鬼の用心棒 〜過ぎたる力は誰がために〜

三須田 急

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三人とも息を殺して近づいていたが、
ソレは既に気配を察していたらしい。

白い球体がギョロリと動き、
こちらの様子を伺っていた。
それだけでも心臓を鷲掴みにされたような
気持ちだったが、
ソレで終わるはずもなかった。

「お前ら!何しにきた‼︎」

進んでいく途中で聞こえきたうなり声と
振動を何十倍にも増幅した声が
襲いかかってきた。
声の調子も平穏を打ち砕かれ、
怒りに震えているようであった。

「お主の助けを請うため、
ここから山を一つへだてた村から
やってきた者だ‼︎」

平助は既に気を失ってしまっていたが、
ヤツの迫力に気圧けおされるまいと、
義助が大声で応えた。

「何ぃ?助けだとぉ⁈」

そう聞こえた瞬間、
眼球をこちらに動かしていたソレの
輪郭が微かに闇の中から浮かび上がる。。
体に深々とみぞが刻まれ、額には大きなつのがそびえているのが闇の中でもわかった。

「おい、ガキ‼︎
この俺の助けが欲しいと言ったか⁈」
先ほどの語気を残しつつ、
やや落ち着いた口調で尋ねる。

「あぁ!そう言った!」
「ほぉ…なるほどなぁ……」
怒りを抑えた口振りでゆっくりと身じろぎした
次の瞬間

「そんな事がよく言えたなぁ‼︎‼︎あぁ‼︎‼︎」
恐ろしく大きな怒鳴り声とともに
鋭く尖った牙が並んだ口を開き、
青筋を立てた顔面が迫ってきた。

普通なら喰い殺されても、
不思議では無いがそうならないのは
この大鬼の手足が岩石に埋め込まれる形で
封印され、動きが封じられているからである。

「我々を助けるというなら
封印を解いてやる!」
義助が負けじと言い返す。

「ふざけやがって!
こうしたのはテメェらだろうが‼︎」
大きく身を乗り出し、
怒りの感情を露わにする。

「助けくれ!ってんなら
先に封印を解くのが
筋ってもんだろうが‼︎‼︎」
怒りに満ちたその表情は
封印によって手足の自由が効かなかったとしても、
たまらなく恐ろしい。

義助はそれでも何か言い返すつもりだったが、
七兵衛が肩に手を置き制した。

「なぁ!大菊童子さんよぉ~、
それを先に外せばオイらを
助けてくれるんだど?」
「……あぁ!」
「わかったどぉ!
ちょっと待ってるだどぉ~!」
そう言うと義助に微笑ほほえみかけて、
鬼の方へと歩いていった。

それを見せられた以上、
義助が出来ることは微笑みを返し、
封印を解いてやる事だけだった。

「そこの穴にその太刀を突っ込んで、右に捻れ‼︎
後は待つだけでいい」
七兵衛が義助の背中から身の丈の一回り
ほど大きな大太刀を下ろす。
そこから2人がかりで持ち上げ、
ヤツが指差した穴に突き刺し右回しに捻る。

ゴゴゴゴゴ…

何かが動作する音が空間全体を震わせる。
それと同時に大鬼の自由を奪っていた
岩で作られた封印に亀裂が走った。

グルゥゥゥゥウォォォォ‼︎‼︎
大菊童子が大きく吠え、
岩石が砕け散る。

「どぉだど!これで自由だどぉ!」
「あぁ、どうやらその通りのようだ…」
「じゃあ、オイ達を助けてくれるだど?」
「いいだろう…」
ニタリと口角を上げ、牙を輝かせ言葉を繋いだ。

「ただし!…俺は腹が減っている‼︎」
膝にてのひらを置いて踏ん反り返りながら
「腹がふくれにゃあ、助けようもねぇなぁ…」
「…そりゃあ…つまり…」
「そう言う事だぁっ‼︎‼︎‼︎」
七兵衛が何かを言おうとしたその時、
大菊童子がさえぎるように吠えた。

一閃、腕を大きく振り義助に飛び掛かった!
刹那、七兵衛の頭に不吉な未来がよぎった。
「このままだと、義助は喰い殺される‼︎」

しかし、鋭い牙は義助の目と鼻の先でピタリと止まった。

「……なぜ、避けなかった?」
先ほどまで頭を喰い千切らんとしていた鬼は
凄まじい形相のままで尋ねる。
義助は三本の指を立てた右手を突き出した。

「1つ、取って喰うには動きが大きすぎた。」
薬指を折る。
「2つ、わざわざ喰う事を告げた上に
口調がわざとらしかった。」中指を折る。
「3つ、俺が喰われて皆が助かるなら本望だからだ。」残された人差し指が顔を指す。

「…ほぉ……」うっすらと笑みを浮かべた。
「お前だけは面白くないと思っていたが…
違ったらしい…」

大菊童子はそう言うとゆっくりと立ち上がり、
封じられていた方に戻った。
「ヌン!」
自慢の大太刀おおたちを抜き取った後、
三人の前に進んで剣先を向ける。

そして、大きくこうちかった。
「…お前達の力になってやろうぞ‼︎」

頼もしいその言葉に二人の若者の
口元がほころんだ。
一方で平助は気を失って一人地面に転がっていた。

丁度同じ頃、村の周辺に不穏な影が近づいていた。
「そろそろ、刈り入れかねぇ…」
「間違いねぇ…あんなに垂れてんだからよ…」
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