神速の凡才剣士

藤堂 鷹獅

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14話

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「ふぁぁぁぁぁ…んん」
よく寝たぁ
昨日はあの後、ヴルムと1時間程、打ち合いをして解散となった

カーテンを開けると、そこには満天の青空が広がっていた
(今日もいい天気だなー)
俺は、軽めにご飯を食べ、制服に着替え、学校へと向かって行った

「ねぇ…あの子じゃ無い?」

「あの子が噂の、シェニアさんと互角に戦った新入生?」

「すっごい可愛い見た目してるね。そんなに強そうには見えないけど」
寮から出るとすぐに異変は起こった
(昨日も感じたけど、今日はより一層、奇異の目線がおおいなぁ…)
昨日は、この可愛らしい外見とメリアとともに登校したからだったのだが、今日は言うまでも無い
(昨日のシェニアさんとの戦いの影響か…)
学園最強のシェニアさんに勝ったわけでもない、むしろ負けた
それなのに…
「「あっ!!!」」
そこで俺は、視線に耐えきれずその場から逃げ出したのだった


くそー…途中で走ったせいで、予定よりも早く着いちゃったなぁ
暇だなぁ…
誰か早く来ないかなー…
あ、誰か来たらまた奇異の目にさらされる…
自分の未来を勝手に考えて、ため息をつく
その時、後ろの扉が開く音がした
「あ…」

「っっっっ!?」
俺は、首が取れるくらいの速さで後ろを振り返る
そこにいたのは、
「メリア…」
ここに来て一番仲良くなり、たくさんお世話になった、元ルームメイトのだった
メリアは、早足で自分の机に荷物を置くと、俺の隣の席に座った
「その…メリア…ごめん。勝てなかった…」
そう言って俺は頭を下げる

「トウヤさん…」
こつんと、頭に軽い衝撃が走る
俺は、それに頭を上げる
「謝らないでください」

「でも…」

「でも、じゃないです!私は、最初、トウヤさんがお姉様と戦うと決めた時、何無謀な事をしようとしてるんだろう。絶対勝てないのに…と思いました。でも、あなたは、私の期待を裏切ってくれました」

「っ…だから、ごめんって…」

「いえいえ、だから悪い意味でじゃないですよ!いい意味でです」

「それはどういう…」

「私は、お姉さまの強さを身を以て知っています。私自身が戦ったのもそうですが、今までお姉様に戦いを挑んできた人達は、いざお姉様と戦うとなると足がすくんで自分の最高のパフォーマンスができなくなってしまうんです…」
あぁ、シェニアさんの威圧感ってゆうか、雰囲気はすごかったな
「でも、トウヤさんは違った。それに、臆する事なく、真っ向から、お姉様とぶつかった。その姿に、私は、自分自身を恥じました」

「え?」

「私は、しょうがないって思ってたんです。お姉様が強いから逃げても仕方ないって。」

「それは…」
実際、あの人は、強すぎるからしょうがないと思うけど、言わないでおこう
「私は決めました」

「ん?」





「お姉様に…そして、トウヤさん。あなた達の横に並べる…いや、超えてみせます。だから、覚悟しておいてください」
今まで纏っていたふわふわした雰囲気はもう存在しない
彼女の瞳、顔つき、雰囲気は凛としたものになっていた
「やっぱり、姉妹なんだなぁ」

「ん?なんですか?」

「いや、なんでもねー」
雰囲気が一瞬だが、シェニアさんと重なった

「なら、すぐにでも、特訓しないとねぇ」

「きゃぁ!」

「ぬわ!」
刹那、メリアの髪がくしゃくしゃに掻き乱される
「ちょ、や、やめて、サーシャ!」
犯人は、いつのまにかこの場に来ていたサーシャだった
「あんたの能力は使いようによっては、絶対負けないんだから!」

「そうなの??」

「そっか!トウヤは見た事ないのか!」

「どんな能力なの?」

「んー…それは、実際、戦ってからのお楽しみって事で」

「なんだそれ」
なんで濁すんだ!
めっちゃ気になるだろ!
その時
「お、いたぞ!」

「まじか!」

「トウヤーー!」
俺は、クラスメイトに羽交い締めされていた
「お前すごかったんだな!」

「見直したぞ」
あぁ、こいつらも見に来てくれてたんだ
いつの間にかクラスメイトがほとんど集まっていた
その合間をくぐり抜けて、ヴルムが近寄ってくる
「いい試合だったぞ、トウヤ」

「おう。ありがとう」
俺とヴルムはグーで拳を合わせる
パチパチ
小さな拍手が起こる
それはメリアだった
その拍手は伝染して、とても大きなものになった
最後には、総代 ガイエルをはじめとしたクラスメイト全員が俺の戦いに拍手を送ってくれた


「みんな!応援!あ…ありがどゔーー」
最後までいいきろうと思ったけど、涙が出て来てしまった
そして、俺は、ホームルームのために、ブルエンが来るまでの間、賞賛の言葉をかけられ続けたのだった
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