パチンカスだった男、ダンジョンの出現によりダンジョン依存症になる。

蜂谷

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第六話 良いことは続かない

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 パチンコで大敗した次の日、やはり幸運のネックレスをつけれないと俺には運がないのだと悟った。ダンジョンで装備できるアイテムは、ダンジョンでしか装備出来ず、1層の休憩所にある遊具場は装備禁止になっている。これは幸運のネックレス―—レア度関係なし――のような運をあげるようなアイテムを使って馬鹿勝ちするような輩を出さないためらしい。

 不思議なことにダンジョンに入るとアイテムボックスが発現するようになり、中にダンジョン関係のものや水や食材を詰め込めるようになる。俺がダンジョンに身軽で向かえるのはそのおかげだ。でもこれって窃盗とか強盗とかし放題になるんじゃ……まぁ日本の警察は優秀だっていうし大丈夫だろ。

 今日からしばらくはオークを狩ろうと思ったが、昨日あれだけ探して運悪く、いやこの場合運良くか、転移したことによってオークを狩ることが出来たが、オークの拠点の入口前で待機していたパーティーのように根気よく探さないと出てこなさそうだ。

 そんな面倒くさいことをしたくなかったので、さらに下に潜ることにした。10層からは特に情報がなかったのでとりあえず10層で楽しくモンスター狩りを行うことにした。休憩所をよく見るとワープゲートと同じような石碑がある。そこにわざわざ注意書きがある。

”到達した階層を指定すると、その階層の入口へと転移することが出来ます。円滑な移動にお使いください”

 こんな便利なものあったのかよ!アイテムボックスにしまっていた冊子を見ると、小さい文字で実用編と書かれた項目に書かれていた。あぁあそこに集まっていたのはギャンブル中毒者ばかりだから深い階層にいくことが想定されていないんだな。だからちまちま1層や2層でモンスターを狩って貢献してくださいねってことか。
 そもそも俺の視野が狭くなっていなければ不自然な石碑くらい気づいたのだ文句は言えねぇ。

 とりあえず前回立ち寄った6層に行こうと石碑に触れて転移する。この階層は再び石壁で出来た迷路のような迷宮へと変わっていた。5層とかが10層が特別でそれ以外はこんな感じなのかな、そう思いながら探索を開始した。

 一直線に10層を目指してもいいが5層でもいいドロップが出たのだ、寄り道をしてレアドロップを探すのもいいだろうと6層を見回ることにした。
 モンスターはアンデット系が出てきた。
 スケルトンや物理攻撃が効かないレイス、ゾンビのような気持ち悪いアンデットが出てきたので早々に去ることにした。レイスは電撃魔法で処理し、アンデットも近寄られる前に焼け焦がした。しかしそこでのドロップに驚愕した。SSRレイスの魂がいくつもドロップしたのだ。SSRがこんな簡単に…?何かの間違いかと思いまたいくつかのレイスを倒すが大半がSRだったがちらほらとSSRが落ちた。

 ここ、穴場じゃね。ここでめっちゃ稼げばカジノでめっちゃ遊べるじゃん。そしてこの日から6層の周回が日課となった。俺は毎日レイスを倒しては換金してカジノにいく、完全にルーチンワークと化して半年近くが経過した。





 この半年でめっちゃ稼いでカジノでお金を溶かす俺は有名人、とはならなかった。実際にはどうかはわからないが、俺に絡んでくるような奴はいない。俺の個人情報はダンジョンによって秘匿されている。というか全冒険者が外部に情報が漏れないように徹底的に処理されているようだ。換金の際には最新鋭の防音、認識阻害が行われ、外での換金でも個室になっているのでいくら稼いだかはわからない。カジノに関してもそうだ、中に入ると外見が毎回変化し、誰がどれだけ遊んでいるかも分からない。仕草や雰囲気であ、こいつ常連だな、前も見たなと分かるやつもいるが、基本的には判別がつかない。

 ガチャは別なので、おいおいあいつまたガチャ回してるよと思われている可能性があるが、SSR装備セットをガチャで出して以降は10連ガチャをいくら回しても最低保証のSRしかでなくなっていた。それでも結構な頻度で10連ガチャを回す俺に目をつける人もいたと思うが、ガチャ周りでワイワイいうだけで特に目立ったことに遭遇することはなかった。


 実際にダンジョンで稼ぐとなると、現実での生活で身バレすることがほとんどだ。
 いい部屋に住んで、ハイブランドの服を身にまとい、いい車で生活をする。そうなれば、何で稼いでいるかと噂になるし、ダンジョンに通っていれば冒険者で生計を立ててるんだなとばれてしまう。

 そうなることを恐れて郊外に住んだりセキュリティの高い住居に住むようになる。大体の冒険者は身バレしないようにそれ相応の生活を続けているように偽装するのだ。

 俺の場合、稼いだお金のほとんどはタラーへと変換し、暇があればカジノやパチンコに時間を費やした。実際の生活は借金を返しただけでほとんど変わらず、少しだけ小綺麗にするようになったくらいだ。



 そんな夢のような生活は突如終わりを迎えた。

 レイスが全然出現しなくなったのだ。


「これってもしかして狩りすぎて絶滅した…?それとも俺が乱獲するから神によって調整でも入ったのか」

 真偽のほどは定かではないが、現実にあるのはもうレイスを使ったカジノでジャブジャブ生活は出来ないということだ。
 俺は新たな資金源を探しに下層へと潜ることを決めた。

 7層、8層ではいいモンスターが出てこず、いい収入源になりそうになかった。そして戦闘中に思わぬ事態に見舞われた。UR幸運のネックレスの紐が切れたのだ。ネックレスは俺の鎧と体の間を抜けて落ちていき、そのまま砕けて散った。

「あぁああああああああああああ」

 気づいたときにはもう遅く、UR幸運のネックレスはもう俺のもとにない。戦っていたモンスターを無視して足元の宝石をかき寄せる。

「折角のURアイテムがぁ!!壊れた?アイテム!!あれ画面が出ない、…消滅したってコト!?」

 うわあああああああああああああああ
 初めてのURでお気に入りだったのにぃ!!!
 初めての高レアアイテム喪失に俺は嘆き苦しんだ。ガシガシと殴ってくるモンスターを無視して泣きじゃくった。そしてこのアイテムの消失によって新たな危険性が頭をよぎる。
 未だに攻撃してくる敵を素早く倒す。そして装備しているSSR雷のセット装備を確認する。これももしかして攻撃を受けすぎたり、使いすぎたら壊れるんじゃないか……?よく考えればわかることだった。錆びた盾はスライムの液体攻撃に溶けてしまった。SSR装備だから耐久度も高いとは思うが、もう半年も使っている。特に剣の使用は躊躇なく使っていたし、多少の攻撃は鎧が防いでくれた。兜や具足はそんなに消耗していないと思うが最悪の展開が頭をよぎる。

 武器の喪失による快適なギャンブル生活、その生活に暗雲が立ち込めていた。
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