兄がBLゲームの主人公だったら…どうする?

なみなみ

文字の大きさ
10 / 48
中学生編

10

しおりを挟む
朝起きてすぐにカーテンをあけて、私は窓の外を見た。
今日はお兄ちゃんの体育祭だというのに、雨が心配されていたのだ。まだ降ってはないようで曇り空が広がっている。
天気を確認した私は、お兄ちゃんの部屋にかけこんだ。

「お兄ちゃん!雨降ってないよ?天気大丈夫そうだよ?」
「ん……ふわあ。雨降ってないのか。今日体育祭あるんだな。」
「うん。あるよ!えへへ。今日楽しみだなあ。私はもう起きるけど、お兄ちゃんは?」
「ん~。まだ寝たい、けど体育祭あるんなら起きて準備しないとなあ。花奈が、ギュってしてくれたら、頑張れる気がする。」
「ええ?もう、仕方ないなあ。」
私はお兄ちゃんにギュっとくっつくと頭をすりつけた。
「あ~。このまま花奈と寝ていたい……」
「お兄ちゃん!ダメだよ。起きないと。」
「ん~……いてっ。」
私を抱きしめたままそのまま眠ってしまいそうだった兄が急に呻き声をあげた。
ベッドの横を見ると蓮琉くんの姿が見えた。足がいかにも今蹴りましたの姿勢になっている。
私が兄の部屋に入る時に開け放したままだったドアから入ってきたらしい。

「そろそろ起きろ。環、俺ら体育委員だから、早く行かねえとヤバイぞ。先輩にどつかれる。」
「あ~くそっ。一年生の悲しいサガだよなあ。ちくしょう。起きるか。」
「おう。さっさと準備しろ。花奈は今日は何時頃来るんだ?」
「んんとね。最初の競技には間に合うようにいくつもり。」
「そっか。ああ、花奈。駅から俺らの高校までの地図携帯にメールしといたから。確認しておいてくれ。どこの駅で降りるかはわかるな?」
「蓮琉くんありがとう。うん。2つ隣の駅だよね。」
「大丈夫そうだな。気をつけて来るんだぞ?環、俺玄関で待ってるから。」
「おう。悪いな。すぐ準備するから。」

部屋を出て玄関へ向かう蓮琉くんの後ろをついて行きながら、私は蓮琉くんに話しかけた。
「今日雨降らなかったらいいねえ。」
「ほんとだよなあ。帰りまではなんとかもちそうだけど。こればかりはわからないからな。花奈も、忘れずに折りたたみ傘もっとけよ?」
「わかった。蓮琉くんコーヒーいれようか?お兄ちゃん支度もう少しかかると思うよ。」
「花奈は準備しなくていいのか?」
「集合時間までまだ時間あるし。すぐいれるね!リビングで待ってて?」
「ん~。じゃあ、お願いしようかな。あ、おはようございます。」
「お父さんおはよう!お父さんもコーヒー飲む?」
「おはよう。コーヒーもらおうかな。」
リビングに入るとお父さんがソファに座って新聞を読んでいた。今日は珍しく仕事もないみたいで、朝からのんびりしている。
挨拶をした私は、コーヒーをいれるためにキッチンへ移動した。キッチンでお母さんが兄の弁当をつめている。美味しそうだ。
私はあまっているおかずを1つひょいと口にいれた。
「ん。美味しい。」
「あんた達兄妹は。やることが同じじゃないの。」
「えへへ。おはよう。お母さんもコーヒーのむ?」
「はい、おはよう。そうね、弁当ももう仕上がるからもらおうかしら。」
コーヒーをいれてリビングにいくと、お父さんと蓮琉くんがお話ししていたので、こっそりコーヒーを置くことにする。お父さんも蓮琉くんもにっこり笑顔でありがとうと言ってくれた。

「蓮琉くん。朝から環がすまないねえ。」
「いえ、俺も好きでしてるので……」
「今日は私は午後から仕事だが午前中は応援にいけるから。楽しみにしてるよ。」
「はい。ありがとうございます。」

お父さんと蓮琉くんが和やかに会話している横で、私とお母さんものんびりコーヒーを飲んでいると、お兄ちゃんが慌ただしく1階におりてきた。洗面所に急いで向かう中、ちらりと私たちを見ると、少し拗ねた口調で声をかけてきた。

「あ~コーヒーいいな!」
「環は早く起きないからでしょ?」
「お兄ちゃん、カフェオレいれるよ?」
「お~。頼むわ。」
キッチンでカフェオレをいれていると、飲み終わったコーヒーカップをもって蓮琉くんがやってきた。
「花奈、コーヒーありがとう。美味しかった。」
「はあい。カップの片付けごめんね。ありがとう。」

蓮琉くんはリビングに戻らずに、そのまま話しかけてきた。
「そういえば、花奈。今日一緒に行くのって、彩子ちゃんと誰?」
「二葉くんだよ。」
「…………え?」
「ほら、この前学校の帰りに会ったじゃない。お兄ちゃんの後輩の剣道部の。」
「……………え。」
「あ、私もそろそろ準備しようっと。じゃあまた後でね!蓮琉くん頑張ってね!あ、お兄ちゃん。はい、カフェオレ。私二階にあがるから。気をつけて行ってきてね。お兄ちゃんも頑張って!」
私はカフェオレをお兄ちゃんに渡すと、いってらっしゃとにっこりと微笑んだ。
「おう。花奈も気をつけて来いよ。…ん?どうした?蓮琉。」
「………………え?」




待ち合わせ場所の駅に10分前に着いた私は、改札口の近くの邪魔にならない所に移動した。

今日はお兄ちゃん達の高校の体育祭。
ということは、ゲームのイベントも発生するはずだ。

それにしてもお兄ちゃんは、今日誰のルートに入るのかな。まさかお兄ちゃんにどの人が好き?って聞けないよね。
(まあ今日行ってみたらわかるかなあ。体育祭のストーリーってどんな話だっけ?)
思い出そうとして考え込んでいた私は近くで声をかけられて、ビクリと体を震わせた。

「あ。悪い。驚かせたか?」

私服姿の二葉くんが立っていた。
ジーンズにTシャツというシンプルな格好だ。剣道をしているせいか姿勢もよく、堂々とした彼は一見高校生にも見える。
「ううん。おはよう。……どうしたの?」
二葉くんは少し困ったように私を見た。
不思議に思った私が声をかけようとすると、彼の背中から、小学生の子どもの顔がのぞいて、おはようございます!と朝の挨拶をしてきた。
二葉くんをそのまま小さくしたような男の子と、二葉くんに雰囲気がそっくりだけど、涼やかな目をした綺麗な女の子だ。
「悪い。両親が仕事になって。……その……。」
歯切れの悪い話し方になってしまった二葉くんと彼の弟妹に、私は笑顔で話しかけた。
「うん。一緒に行こうよ。みんなで行ったら楽しいよ、きっと。ええと、おはようございます。私は斎藤花奈って名前です。今日はよろしくお願いします。」
二葉くんはほっとした顔で弟妹の頭を乱暴になでた。
「助かる。こいつらは俺の妹と弟で、恭子と寛大。今日はよろしく頼む。お前ら、騒ぐなよ。……雪原は?」
「そろそろ来ると思うんだけど…あ。」

「ごっめ~ん。」

彩子は走り寄ってくると、私の肩に手をおいて、息を整えた。そして、二葉くんの弟妹に気がつくと、目を丸くした。

「遅くなった……あれ?恭子ちゃんと寛大?」
「彩ちゃん!久しぶり!」
「悪い。両親が仕事になって。今日は一緒に行動させてくれ。」
「オッケー。恭子ちゃん、久しぶりだねえ。背がのびた?」
「うん。あのね……」
「なあ。」
盛り上がりかけた彩子と二葉くんの妹に、二葉くんが冷静に声をかけた。
「雪原、とりあえず切符買おう。電車の時間がある。」
「そうね。ごめんごめん。行こうか!」



電車に乗り込んだ私達は、すいている隅の方を陣取った。
「彩ちゃん、あのね、先生ってばね……」
「え~恭子ちゃん、担任アイツなの?」
彩子と二葉くんの妹の恭子ちゃんは、小学校の時同じクラブだったみたいで、とても仲良しだ。
二葉くんの弟は私達をじっと見ていたが、内緒話をするように二葉くんに話しかけた。
「兄ちゃん。どっちが兄ちゃんの彼女?」
「……えっ。」
かたまった私たちに、二葉くんの弟は、さらに言葉を重ねた。
「どっちも普通じゃん。もっと美人がいいな。俺。……いてえ!」
二葉くんが、寛大くんの頭に素早く拳骨をおとした。
「寛大。あんまり馬鹿なこと言うんだったら、今すぐ連れて帰るぞ。」
「寛大。あんたバカ?何いってんのよ。彩ちゃんに謝んなさいよね。」
「二葉、恭子ちゃん。甘いよ。このまま電車から放り投げようよ。」
彩子がニタリと笑って寛大くんを見た。
寛大くんはやっと自分が随分失礼な言葉を発したことに気がついて、ガタガタ震え始めた。そして、ずっと無言のままの私の方が与しやすいと考えたのか、私の背中に回り込んで隠れてしまった。
「……ええと。」
「隠れてんじゃないわよ。花奈!蹴飛ばしちゃいなよ。そんなヤツ。」
「え?ええ?それはちょっと。」
「寛大。斎藤から離れろ。」
「やだやだやだ~っ!」
なんとか私から寛大くんを引き離そうとする二葉くんと、私に抱きついて離れない寛大くん。もう一度拳骨を落とそうと準備する彩子。
まさにこの世は阿鼻叫喚。
この状況はどうおさめたらいいのか。困り果てた私の背後に、誰かがふらりと姿を現した。
「あれ。やっぱり妹ちゃんじゃ~ん。」
「………あ」
兄の同級生の三田くんだった。
いきなり背の高い茶髪にピアスの男がぬっと現れたからか、寛大くんが驚愕に目を見開いて、私から手を離した。そのスキを見逃さず、三田くんは寛大くんを抱き上げた。
「ほら、高いたか~い!」
「ぎゃああああ!」
ゴン!と音がした。
「あ、今天井に頭あたったんじゃない?」
「そうみたいだな。」
二葉くん?彩子?そこは冷静につっこむところなのかなあ。

三田くんは、あはははと笑うと、全然悪いと思っていない声で話しかけてきた。
「ごめんごめん。当たっちゃった。謝るついでにいいこと教えてあげる。」
三田くんは寛大くんを下ろすと、しゃがみこんで目を合わせた。
「あのね。普通の女の子なんていないんだよ。ほら、あの奥様方も、年配の方も、今君が普通だっていった人達も。みんな可愛い女の子なんだ。ほら、みんな可愛いよねえ?だって、ほら。服を脱いでベッドに入ったらみんな一緒だよ。」

(……………。)

一瞬、空気が凍った。
いつも気丈な彩子だが、三田くんの登場に、明らかに戸惑っているのか、いつもの勢いが欠けている。
「……え?ねえ、二葉。今さらっと最低な発言でなかった?」
「……あ、ああ。」
「お兄ちゃん、どういう意味?」
「……恭子、忘れろ。」

私達が三田くんの言葉にかたまっていると、電車内のアナウンスが次の停車駅を告げた。

「あ、次の駅で降りるんじゃない?」
「ほんとだな。寛大、恭子。降りる準備しとけよ。次で降りるぞ。」

何事も無かったように行動する私たちを三田くんは、ニコニコ見守っていた。






















しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処理中です...