神速の凡才剣士

藤堂 鷹獅

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13話

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「…また、あの能力に頼っちゃったな…」
軽く唇を噛む
俺は、シェニアさんとの戦いを思い出していた
速さ、パワーの面では、劣っているとは思わない
たしかに、俺は木の剣を使ったが、使い方を誤らなければ折れることはないと俺は思い、使用したまでだ
それなのに、木の剣を折られ、それ上、具現化魔法で剣を作り無駄に魔力を消費した
そして、一番問題なのが、シェニアに「永遠の終わり」を使わせてしまい、「起源の世界」を使わざるを得ない状況を生み出してしまったことだ
そして、やはり、根本となる原因は

「まだまだ、技術が足りないってことか…」
はぁ、ため息をつき、ベットに飛び込む
このまま、夢の世界に…





「寝れねぇ!!!」
それもそのはず
まだ20時を過ぎたばかりだったのだ

(そういえば、ここの地下に訓練所あるって言ってたよな?)
学生のためだけの寮
訓練所があってもおかしくないだろう
露呈した技術不足
それを改善しなければ今後も強敵に出会ったら同じ過ちを繰り返すだろう
(俺に休んでる暇なんてないんだな…)
ベットから飛び上がると、訓練所に向かって歩き出した
(って言っても、場所よくわからん)
とりあえず、ロビーに行こうと思った

ロビーに行き「訓練所ってどこからいくんですか?」と、聞くと、「こんな時間から訓練?偉いねー!あそこの階段から行けますよ!」と、教えてもらうことができた
そして、その階段を少し降りていくと、地下訓練所に到着した
そこは、一本の通路があり、その左右に扉付いており、そこから訓練所に入ることができる
この時間だと、訓練をしている人も少なく、使われている場所もまばらだ
(真ん中くらいの訓練所使うか)
そう思い、歩きだす
(俺と違って、こんな時間まで訓練してる人、どんなひとなんだろうぁ…ん?)
入り口から少し歩いたところ
光の漏れている訓練所の中を見ると
汗を流しているヴルムの姿があった
「ヴルム…」
戦闘の動きを確認しているのか、剣を振るっては移動を繰り返していた
その一つ一つの動きに淀みがない
その動きに見入っていると
件の人と目があった
ヴルムはこちらに気づくと、笑顔で手招きした

それに誘われて俺は、訓練所に足を踏み入れる
「やぁ」

「ヴルム、こんな時間まで、お疲れ様だね。はい」
そう言って、俺は自分のために持ってきたスポーツドリンクを投げる
さんきゅ!と言い、ヴルムはそれを受け取る
汗だくのヴルムはタオルで汗を拭き、カチッとフタを開け、スポーツドリンクを飲む
「ふうーー…生き返るー!!」
水を得た魚のように、顔に生気が戻ってきている
「トウヤはどうしてこんな時間にここに?」

「あぁ、疲れてるはずなのに、なんか寝れなくて…」

「…なるほど…今日の公開試合のことか?」

「…うん」
図星を突かれてドキッとする
「俺は、いい試合だと思ったぞ」

「…?」
学生ルールを知らないのかとか言われると思った
「お互いに、相手の剣に、真っ向からぶつかっていく。俺はそういう戦い方、シンプルでいいと思うぞ」
そう、ヴルムはこういうやつだ
純白の聖王とか言われているから、クールなイメージが付きまとうが、根っからの、熱血、スポ根、脳筋だ

「しかし」
そこで、ヴルムの口調が変わる
「お互いに、本気で戦っていればの、話だがな!」
たしかに、お互い本気で打ち合っていれば、それほど、素晴らしいものはないだろう
「…何言ってるの?」

「ここまで言ってもしらを切り通すつもりか」

「だから、何を…」
その時、すっとヴルムが立ち上がる
「…その舐め腐った根性…叩き直してやる」
すうっと息を吸うと




「剣を持てェェェェェ!」
その大声に俺は、とっさに武器を顕現し、立ち上がる
「ここまで言っても、木の剣を使うとは」

「しょうがないだろ」

「…100歩譲ったとして、それはいいだろう」
木の剣で戦うことは許してもらえたようだ
「しかし、木の剣で戦うことは許したが、片手剣で戦うことは許した覚えはない」

「え…ぁ…」
そうだ
俺は過去にヴルムと戦っており、そして、本来の戦闘スタイルで戦っていたんだ
「…なるほどな」

「やっと、俺の言いたいことがわかったか」

「あぁ…」
そして、俺は、空いているもう片方の手にも剣を顕現する
そう、俺は「片手剣使い」じゃない

生粋の「二刀流」なのだ

「この学校に来ているのは、本気で強くなりたい人だけだもんな」

「あぁ」

「…手を抜くってことは、相手を侮辱するってことだもんな」

「その通りだ」
ごめんなさいシェニアさん
これが俺の本当の姿なんです
今度会ったら、今回のことを謝った上でこう言おう

「もう一回戦ってくれませんか?」



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