悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷

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第一章

1 レオス・ヴィダール

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 目が覚めると、そこは知らない天井だった。

 煌びやかな赤色の布で天幕が張られたベットは俺の記憶の中にはない。
 ここはどこだ……?
 俺は普通に帰宅して寝ていたはず、拉致? 俺を攫って何の意味がある? 自慢じゃないが只の社畜で資産も何もないぞ。

「とりあえず起きるか」

 ここでいくら考えても考えが纏まらないので起き上がろうとする。
 それにしてもふかふかなベットだな、このまま二度寝したいくらいだ。

 俺は上体を起こそうとする。

 あれ?持ちあがらない、体がやけに重いな。
 しょうがないので横に転がってベットに腰かけるようにして上体を起こす。

 ……でかいな、ここの家具のサイズが一般的なものと比べても大きい。

「ここがどこだか分からないし、散策するか……ってうわ! なんだ俺の腕太い、短い! 足もだ」

 俺は自分の体の異変に気付いた。
 ガリガリだったはずの俺の体には脂肪がたっぷりと乗っていて、その上、体が縮んでいるように思える。

「これは、幼児退行の薬でも打たれたか?」

 いやいやそんなフィクションの話持ち出しても、あり得ない。
 でも実際に俺の体は縮んでいる。
 これを説明する何かは存在しない。
 俺が自分の体に驚いていると、扉が開きメイドのような衣装を来た女性が入ってきた。

「――レオス様! 目が覚めたのですね。少々お待ちください」

 レオス?誰のことだ?
 俺以外に誰かいるのかキョロキョロしているとメイドさんが俺の足の下で四つん這いになった。

「な、何をしてるんですか?」

「足置きでございます」

 いや、どこの奴隷だよ。
 なんかとんでもないところに来ちゃったな。

「結構です、必要ありません」

 メイドさんは驚いた顔をしてこちらを見て、固まってしまった。
 俺は彼女からズレたところに着地してベットから降りる。
 おおう、バランスもとりずらいなこの体。
 うーん、目線が低い、しかもこの動きずらさ相当な肥満体だな。
 俺は周囲を見渡して姿見を探す。
 ちょうどいいものがあったのでそこで自分の姿を確認する。

 そこには青い髪をした太った少年の姿があった

「誰だこれ?」

 全く見覚えがない。
 俺の幼少期の姿とも似ても似つかない。そもそも記憶も曖昧だが。
 これは人に聞くのが早い。
 俺は唯一の人間であるメイドさんに声を掛ける。
 未だに四つん這いのままだ。

「あの、もうその姿勢じゃなくていいですよ。あとちょっと記憶が混乱していてここがどこで俺が誰だか教えてくれませんか?」

「……はっ! 申し訳ありません、呆けておりました。ここはシャドウイ王国のウェンド領のヴィダール家の屋敷の中でございます。貴方はヴィダール家の嫡男レオス・ヴィダール様です」

 俺は首を傾げる。
 どれも聞いたことのない地名と名前だ。それにどうやら貴族様みたいだ。
 そして俺はレオス・ヴィダールという名前らしい。
 どこかで聞いたような……。

 俺が何も言わないので気まずくなったのかメイドさんから話掛けられる。

「レオス様が屋敷の階段から落ちて、意識を失ってから一日、旦那様はそれはもう大層心配しておりまして、今からご一緒に顔を合わせに向かってもよろしいでしょうか?」

 俺の親か、どんな人か分からないけどとにかく情報が欲しい。
 会うというのなら会おうか。
 あとこのメイドさんの名前も聞いておこう。

「わかりました。一緒に行きます。あと貴方の名前を教えてもらってもいいですか?」

「私はリンダと申します。それでは旦那様のところへ向かいましょうか」

 そう言って俺の手を握るリンダの手は震えていた。
 何かに怯えるかのように。

 俺は部屋を出て美術品の並んだ廊下を進んでいく。
 なんというか、悪趣味だな。
 俺の趣味でもないというのもあるが、無駄にゴテゴテしてるしなにより数が多い。
 誰のためにこんなもの買ってるんだ。

 歩いていると掃除をしているメイド達とすれ違う。
 俺が横を通る度に作業を中断して深々とお辞儀をしてくる。
 その表情は暗い。
 ……俺ってなんか怖がられてる?

「あの、レオス様。記憶が曖昧なこと以外になにかおかしいところはありませんか?」

 リンダが俺に聞いてくる。
 おかしいところか、体が肥満体なことくらい?
 でもそれくらいで他におかしいところなんてないかな。

「この体が動かしずらいくらいですかね、何かおかしいところがありましたか?」

「いえ、ならいいのです」

 そう答えるリンダは俺のことを猜疑心の籠った目で見ている。
 なんだろう、この体の持ち主は一体どんなやつだったんだ?

「こちらでございます」

 廊下をずっと進んでいくと、旦那様、多分俺の父親のいる部屋へとついた。
 それだけなのに結構息が上がっている。
 どんだけ貧弱なんだ。
 リンダが扉をノックする。

「リンダでございます。レオス様を連れてまいりました」

「入れ」

 偉そうな声が入室を促してくる。
 まあ貴族だから実際偉いのだろうけど、なんか癪に触るな。

 そのままリンダが扉を開けて部屋の中へと入る。
 すると、いきなり大きな大人の男に俺は抱え上げられた。

「おおレオス! 無事でなによりだ。いつ目を覚ますか気が気ではなかったぞ」

 俺と同じ青色の髪をした男、恐らく父親であろう人が俺に頬ずりをしてくる。
 鬱陶しいな、まあそれだけ心配だったということだろう。

 しかしレオス、レオス、レオス……レオス・ヴィダール……
 あとちょっとで思い出しそうな、喉に引っかかった骨が取れそうな感じがする。

「しかしリンダよ、貴様がついていながらこの様な失態、いかなる罰を与えようか」

「申し訳ありません、どんな罰でもお受けいたします」

 え、リンダは悪くないよ。
 多分こいつが勝手に落ちただけだよ。
 というか階段から落ちるやつを助けるって難易度高すぎるだろ。

「あの父さん? 俺は別に罰とか望んでいないので、そういうのはやめてもらってもいいですか?」

 俺の発言に、驚いた顔をする二人。
 え? そんなに変な事言った?

「まあレオスがそういうのなら、今回のことは不問とする。しかし次はないぞ」

「はい、ご寛大な対応、誠に感謝いたします」

 場に変な空気が流れるものの、一応の終着点には着いた。
 あとそろそろ降ろしてもらっていいですか?
 もう休みたい。

「父さん、まだ体がつらいので、部屋で休んでもいいですか?」

「おお、気が利かなくて済まん。リンダよしっかり部屋まで送り届けるのだ」

「畏まりました」

 綺麗な所作で対応するリンダさん。
 俺は父親に抱えられ、そのままリンダさんに抱っこされる形で渡される。
 さすがにちょっと恥ずかしかったけど、軽々と俺を抱えるリンダと、有無を言わせない父親の視線に対して何か言うのをやめた。

「それでは失礼いたします」

 そのまま部屋を出て、自室へと廊下を戻っていく。
 俺はその間に疑問に思っていたことを口にする。

「あの、リンダさん、階段から落ちる前の俺ってどんな感じでしたか?」

 リンダは少し逡巡《しゅんじゅん》するような表情になり、口籠る。
 そして意を決して言葉を発する。

「その、大変活発といいますか、いたずらが好きで、よくメイド達と遊んでおられました。あとおやつが大好きで、よくお食べになっていたかと」

 ……あ~、随分わがまま放題やってたって感じか。
 この肥満体も暴飲暴食が原因かな。

 そんな話をしているうちに自分の部屋に着いた。

「それでは、何かありましたらこちらのベルでお呼びください」

「ありがとうございます、リンダさん」

 俺はそう言って部屋のドアを閉める。
 しかしわがままで肥満体、レオス、あと、ほんとあとちょっとなんだよな。
 俺はもう一度自分の姿を確認しようと鏡を見る。

 青色の髪に緑色の目、そして左目の下にある泣き黒子。

「あ! 思い出した! こいつはレオス・ヴィダール、ロイヤルヒーローに出てくる序盤のクソ野郎だ!」

 幼い顔つきだが間違いない。
 この身体的特徴、なにより歪んだ性格。

 俺は自分がアニメのやられ役貴族に転生してしまったことを知ったのだった。
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