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第三章
もう二度と
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篠文の事件から数日後、冬霧は病室でテレビを見ていると篠文がインタビューされている映像が流れた。
「由佳さん、よく無事に戻ってこれましたね!あの時の感想を一つ!」
「感想ですか、強いて言うならクラスの皆が助けに来てくれた事が嬉しかったですね」
それから篠文が怒濤の嵐の如く、質問をされていた。
篠文の質問が終わったのか今度は学校のクラスの方にインタビューをしに行ったらしい。
相変わらず男共は由佳の事になると我を忘れる癖がある。質問されて答えるのはいいが、ある事無い事デタラメに答えているのでどれを信じたらいいのか混乱するだろう。
「……確かに皆は助けに来てくれたけど、助け出したのはあなたなのにね」
「なんだいたのか、ああ言うしかなかったんだろ?男一人がアイドルのユカリンを助けたって聞いたらスキャンダルになりかねないからな」
別に俺が一人で助けに行った事は言っても言わなくてもどちらでも良かった。
でも言ったら言ったであの質問の嵐を食らうので由佳の判断に感謝している。
「傷の方はどうなの?瞬輔」
「結構治ってきたよ、それよりなんの用だ?ただ見舞いに来たわけじゃないんだろ?」
アイドルの由佳が仕事の時間を潰してまで来るほどだ、何かあるだろう。
「その通り、用は特訓してくれないかしら」
特訓ってなんで?今の時期に体育祭はまだ無いからあるとしたら………ランクの昇格試験か。
「それで、どうするんだ?特訓は朝か夜、どちらにするんだ?」
篠文は驚いた顔をして固まっていた。
まだ内容も言っていないのに特訓を了承したのだから驚くのも無理はない。
「で、どっちにするんだ?」
「じゃ、じゃあ夜に学校のトレーニングルームがいいかな。許可はもう貰ってるから」
「分かった学校のトレーニングルームだな」
いつもトレーニングとして朝と夜にこの病室を抜け出しているから大丈夫だろう。
篠文は要件を伝え終えたのか急いで病室を出ていった。
篠文が出ていってから少しの間が経った頃にまた一人客が来た。
「シュンちゃん、ちょっといい?」
なんだ、今度は絢香か。
「もしかして、特訓か?」
「そ、そうだけど……なんで分かったの?」
さっきまで由佳がその約束をしてきたからな、なんとなく分かる。
「それで、特訓するなら朝と夜どっちにする?」
「なら、夜にして!私が朝に弱い事知ってるでしょ?」
また夜か。お前らどんだけ夜に強いんだよ。
「場所は学校のトレーニングルームに集合だ。許可はもう取ってる」
「分かった、じゃあまた夜ね!」
さて、今度は誰だ?さっきから部屋の前にいるのは分かる。おそらく、
「姉貴、いや学園長立ち聞きとは趣味が悪いですよ」
「さすがだな瞬輔」
昔あんたに訓練を付き合ってもらったからな。姉貴の気配ならすぐ分かる。
「それでなんの用ですか?」
「瞬輔、お前まさか昔の事をまだ後悔しているのか?」
当たり前だ、俺があんな真似をしなければあいつは今でも生きていられたんだ。
「いい加減、真那の事は忘れろ。あの事件は事故だと何度言えば分かるんだ」
「忘れろ……だと、あんたは実の妹が死んだってのに忘れろって言うのか!真那は冬霧真那は、俺が殺したのも同然だ………」
その昔、まだ冬霧瞬輔が十一歳の頃に事件は起こった。
俺が十一の頃にいつも通り、双剣術の訓練をしていた。冬霧流は古流の剣術で双剣では無かった。
だがある日、技を磨き上げるために蔵にある伝授書を読んでいた。すると一つの文字に目が止まった。
「双剣術?なんだこれ」
俺は双剣術に興味を持ち訓練の前や後にいつも読んでいた。
冬霧流は基本双剣術など使わないのだが、二代目だけは双剣術をいや、二代目こそが冬霧流双剣術を編み出した男である。
俺は二代目が残してくれた伝授書を元に訓練に明け暮れた。
「お兄ちゃん、もう晩ご飯だよ!お母さんが呼んでるよ!」
「分かった、すぐに行くよ真那」
真那は俺の二歳下の妹で訓練に集中している俺に朝食や晩飯の時間になるといつも呼びに来てくれる。
「ねぇお兄ちゃん、双剣術上手くいきそう?」
「どうかな、三式までは習得出来たんだが四式から上手くいかないんだよな」
晩飯の時に真那は心配してくれているのか双剣術がものに出来るかを聞いてくれた。
もちろん、全部を習得しようとしてるが冬霧流双剣術は十四式もあるので時間がかかるだろう。
「ごちそうさま、じゃあ訓練に行ってくる」
「無茶はするなよ」
「分かってるよ親父」
この時の冬霧流の師範は俺の親父、冬霧賢輔だった。
いつも通りに晩飯の後に双剣術の訓練をしていたが、この訓練が妹の真那を死に追いやる事になるきっかけとなった。
また俺が訓練に集中していて時間を忘れていたので心配した真那が呼びに来てくれた。
「お兄ちゃん………あれ?どこに行ったんだろう」
俺の家は森の中にあったので、昼は森の中に籠り訓練をして夜になるとさすがに危険なので庭で訓練をしている。
だがこの時は母親に頼まれた湧き水を汲むついでに河原で訓練する事にした。
もちろん、懐中電灯を持って行ったので足元はよく見えた。この日は月も出ていて懐中電灯はいらないほど明るかった。
「冬霧流双剣術四式〝澪彁斬〟」
「あ、お兄ちゃんの声だ!お兄ちゃ、キャッ!」
この時、真那の声が聞こえた気がしたので声の聞こえた場所へ向かった。
「真那?大丈夫か!おい、真那!早く家に戻らないと!」
真那は河原にいた俺を見つけ、走って行こうとした瞬間足を滑らせ後頭部を強く打ち、血を多く流していた。
「母さん、真那が!」
「早く病院に!」
真那を病院に連れて行ったが、一足遅く真那は息を絶えた。
「あんな事があったのに、真那の事を忘れろだって?ふざけるな!俺は二度とあんな思いを誰にもして欲しくないんだ!」
「そう思ってるなら、なんでこんな重傷になったんだ?」
冬霧はこの時、自分の事などどうでも良かった。
俺は、もう二度とあんな思いを誰にもさせない。
「お前は自分の事がよく見えていないようだ。お前が死ねば悲しむ奴だっているだろう?」
「そんなのいるわけ無いだろ。俺が死んでも悲しむ奴なんていねぇよ」
冬霧の声はトーンが低くなり、悲しげな顔をしていた。
「まぁいい、でも姉としてこれだけは言わせてもらうぞ。もっと自分を大切にしろ」
そう言って、病室を出ていった。
「……意味が分からねぇよ、姉貴」
続く
「由佳さん、よく無事に戻ってこれましたね!あの時の感想を一つ!」
「感想ですか、強いて言うならクラスの皆が助けに来てくれた事が嬉しかったですね」
それから篠文が怒濤の嵐の如く、質問をされていた。
篠文の質問が終わったのか今度は学校のクラスの方にインタビューをしに行ったらしい。
相変わらず男共は由佳の事になると我を忘れる癖がある。質問されて答えるのはいいが、ある事無い事デタラメに答えているのでどれを信じたらいいのか混乱するだろう。
「……確かに皆は助けに来てくれたけど、助け出したのはあなたなのにね」
「なんだいたのか、ああ言うしかなかったんだろ?男一人がアイドルのユカリンを助けたって聞いたらスキャンダルになりかねないからな」
別に俺が一人で助けに行った事は言っても言わなくてもどちらでも良かった。
でも言ったら言ったであの質問の嵐を食らうので由佳の判断に感謝している。
「傷の方はどうなの?瞬輔」
「結構治ってきたよ、それよりなんの用だ?ただ見舞いに来たわけじゃないんだろ?」
アイドルの由佳が仕事の時間を潰してまで来るほどだ、何かあるだろう。
「その通り、用は特訓してくれないかしら」
特訓ってなんで?今の時期に体育祭はまだ無いからあるとしたら………ランクの昇格試験か。
「それで、どうするんだ?特訓は朝か夜、どちらにするんだ?」
篠文は驚いた顔をして固まっていた。
まだ内容も言っていないのに特訓を了承したのだから驚くのも無理はない。
「で、どっちにするんだ?」
「じゃ、じゃあ夜に学校のトレーニングルームがいいかな。許可はもう貰ってるから」
「分かった学校のトレーニングルームだな」
いつもトレーニングとして朝と夜にこの病室を抜け出しているから大丈夫だろう。
篠文は要件を伝え終えたのか急いで病室を出ていった。
篠文が出ていってから少しの間が経った頃にまた一人客が来た。
「シュンちゃん、ちょっといい?」
なんだ、今度は絢香か。
「もしかして、特訓か?」
「そ、そうだけど……なんで分かったの?」
さっきまで由佳がその約束をしてきたからな、なんとなく分かる。
「それで、特訓するなら朝と夜どっちにする?」
「なら、夜にして!私が朝に弱い事知ってるでしょ?」
また夜か。お前らどんだけ夜に強いんだよ。
「場所は学校のトレーニングルームに集合だ。許可はもう取ってる」
「分かった、じゃあまた夜ね!」
さて、今度は誰だ?さっきから部屋の前にいるのは分かる。おそらく、
「姉貴、いや学園長立ち聞きとは趣味が悪いですよ」
「さすがだな瞬輔」
昔あんたに訓練を付き合ってもらったからな。姉貴の気配ならすぐ分かる。
「それでなんの用ですか?」
「瞬輔、お前まさか昔の事をまだ後悔しているのか?」
当たり前だ、俺があんな真似をしなければあいつは今でも生きていられたんだ。
「いい加減、真那の事は忘れろ。あの事件は事故だと何度言えば分かるんだ」
「忘れろ……だと、あんたは実の妹が死んだってのに忘れろって言うのか!真那は冬霧真那は、俺が殺したのも同然だ………」
その昔、まだ冬霧瞬輔が十一歳の頃に事件は起こった。
俺が十一の頃にいつも通り、双剣術の訓練をしていた。冬霧流は古流の剣術で双剣では無かった。
だがある日、技を磨き上げるために蔵にある伝授書を読んでいた。すると一つの文字に目が止まった。
「双剣術?なんだこれ」
俺は双剣術に興味を持ち訓練の前や後にいつも読んでいた。
冬霧流は基本双剣術など使わないのだが、二代目だけは双剣術をいや、二代目こそが冬霧流双剣術を編み出した男である。
俺は二代目が残してくれた伝授書を元に訓練に明け暮れた。
「お兄ちゃん、もう晩ご飯だよ!お母さんが呼んでるよ!」
「分かった、すぐに行くよ真那」
真那は俺の二歳下の妹で訓練に集中している俺に朝食や晩飯の時間になるといつも呼びに来てくれる。
「ねぇお兄ちゃん、双剣術上手くいきそう?」
「どうかな、三式までは習得出来たんだが四式から上手くいかないんだよな」
晩飯の時に真那は心配してくれているのか双剣術がものに出来るかを聞いてくれた。
もちろん、全部を習得しようとしてるが冬霧流双剣術は十四式もあるので時間がかかるだろう。
「ごちそうさま、じゃあ訓練に行ってくる」
「無茶はするなよ」
「分かってるよ親父」
この時の冬霧流の師範は俺の親父、冬霧賢輔だった。
いつも通りに晩飯の後に双剣術の訓練をしていたが、この訓練が妹の真那を死に追いやる事になるきっかけとなった。
また俺が訓練に集中していて時間を忘れていたので心配した真那が呼びに来てくれた。
「お兄ちゃん………あれ?どこに行ったんだろう」
俺の家は森の中にあったので、昼は森の中に籠り訓練をして夜になるとさすがに危険なので庭で訓練をしている。
だがこの時は母親に頼まれた湧き水を汲むついでに河原で訓練する事にした。
もちろん、懐中電灯を持って行ったので足元はよく見えた。この日は月も出ていて懐中電灯はいらないほど明るかった。
「冬霧流双剣術四式〝澪彁斬〟」
「あ、お兄ちゃんの声だ!お兄ちゃ、キャッ!」
この時、真那の声が聞こえた気がしたので声の聞こえた場所へ向かった。
「真那?大丈夫か!おい、真那!早く家に戻らないと!」
真那は河原にいた俺を見つけ、走って行こうとした瞬間足を滑らせ後頭部を強く打ち、血を多く流していた。
「母さん、真那が!」
「早く病院に!」
真那を病院に連れて行ったが、一足遅く真那は息を絶えた。
「あんな事があったのに、真那の事を忘れろだって?ふざけるな!俺は二度とあんな思いを誰にもして欲しくないんだ!」
「そう思ってるなら、なんでこんな重傷になったんだ?」
冬霧はこの時、自分の事などどうでも良かった。
俺は、もう二度とあんな思いを誰にもさせない。
「お前は自分の事がよく見えていないようだ。お前が死ねば悲しむ奴だっているだろう?」
「そんなのいるわけ無いだろ。俺が死んでも悲しむ奴なんていねぇよ」
冬霧の声はトーンが低くなり、悲しげな顔をしていた。
「まぁいい、でも姉としてこれだけは言わせてもらうぞ。もっと自分を大切にしろ」
そう言って、病室を出ていった。
「……意味が分からねぇよ、姉貴」
続く
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