鬼の用心棒 〜過ぎたる力は誰がために〜

三須田 急

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若者達は早足で来た道を戻る。
鬼を味方につけられたとはいえ、
未だ村に戻れていない以上、
目的が達したとは言えない。

四つの風は山野を駆け抜け、
帰るべき場所をひたすら目指した。
その甲斐あって日をまたぎはしたものの、
行きより早く山を越え、
昼前には村の近くに辿たどり着くことができた。

「そろそろ村だどぉ…」
七兵衛がやや息を切らせながらつぶいた。
声色は疲れよりも喜びがあふれていた。

「そ…そうだけど……
なんかこの道…来た時と違わないか?」
平助がそう口にしたので全員の足が止まった。

「道はあってるはずだ…」
「い…いや、道を間違えたって事でなくて…
こんな広かったかねぇと思ってよ…」

義助達が目線を落とし、道の状態を確かめる。
するとどうだろうか、
まだ新しい人馬の足跡がいくつも見つかった。

あまりにおびただしい痕跡は
恐ろしい事態を想起させた。
「野盗が村に入ったのかもしれん…」

「ほぉ…ソイツは
食いっぱぐれなさそうで助かる…」
鬼が笑みをこぼしながら呟く。
「早まるな、まだ村からは大分離れている。」
疑わしい痕跡を見つめながら義助がいさめた。

「もし、本当にそうだとしたら
様子を知るためにも斥候せっこうが必要だ。」
「それならオイに任せるだど」
「…頼んだ」

一刻ほど経った後、
斥候に出ていた七兵衛が
血相を変えて帰ってきた。
「大変だど!村が野盗どもに囲まれてるど‼︎」

「山の麓までか!」
「い…いや、斜面に沿って広がってるだけで
麓には見えなかったど」
義助は少し安心した。

「村の皆はどうしていた⁈」
槍襖やりぶすまを作って防いでいたども、
長く保ちそうにないど!」
「奴らの頭目が何処にいたかわかるか?」
「山道の入り口に敷かれた
分厚い陣の中だど‼︎」
「…そうか……」

ここから村に突っ込めば
丁度真後ろに出られそうだ…

「七兵衛!」
「おう!」
「また頼まれてくれないか…」
「もちろんだど!」
義助はこれまで自分が取ったことのない
大胆な手段に打って出ようとしていた…

一方、野盗の頭目は略奪が思いのほか
手こずっている事に苛立いらだちを募らせていた。

「まったく…斥候が見つかって
このざまとは侍崩れが泣くぞ!」
「申し訳ねぇこって…」
「……まぁ、ええ…丁度ええ暇つぶしじゃ‼︎」
そう吐き捨てるように言った直後、
伝令が駆け寄ってきた。

「申し上げます!
両翼の防陣が潰走かいそうを始めております!」
その知らせを聞くなり
頭目の強張こわばっていた口元が緩んだ。

「ほぉ、さいかぁ!
ではそこから叩き潰してやれぇ‼︎」
「はっ‼︎」

村の左右の防御が崩れたという知らせは
頭目にとって絶好の機会であった。
なぜならば、村の左右から突撃すれば
扇状地にあるこの村は三角形の頂点を
抑えられた事になる。

つまり、村人を三角形の内側に
完全に封じ込めることができるのだ。

「フフフ……大人しく米を
寄越よこせばいいものを…」
決着が目前に見え、思わず笑みが漏れる。

もっとも、この敗走は
破滅へと導く罠であったのだが…
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