兄がBLゲームの主人公だったら…どうする?

なみなみ

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中学生編

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「お兄ちゃん!朝だよ?起きて!」
「………ん……もう少し……。」
「学校遅刻しちゃうよ?ねえってば!」
「ん~。」
寝起きで髪もぼさぼさ。
布団の中からとろんとした表情で私をちらりと見る。天使のようなあどけない表情なのに、乱れた髪をかきあげる仕草にドキリとするような色香がある。目があって一瞬怯んだ私に兄は微笑んだ。
「お休み~。花奈も一緒に寝よ?」
「あっ!ちょっと!起きてよ!」
そのまま布団に引きずり込もうとする兄からあわてて逃げ出した私は、そのまま布団の中に戻っていった兄を頬をふくらませて睨みつけた。学校に行く時間は迫ってきている。これは布団をはぎとるか、兄の布団にあがって、揺らすかどちらかで起こすしかないのかな。私はため息をついて、兄を起こす為にはどうしたものかと考え始めた。

私の名前は斎藤花奈。
公立中学の2年生だ。
背中半ばまでの長い髪をきっちりと1本にまとめ、10人いたらうっかり埋没して見失ってしまうこと間違しの真面目だけが取柄の平凡な容姿。テスト勉強は一所懸命に頑張るが、良くて中くらいの成績。まさに平凡が服を着て歩いているのが私だ。

だが、私にはただ一つ平凡でないことがある。

私には前世の記憶があるらしい。とはいっても、前世の家族とか、勉強のことは全く覚えていない。ただ覚えているのはこの世界が私が前世ではまっていたBLゲームの世界だということ。タイトルは正直覚えていないのだが、話はなんとなく覚えている。

ゲームの主人公は私の兄。斎藤環。

私立高校に通う1年生だ。
私とは違う、かなり整った顔立ちをしている。小学生の頃からとにかく可愛らしく、周囲からはまさに天使のようと絶賛されていた。高校生になった今では天使の面影を残しつつ、中性的な雰囲気のなかにも男の色香を兼ね備えたBLゲームの主人公らしい魅力的なキャラに成長している。ゲームの中でも庇護欲をかきたてる容姿に素直で健気な性格が攻略対象たちを惹き付け、学園でおこる様々出来事にともにたちむかっていくうちにラブ度があがっていき、ベストエンドを迎える王道ストーリーで、わりと人気があったと思う。
主人公が高校に入学してからがゲームの始まりで、4月の今は兄が入学した高校ではきっと、攻略対象達とひたすら出会いイベントを繰り広げているのではないだろうか。

(ああ。生BL。見てみたいような……見るのが怖いような。でもそんなこんなのBLシーンが目前で繰り広げられるんだよね……しかも自分の兄。現実としてはちょっと複雑かも)

私はBLゲームの兄と攻略対象達のスチルを思い出し、ふと遠い目をした。抱きしめられて幸せそうに見つめあう2人のスチルはまあ良しとしよう。だがゲームはR18指定だった。中にはいくとこまでいってしまうスチルもあった。ドキドキしながらゲームを進めたのを覚えている。
攻略対象は幼馴染み、同級生、先輩、後輩の四つのルートがあったはずで、確か隠しキャラで教師もいたはずだ。妹としての役柄としてはまさにモブ。脇役として、ストーリーの進行を補佐していたように思う。兄が誰を選ぶのかによって私の動きも変わってくるわけで。
「ううむ。誰を選ぶのか。それが問題だ。」
「……誰を選ぶのかって。花奈ってば、告白でもされた?誰?」
兄を起こすことも忘れて考えこんでしまい、腕を組んで目を閉じていた私は背後からの気配に気がつくのが遅れて思わず叫び声をあげた。
「ぎゃあっ!」
「ぎゃあって……色気ねえな。もう少しさあ、こう、なんかあるだろ。」
「色気なくて悪かったですね。うっ。くすぐったい……っ!肩にあごのせるのやめてほしいんだけど……」
「わざとやってるからな。花奈は背が低いからこの体勢つらいんだぞ?お前なにこれ、肩うすいな。ちゃんと食べてるか?」
「どうせチビだもん!それより、どうしてここにいるの?不法侵入!不審者だよ!」
「環を迎えに来たらおばさんが家の中に入れてくれたぞ。」
突然兄の部屋に入ってきて私の背後から抱きついてきて肩にあごをのせているのは、兄の幼馴染みの一条蓮琉である。
攻略対象その1、幼馴染みだったりする。
中学校の時はサッカー部に所属しており、180cmをこえる長身に、鍛えられた身体をもつ爽やかなスポーツマンタイプのイケメンである。放課後に女の子に告白されているところを何度見かけたか覚えきれないほどだ。うちの兄もモテるのだが、可愛らしい外見からマスコットのように愛でられることが多く、女子からだけでなく男子からもよく告白されていた。

一条蓮琉とは、彼が小学生の時にうちの隣に引っ越してきてからの家族ぐるみのお付き合いである。彼が一人っ子で兄とも同じ年ということもあり、私にとっては、もう1人の兄といった感じだ。お互いを名前で呼びあったりしてわりと仲良くさせてもらっていると思う。そのせいで彼のファンのお姉様方から最初は嫉妬され嫌がらせをされたりしていたが、彼の私に対する安定の妹扱いに安心したのか、すれ違うとたまにお菓子をくれたりするようになるまで関係が改善された。
蓮琉くんは私の肩からあごを離すと、背後から抱きしめている手は離さずに、耳元にキスしてきた。
蓮琉くんはスキンシップが激しい。いつの頃からか、抱きついてきたり、キスしてきたりするのは当たり前になっていた。別に海外育ちでもないのに。そういえば、幼馴染みルートでは主人公にわんこのようにまとわりついていたような気がする。


「おばさんもう仕事行くってよ。花奈は朝ごはんまだだろ?環は俺が起こしておいてやるから、食ってくれば?」
「えっ?もうそんな時間?学校にいく準備しないと!」
「もういい時間だぞ?遅刻するなよ?」
彼はあわてて動き出した私の頭を優しく撫でると、乱れていた私の制服のリボンをそっとなおし、爽やかに微笑みかけてきた。このさり気ない気配りがモテる所以というヤツだろうか。これで女子もコロリとおちるんだろうなあ。
少し赤くなった頬を冷やすようになでると、背後で蓮琉くんが兄に優しく声をかけるのを聞きながら部屋を出た。引っ越してきてから気がつくと兄のそばにはいつも蓮琉くんがいるような気がする。

(ホント2人は仲良しさんだよね。これは、幼馴染みルートかなあ。)




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