切ってなかった。
私は包丁を取ると、ささっと根菜を乱切りしていく。
異世界に転生してからずっと料理修行してきただけあって、その手際はなかなかのものじゃないかと我ながら思えた。
「へ~、うまいもんだね」
さっきまで怒っていたリオンさんも関心してくれる。
いちいち反応が素直で、なんだか面白い。
でも、包丁を持っているときはふざけられないので、ひたすら真面目に仕事する。
「あんたのおかげで助かったよ。子供たちの面倒を見ながら料理を作るのは一苦労でね」
おかげでリオンさんの信頼ポイントもだいぶ稼げたようだ。
子供たちも私の行動に感化されたのか、野菜を洗ったり、器を運んだりしてくれていた。
みんなで朝食を食べると、私とリオンさん、レイモンドさんの三人でまた小屋を発った。
今度はどこに行くのだろう。
「爺さん、あれをこんな子供に見せて意味があるのかい?」
「ほほほ、昨日は警戒して飛びかかろうとしておった癖に、今日は子供扱いしおるのか。まあ、意味があるのかはワシもわからんが、悪いことは起こるまい」
どうやら案内してくれる場所には何かがあるらしい。
向かっている場所は、この大きな湖の端っこに位置する場所のようだった。
近づいていくと私は気づく。
古びた超巨大な岩がこの湖の端で蓋していることを。それは二つの山の谷を塞ぐように置かれていることを。
つまり、湖の周りを囲んでいた小高い丘だと思っていた地形は、山の峰(みね)だったのだ。
岩の向こうは直角の断崖絶壁になっていて、岩に開けられた穴から水が下の方に流れていっている。
この地形は完璧に、前世で見たことがあるダムと同じものだった。
「あれが見えるかね?」
レイモンドさんは壁の前で立ち止まり、水の底を指す。
私はこの湖が想像以上の水深と、水量を保持していることに気付いた。
そして私の心眼が、その深い水底に赤く禍々しく発光する二つの巨大な球体を捉える。
それは瞳だった。
私が幼い頃に接触したエンシェントゴーレム、あれの10倍を軽く超える巨体を持つ、サンショウウオのような形をしたゴーレムの。
「さっきも言ったようにトラブルが起きてのう。しばらくこの小屋を借りたんじゃよ。持ち主にもちゃんと許可を取っておるから、自分の家だとおもって過ごしておくれ」
レイモンドさんがそう言ってくれる。
リオンさんが扉を開けると、パッと小さな影たちが飛び出してきた。
「わあ、リオン姉ちゃんおかえり~!」
「おかえりなさ~い」
「おそいよ~!」
私よりもちょっと幼い、年中さんぐらいの年頃の子供たちだ。人数は三人。
リオンさんの足元に抱きついたり、背中によじのぼったり、目の前で駄々を捏ねたりしている。
どうやらとても懐かれているようだ。
リオンさんはそんな子供たちを叱る。
「こら、お前ら寝てろって言っただろうが! もう夜も遅いんだよ!」
リオンさんが怒っても、子供たちは怯える気配はない。
子供たちにまとわりつかれる姿は、見た目は怖いけど本性は優しい大型の獣みたいだ。
どれどれ、私も。
「リオンおね~~~さ~~~ん!」
親交を深めようと、私も背後から抱きつこうとすると。
ぴゃっと飛び退かれた。
その動物的な動きは、不思議と見覚えがある気がした。
でも、拒否されたことは少しショックだ。
「なぜに私だけ……」
他の子は抱きついてもいいのに……
目尻に涙を浮かべてみせると、リオンさんがちょっと申し訳なさそうな顔をして捲し立てた。
「あんたが急に動くとピリッとくるんだよ!」
さっきまでほぼ敵視されてる状態だったのに、こういう風に申し訳なさを感じるとは素直な人だ。正直、面白い。
子供たちはようやく私に気付いたようだった。
不思議そうな目で見てくる。
「その子だれ……?」
「だあれ……?」
「何者だ!」
まあ初対面なので、そんな反応になりますよね。
またリオンさんの私を見る瞳の警戒度が上がってしまった。
「あんた本当に怪しい奴じゃないんだろうね……」
「いえいえ、信じてくださいよ。他の人から依頼を受けて探しにきたんですって~」
今のところ怪しい行動は取ってないのと、レイモンドさんは一貫して信じてくれてるので、なんとか受け入れてもらえました。
***
その日は山小屋で泊まり、朝起きるとレイモンドさんから話を聞くことになった。
「ええ、そんなに離れた場所なんですか!?」
私の国の貴族らしき人たちと会ったことから、国内のどこかだと思ってたら、国を三つぐらい挟んでいる場所だった。
距離的には、絶望的なほどは遠くはないけど、結構離れていると言っていい。
私一人が帰るなら、力を解放してしまえば帰れるけど、子供たちも連れて帰るとなると難しい。
「念の為の確認じゃが、お主も遺跡からこの場所に飛ばされてきたということで間違いないか?」
「はい、なぜこの場所に飛ばされたのかは、わからないんですけど」
「それはこの地にも遺跡があるからじゃよ。お主らが飛ばされた遺跡とは対になっておるものじゃ」
「じゃあ、そこを調べれば戻る方法がもしかして!?」
子供たちを帰せる希望が湧いてきたと思ったら、レイモンドさんからは期待以上の答えが帰ってきた。
「わしは各地を周り遺跡の研究をしている貴族でな。こちらの遺跡を使って、お主らを元の場所に帰す方法についてはわかっておる」
「ええ! じゃあ、もう帰れるってことですか!?」
なんて早い問題解決、っと思ってたらレイモンドさんは申し訳なさそうな顔をした。
「それが……先ほどから言っておるトラブルがこれにも絡んでおってな。それについては後で話ていいかのう。お主に見てもらいたいものがあるのじゃよ」
「は、はい。わかりました」
見てもらいたいものってなんだろう。
レイモンドさんとのお話はそこでお開きになり、朝食を食べてから行動しようということになった。
リオンさんは子供たちを連れて、山小屋の外で朝食を作ってくれている。
小屋をすっと出ると、子供たちが火に近づかないように追い払いながら、朝食を作っているリオンさんがいた。
私は気配を消して、背後に立つと声をかける。
「リオンおね~さ~ん」
「ぎゃあっ!」
リオンさんは猫科の動物的な動きでぴゃっと飛び退く。
う~ん、この動き、不思議とまた見たくなっちゃうんだよね。
「あっ、あんたねえ! 気配を消して近づいてくるんじゃないよ!」
ただリオンさんを怒らさせたようだ。ほっぺをぎゅっと掴んで引っ張られる。
結構、痛い。
「ふぁふぁなあ、ふふーにひはふいははへへふほ?」
「嘘つくんじゃないよ! あそこまで完璧に気配を消しておいて、わざとじゃないってあるかい!」
いや、はい、わざとですけど。
かなりびっくりさせてしまったらしい。頬を離してもらったころには、赤く腫れてしまっていた。
早く治るように、しばらくムニムニしておく。
「まったく何者なんだい……。暗殺者に狙われたときだって、ここまで背後からの接近を許したことはないのに……」
それは変わった経歴を持ってらっしゃる。
「朝食作るの手伝いますよ」
私はリオンさんのもとにやってきた本題を告げると、さっと料理の内容をチェックした。
どうやらお鍋を作ってるみたいだ。
手が足りてないところがないか見ていくと、野菜をまだ切ってなかった。
私は包丁を取ると、ささっと根菜を乱切りしていく。
異世界に転生してからずっと料理修行してきただけあって、その手際はなかなかのものじゃないかと我ながら思えた。
「へ~、うまいもんだね」
さっきまで怒っていたリオンさんも関心してくれる。
いちいち反応が素直で、なんだか面白い。
でも、包丁を持っているときはふざけられないので、ひたすら真面目に仕事する。
「あんたのおかげで助かったよ。子供たちの面倒を見ながら料理を作るのは一苦労でね」
おかげでリオンさんの信頼ポイントもだいぶ稼げたようだ。
子供たちも私の行動に感化されたのか、野菜を洗ったり、器を運んだりしてくれていた。
みんなで朝食を食べると、私とリオンさん、レイモンドさんの三人でまた小屋を発った。
今度はどこに行くのだろう。
「爺さん、あれをこんな子供に見せて意味があるのかい?」
「ほほほ、昨日は警戒して飛びかかろうとしておった癖に、今日は子供扱いしおるのか。まあ、意味があるのかはワシもわからんが、悪いことは起こるまい」
どうやら案内してくれる場所には何かがあるらしい。
向かっている場所は、この大きな湖の端っこに位置する場所のようだった。
近づいていくと私は気づく。
古びた超巨大な岩がこの湖の端で蓋していることを。それは二つの山の谷を塞ぐように置かれていることを。
つまり、湖の周りを囲んでいた小高い丘だと思っていた地形は、山の峰(みね)だったのだ。
岩の向こうは直角の断崖絶壁になっていて、岩に開けられた穴から水が下の方に流れていっている。
この地形は完璧に、前世で見たことがあるダムと同じものだった。
「あれが見えるかね?」
レイモンドさんは壁の前で立ち止まり、水の底を指す。
私はこの湖が想像以上の水深と、水量を保持していることに気付いた。
そして私の心眼が、その深い水底に赤く禍々しく発光する二つの巨大な球体を捉える。
それは瞳だった。
私が幼い頃に接触したエンシェントゴーレム、あれの10倍を軽く超える巨体を持つ、サンショウウオのような形をしたゴーレムの。
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