紅蓮のフォルテ

花国鶴

文字の大きさ
1 / 6
プロローグ

全ての始まり ライブ前

しおりを挟む
 夜の街は、落ち着く。
 特に、冬の、雪の積もっている日がいい。
 それが、鳴宮響の正論だった。
 
 鳴宮響は、中学2年生。
 九州の田舎暮らしの彼女は去年の春、関東の中学校に入学した。家族は故郷にいるので、1人だけの寮暮らしである。
 遠くの田舎から知らない都会へ乗り込んだ響にとって、街の雰囲気にはまだ慣れないでいた。
 しかし、夜の街は、響の心を穏やかにした。街灯に照らされる横浜の街並みは、いつも学校生活で苦労する響を慰めるのだ。
 今日は一日雪が降っていたため、いつもより気分良く街を歩いている。横浜に雪が降ったことで、いつもよりも賑やかに感じられた。
 そんな横浜の夜の街を眺めつつ、響はとあるライブハウスへと向かった。背中には、ギターを提げている。
「こんばんは…」
「ヤッホー!今日もよろしくね」
 ライブハウスの店長・大江華那子が、響を笑顔で出迎えた。
 ここはライブハウス『ハーモニー』。20代の若き店長、大江が取り締まる、小さなライブハウスだ。
「今日セットはどうなっていますか?雪が積もっているので、もしかしたらお客さん少ないかもしれない…」
 ギターを下ろし、響は問う。大江は苦笑した。
「そうだねえ…」
 大江はパシッと手を叩いた。そしてニカっと笑う。
「心配ご無用!今日のチケットは完売、キャンセルの連絡もないよ」
「今日のメイングループは横浜イチのバンドだから、皆さん無理にでも行きたいんじゃないかな」
 隣の部屋から、金井華が顔を覗かせた。彼女は、『ハーモニー』唯一の正社員である。
「今日は響ちゃんにも歌ってもらうけど、準備はいい?」
「はいっ!」
 響はしっかりと返事をした。
 響は、学業の傍らで、『ハーモニー』のアルバイトをしている。親の仕送りを軽くしようと思い始めたが、響自身、結構気に入っている。たまにステージで歌えるのは、音楽好きでバイトに従実な響の特権だ。
 今は、午後7時30分。あと30分後にライブが始まる。
「さあ、2人とも、今日も頑張ろう!」
 大江の掛け声と同時に、響と金井はそれぞれの持ち場についた。


 これが、全ての始まり。
 冬の横浜、小さなライブハウスで、全ての運命は回り出した。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

処理中です...