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十
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「グウゥゥ………ヌゥ……」
鋭い痛みに呻きをあげながら、
掌を地に付けゆっくりと上体を起こす。
だが、それを喜蔵が
みすみす見逃すわけがなかった。
ヒュ…バッ………
「グゥアアァァァ‼︎」
背中の傷は大きく交差し、
とうとうあの大菊童子が悲鳴を上げた。
それでもなお、体は確かに立ち上がろうと
懸命に力を振り絞っている。
「…………」
息の根を止めるため、
ゆっくりと大鬼へと近づく喜蔵。
静かな殺意を滲ませる目は
頸から視線を外そうとせず、
運命は既に決したかに見えた。
……タタタタタッタッ‼︎
‼︎ヒュッ‼︎
ガチーン‼︎…ギギギ……
背後から迫り来る何かを
身を翻して刀で受けた。
その直後、やっとの思いで上体を
地から引き剥がした
大菊童子が振り返りながら叫んだ。
「?……義助…義助かっ⁈」
「菊‼︎さっさと村に戻るぞっ‼︎‼︎」
ギリギリと音を立て、
額に近づく刃に争いながら叫ぶ。
「水路…水路はどうすんだ‼︎」
痛みを抑えながら尋ねる。
「この期に及んで…
まだわからんかっ‼︎たわけ‼︎‼︎」
義助が一喝すると流石の大菊童子も驚いた。
「……水路の…一つで……ウジウジと…」
ギリギリと刀が押し込まれていく
「それでも貴様っ……地獄の…」
喜蔵がグッと押し込む。
「悪鬼かっ‼︎‼︎‼︎」
弾き飛ばされ、大きく後ろへ転倒する。
喜蔵から離そうと大菊童子が
駆け出そうとすると
「待て‼︎」
鋭い視線と共に義助が叫ぶ。
一瞬動きを止めたと同時に
槍の群れが突き立てられ、
行く手を阻まれた。
「…手向かう形となって
申し訳ございません……」
儀助が刀を傍らに置き、
手と膝を地につけた。
「米を納めておれば
このような事にならなかったのは
重々承知しております…」
首を垂れ、俯き気味で言葉を繋ぐ。
「…しかし、今ある米を取られては…
ただひたすらに飢え死を
待つばかりなのです……」
覚悟を含んで静かに囁く。
「斯くなる上は…
私の首を差し上げます」
「義助‼︎」
大鬼が叫んだが儀助は構わず続ける。
「何の足しにもなりませぬが…
この首で来年の刈り取りまで
待っていただけないでしょうか…」
「お願いいたします‼︎」
頭を地につけ、首を喜蔵に捧げた。
「ヴワァハハハハ‼︎」
笑みを浮かべながら事の次第を
見守っていた蔭虎が遂に吹き出した。
「だそうじゃ、喜蔵!
其奴の首を刎ねてやれ!」
「最も…何の手柄にもならぬがのぉ‼︎
ハハハハァ!」
「…………」
ヒュッ‼︎……
刀を大きく振り下ろし、
カチッ…
鞘へと収めた。
「…なっ……」
予想だにしなかった光景に
蔭虎は面を食らった。
そんな主をよそに儀助の元へと歩み寄る。
「………」
スッと右手を差し伸べる。
差し伸べられた手に一瞬戸惑ったが、
右手でしっかりと掴み、
勢いよく立ち上がる。
「なぁにをしておるのだぁ‼︎喜蔵ぉ‼︎」
「………わかりませんか…
愛想が尽き果てたんですよ…貴方に…」
「何ぃ‼︎」
青筋を浮かべて蔭虎は叫んだ。
「此度の戦、所詮は貴方の怨みを
晴らすものに過ぎない…」
顔を儀助の方へと向ける。
「この者たちは愛する者のため
死力を尽くしておると言うのに……」
肩を落し、溜め息混じりに呟いた。
「…父の代から
お仕えしてまいりましたが………
恥を恥とも思わぬ、
者にはついてゆけません‼︎‼︎」
「喜蔵ぉぉ‼︎貴様ぁぁぁ‼︎‼︎」
「………早く……」
「……」
「早く行かれよ‼︎」
「…は!はい‼︎、菊‼︎」
「おう‼︎」
「そうはさせるかぁ‼︎‼︎」
振り上げられた刀が喜蔵を捉える。
「殺せぇ‼︎一人残らずぶち殺せぇぇ‼︎‼︎」
鬼と熊殺しを前にして、
お互い顔を見合わせてたじろぐ。
それに気づいた蔭虎は
激しく激昂した。
「何をしておる‼︎‼︎‼︎」
ザ…ザザ…ザザザザザッ…
戸惑い気味ではあったものの、
鋭い光が3人に向けられた。
「………」
カチッ…シュッ!
睨み付けるような切先は
取り囲む者達を気圧した。
「……来い…熊殺しの技を見よ‼︎」
鋭い痛みに呻きをあげながら、
掌を地に付けゆっくりと上体を起こす。
だが、それを喜蔵が
みすみす見逃すわけがなかった。
ヒュ…バッ………
「グゥアアァァァ‼︎」
背中の傷は大きく交差し、
とうとうあの大菊童子が悲鳴を上げた。
それでもなお、体は確かに立ち上がろうと
懸命に力を振り絞っている。
「…………」
息の根を止めるため、
ゆっくりと大鬼へと近づく喜蔵。
静かな殺意を滲ませる目は
頸から視線を外そうとせず、
運命は既に決したかに見えた。
……タタタタタッタッ‼︎
‼︎ヒュッ‼︎
ガチーン‼︎…ギギギ……
背後から迫り来る何かを
身を翻して刀で受けた。
その直後、やっとの思いで上体を
地から引き剥がした
大菊童子が振り返りながら叫んだ。
「?……義助…義助かっ⁈」
「菊‼︎さっさと村に戻るぞっ‼︎‼︎」
ギリギリと音を立て、
額に近づく刃に争いながら叫ぶ。
「水路…水路はどうすんだ‼︎」
痛みを抑えながら尋ねる。
「この期に及んで…
まだわからんかっ‼︎たわけ‼︎‼︎」
義助が一喝すると流石の大菊童子も驚いた。
「……水路の…一つで……ウジウジと…」
ギリギリと刀が押し込まれていく
「それでも貴様っ……地獄の…」
喜蔵がグッと押し込む。
「悪鬼かっ‼︎‼︎‼︎」
弾き飛ばされ、大きく後ろへ転倒する。
喜蔵から離そうと大菊童子が
駆け出そうとすると
「待て‼︎」
鋭い視線と共に義助が叫ぶ。
一瞬動きを止めたと同時に
槍の群れが突き立てられ、
行く手を阻まれた。
「…手向かう形となって
申し訳ございません……」
儀助が刀を傍らに置き、
手と膝を地につけた。
「米を納めておれば
このような事にならなかったのは
重々承知しております…」
首を垂れ、俯き気味で言葉を繋ぐ。
「…しかし、今ある米を取られては…
ただひたすらに飢え死を
待つばかりなのです……」
覚悟を含んで静かに囁く。
「斯くなる上は…
私の首を差し上げます」
「義助‼︎」
大鬼が叫んだが儀助は構わず続ける。
「何の足しにもなりませぬが…
この首で来年の刈り取りまで
待っていただけないでしょうか…」
「お願いいたします‼︎」
頭を地につけ、首を喜蔵に捧げた。
「ヴワァハハハハ‼︎」
笑みを浮かべながら事の次第を
見守っていた蔭虎が遂に吹き出した。
「だそうじゃ、喜蔵!
其奴の首を刎ねてやれ!」
「最も…何の手柄にもならぬがのぉ‼︎
ハハハハァ!」
「…………」
ヒュッ‼︎……
刀を大きく振り下ろし、
カチッ…
鞘へと収めた。
「…なっ……」
予想だにしなかった光景に
蔭虎は面を食らった。
そんな主をよそに儀助の元へと歩み寄る。
「………」
スッと右手を差し伸べる。
差し伸べられた手に一瞬戸惑ったが、
右手でしっかりと掴み、
勢いよく立ち上がる。
「なぁにをしておるのだぁ‼︎喜蔵ぉ‼︎」
「………わかりませんか…
愛想が尽き果てたんですよ…貴方に…」
「何ぃ‼︎」
青筋を浮かべて蔭虎は叫んだ。
「此度の戦、所詮は貴方の怨みを
晴らすものに過ぎない…」
顔を儀助の方へと向ける。
「この者たちは愛する者のため
死力を尽くしておると言うのに……」
肩を落し、溜め息混じりに呟いた。
「…父の代から
お仕えしてまいりましたが………
恥を恥とも思わぬ、
者にはついてゆけません‼︎‼︎」
「喜蔵ぉぉ‼︎貴様ぁぁぁ‼︎‼︎」
「………早く……」
「……」
「早く行かれよ‼︎」
「…は!はい‼︎、菊‼︎」
「おう‼︎」
「そうはさせるかぁ‼︎‼︎」
振り上げられた刀が喜蔵を捉える。
「殺せぇ‼︎一人残らずぶち殺せぇぇ‼︎‼︎」
鬼と熊殺しを前にして、
お互い顔を見合わせてたじろぐ。
それに気づいた蔭虎は
激しく激昂した。
「何をしておる‼︎‼︎‼︎」
ザ…ザザ…ザザザザザッ…
戸惑い気味ではあったものの、
鋭い光が3人に向けられた。
「………」
カチッ…シュッ!
睨み付けるような切先は
取り囲む者達を気圧した。
「……来い…熊殺しの技を見よ‼︎」
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