9 / 48
中学生編
9 環
しおりを挟む
俺が学校から帰宅すると、珍しく母さんが仕事から早く帰ってきていた。
「ただいま。今日早かったんだな。あれ?花奈は?」
「先にお風呂に入ってるわよ?」
「ふ~ん。あ、美味い。」
「こら!つまみ食いしないの!」
食卓に置いてあったハンバーグを一つとって口に放り込んだ。美味い。手についたソースも綺麗になめとる。うむ。俺の好きなデミグラスソースだ。
俺が母さんの小言を聞き流してそのまま自分の部屋のある2階にあがろうとしたら、母さんがさらりと自然に。俺にとっては重大な話をしてきた。
「そういえば、あんたの体育祭、花奈は友達と行くみたいね。ふふっ。初めてじゃない?あんたでもなく、蓮琉くんでもない人とおでかけするのって。」
「へえ~……え?」
「ほら、今仲良しの彩子ちゃん。あと1人誰かも一緒に行くって言ってたけど、誰だったかしら。忘れちゃったわ。」
母さんの話を最後まで聞くことなく、俺は階段をかけあがり、自分の部屋へかけこむと、携帯を取り出した。
(これは、蓮琉にメールしとかないと、後でネチネチ言われるパターンだ。)
幼馴染の蓮琉は俺と花奈に対してとんでもなく過保護だ。
特に花奈に対しては守りたいという意識が強いらしく、花奈が、俺達以外のヤツとでかけることを嫌がるようになった。目の届かないところで危険な目にあうのが嫌だと言っているが、単にいきすぎた独占欲ではないかと俺は思っている。
だけど花奈ももう中学生だ。
もう手の中で守られる小学生ではない。
友達とでかけるくらい許してやれよと思うんだがな。まあ、オレももし花奈が男と2人で出かけるとか言ってきたら、阻止するけど。可愛い妹だし。
「げ。」
蓮琉から案の定、反対メールがきた。俺は思わず頭をかきむしった。
「はあ?マジかよ。」
『彩子ちゃんと誰と行くのか確認してくれ。俺は基本的に反対。環からうまいこと言ってくれ。』
「ふざけんな。てめえが言え。」
『俺が言うより、環からの方が角がたたないだろ。頼む。』
俺は携帯の画面をしばらく睨みつけていたが、舌打ちをすると、立ち上がった。
花奈の部屋の前に行き、ドアをノックする。そして、花奈の返事を確認して、部屋に入った。
花奈はテスト前ということで勉強中だった。
こういう真面目なとこがまた可愛いんだよな。以前わからないとこがあるというので教えてやったら、微妙な顔をされて、それ以来は声がかからなくなった。どちらかというと、蓮琉に聞きにいっているようだ。何故だ解せん。
(しかし、どう話したものかな……)
俺は戸惑っていた。
花奈のベッドに横になり、ぼんやりと部屋の中を見渡す。よし。男の影はなさそうだ。
俺は勇気をだして、話しかけた。
そして、さり気なく体育祭についてふれてみた。
(……うん。俺の妹マジ天使)
花奈が俺たちの体育祭をほんとに楽しみにしてることが伝わってきて、なんだかくすぐったい。しかもそれと同時に友達とのおでかけへの期待もひしひしと伝わってくる。
(え?俺言うの?友達と一緒に行くなって。断れって?……イヤイヤイヤイヤ。無理でしょ。無理。花奈のこのキラキラした瞳が一気にくもるんだぞ?)
俺は速攻蓮琉にメールした。したら、すげえ勢いで返信が返ってきた。
『無理じゃねえよ。やれ』
いや、ほんと無理だって。何度かメールを繰り返していたが、俺はだんだん腹がたってきた。
(じゃあお前がやれ)
少し時間をおいて、返信が返ってきた。
『すぐ行く。』
俺はよし、と呟くとベッドに沈みこんだ。
あいつもこの状況を実際に目にすればいいんだよ。絶対言いだせねえと思うぞ?
待つのもほんの少しの時間。
蓮琉が花奈の部屋にやってきた。
ほれ。花奈の表情を見ろ。
言えるもんなら言ってみろ!
さすがのヤツも、花奈のキラキラした期待の瞳に強い態度にでることが出来ず、攻めあぐねているようだった。
さえない表情の蓮琉に、何を思ったか、花奈の表情がくもってきた。
(おい?蓮琉。花奈の様子がおかしいぞ?)
(た……環。どうしよう。どうしたらいい?)
蓮琉とアイコンタクトで会話はしているうちに、花奈が変に勘違いし始めた。
(お前が体育祭に来ることが恥ずかしいわけないだろ?おい、蓮琉!どうにかしろ!)
俺は蓮琉に目で訴えた。
そうしたら、花奈の言葉にテンパった蓮琉が、花奈を抱きしめた。
(ゴラあああああ!俺の妹に何してんだよ?)
後から蹴飛ばしてやろうかと思ったが、花奈の表情が落ち着いてきたので我慢した。
もう、友達と俺らの体育祭にきてもいいんじゃねえの?と思っているが、蓮琉はまだ諦めていないらしい。
待て。お前、何を言うつもりだ。やめろ、蓮琉!
せっかく明るくなった花奈の表情がまたくもるのではと俺は気が気じゃない。
蓮琉を止めようとした時、部屋にノックの音が響いた。
母さんだった。
俺は部屋に入ってきた母さんの表情をみて、悟った。
(あ。これバレてるわ。)
あきらめろ、蓮琉。
母さんは花奈の味方だ。
そろそろ気がつけよ。俺達説教コースだぞ。
俺と蓮琉が花奈に俺ら以外の友達と一緒に行くなと言いにきていたのを母さんは正確に理解しているらしい。
母さんに命令されてリビングに降りた俺は、すぐにお茶を入れて、テーブルに運んだ。そして、冷めていくお茶を前に、母から説教をくらうハメになった。蓮琉も真っ青になっている。
まあ正座じゃなかっただけマシか。
(あ。彩子ちゃんと他に誰と一緒に行くのか聞くの忘れてた。)
「ただいま。今日早かったんだな。あれ?花奈は?」
「先にお風呂に入ってるわよ?」
「ふ~ん。あ、美味い。」
「こら!つまみ食いしないの!」
食卓に置いてあったハンバーグを一つとって口に放り込んだ。美味い。手についたソースも綺麗になめとる。うむ。俺の好きなデミグラスソースだ。
俺が母さんの小言を聞き流してそのまま自分の部屋のある2階にあがろうとしたら、母さんがさらりと自然に。俺にとっては重大な話をしてきた。
「そういえば、あんたの体育祭、花奈は友達と行くみたいね。ふふっ。初めてじゃない?あんたでもなく、蓮琉くんでもない人とおでかけするのって。」
「へえ~……え?」
「ほら、今仲良しの彩子ちゃん。あと1人誰かも一緒に行くって言ってたけど、誰だったかしら。忘れちゃったわ。」
母さんの話を最後まで聞くことなく、俺は階段をかけあがり、自分の部屋へかけこむと、携帯を取り出した。
(これは、蓮琉にメールしとかないと、後でネチネチ言われるパターンだ。)
幼馴染の蓮琉は俺と花奈に対してとんでもなく過保護だ。
特に花奈に対しては守りたいという意識が強いらしく、花奈が、俺達以外のヤツとでかけることを嫌がるようになった。目の届かないところで危険な目にあうのが嫌だと言っているが、単にいきすぎた独占欲ではないかと俺は思っている。
だけど花奈ももう中学生だ。
もう手の中で守られる小学生ではない。
友達とでかけるくらい許してやれよと思うんだがな。まあ、オレももし花奈が男と2人で出かけるとか言ってきたら、阻止するけど。可愛い妹だし。
「げ。」
蓮琉から案の定、反対メールがきた。俺は思わず頭をかきむしった。
「はあ?マジかよ。」
『彩子ちゃんと誰と行くのか確認してくれ。俺は基本的に反対。環からうまいこと言ってくれ。』
「ふざけんな。てめえが言え。」
『俺が言うより、環からの方が角がたたないだろ。頼む。』
俺は携帯の画面をしばらく睨みつけていたが、舌打ちをすると、立ち上がった。
花奈の部屋の前に行き、ドアをノックする。そして、花奈の返事を確認して、部屋に入った。
花奈はテスト前ということで勉強中だった。
こういう真面目なとこがまた可愛いんだよな。以前わからないとこがあるというので教えてやったら、微妙な顔をされて、それ以来は声がかからなくなった。どちらかというと、蓮琉に聞きにいっているようだ。何故だ解せん。
(しかし、どう話したものかな……)
俺は戸惑っていた。
花奈のベッドに横になり、ぼんやりと部屋の中を見渡す。よし。男の影はなさそうだ。
俺は勇気をだして、話しかけた。
そして、さり気なく体育祭についてふれてみた。
(……うん。俺の妹マジ天使)
花奈が俺たちの体育祭をほんとに楽しみにしてることが伝わってきて、なんだかくすぐったい。しかもそれと同時に友達とのおでかけへの期待もひしひしと伝わってくる。
(え?俺言うの?友達と一緒に行くなって。断れって?……イヤイヤイヤイヤ。無理でしょ。無理。花奈のこのキラキラした瞳が一気にくもるんだぞ?)
俺は速攻蓮琉にメールした。したら、すげえ勢いで返信が返ってきた。
『無理じゃねえよ。やれ』
いや、ほんと無理だって。何度かメールを繰り返していたが、俺はだんだん腹がたってきた。
(じゃあお前がやれ)
少し時間をおいて、返信が返ってきた。
『すぐ行く。』
俺はよし、と呟くとベッドに沈みこんだ。
あいつもこの状況を実際に目にすればいいんだよ。絶対言いだせねえと思うぞ?
待つのもほんの少しの時間。
蓮琉が花奈の部屋にやってきた。
ほれ。花奈の表情を見ろ。
言えるもんなら言ってみろ!
さすがのヤツも、花奈のキラキラした期待の瞳に強い態度にでることが出来ず、攻めあぐねているようだった。
さえない表情の蓮琉に、何を思ったか、花奈の表情がくもってきた。
(おい?蓮琉。花奈の様子がおかしいぞ?)
(た……環。どうしよう。どうしたらいい?)
蓮琉とアイコンタクトで会話はしているうちに、花奈が変に勘違いし始めた。
(お前が体育祭に来ることが恥ずかしいわけないだろ?おい、蓮琉!どうにかしろ!)
俺は蓮琉に目で訴えた。
そうしたら、花奈の言葉にテンパった蓮琉が、花奈を抱きしめた。
(ゴラあああああ!俺の妹に何してんだよ?)
後から蹴飛ばしてやろうかと思ったが、花奈の表情が落ち着いてきたので我慢した。
もう、友達と俺らの体育祭にきてもいいんじゃねえの?と思っているが、蓮琉はまだ諦めていないらしい。
待て。お前、何を言うつもりだ。やめろ、蓮琉!
せっかく明るくなった花奈の表情がまたくもるのではと俺は気が気じゃない。
蓮琉を止めようとした時、部屋にノックの音が響いた。
母さんだった。
俺は部屋に入ってきた母さんの表情をみて、悟った。
(あ。これバレてるわ。)
あきらめろ、蓮琉。
母さんは花奈の味方だ。
そろそろ気がつけよ。俺達説教コースだぞ。
俺と蓮琉が花奈に俺ら以外の友達と一緒に行くなと言いにきていたのを母さんは正確に理解しているらしい。
母さんに命令されてリビングに降りた俺は、すぐにお茶を入れて、テーブルに運んだ。そして、冷めていくお茶を前に、母から説教をくらうハメになった。蓮琉も真っ青になっている。
まあ正座じゃなかっただけマシか。
(あ。彩子ちゃんと他に誰と一緒に行くのか聞くの忘れてた。)
21
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる