プロンプト・メーカー

ぽん

文字の大きさ
3 / 4

第三話 初依頼と、鉄屑と少しの成長

しおりを挟む
 村に泊まった翌朝、昨夜生成した剣が見つからなかった。誰かに盗られたかと思ったが盗るほどの価値はない。

その後、俺は鍛冶見習いの少年と素材屋の娘に案内され、冒険者ギルドへ向かった。といっても大都市にある石造りの立派なものじゃなく、木造の集会所に看板がかかっている程度だ。

「ここがギルドだ。登録すれば依頼が受けられるぞ」

 革のエプロンを着た小柄な少年が胸を張る。昨日出会った鍛冶見習い――トーマだ。道具や寸法の話になるとやたら細かい、真面目で口うるさいやつだ。

「大丈夫? アヤセ」

 隣でにこやかに笑うのは茶髪のポニーテールの少女、ミラ。素材屋の娘で行商の手伝いに来ているらしい。物腰が柔らかくて説明も分かりやすい。昨日も「錆びにくい特徴を言った方がいい」と助言してくれた。

 二人の存在は心強い。俺ひとりじゃここに立つことすら怖気づいていたに違いない。



 登録を終え、紹介された依頼は「畑を荒らすゴブリン退治」。
 ……よりによって初戦闘かよ。胃が痛い。

「心配すんな、アヤセ。俺も行く」トーマが金槌を肩に担ぐ。
「私も援護するから」ミラが笑顔で短剣を見せた。

 二人に背中を押され、俺は畑の外れに向かった。そこには小鬼が三匹。農具を振り回し、畑を台無しにしている。

「よ、よし……やるぞ!」

 俺は右手を突き出し、声を張った。

「“強い剣!”」

 ――ボフン!

 出てきたのは……鉄の塊。見た目だけはゴツいが、重すぎてズルッと手から滑り落ちた。

「わっ!」

 ドゴンッと地面に突き刺さり、土煙が舞う。

「おい、全然扱えてねぇぞ!」トーマが叫ぶ。

「ち、違う! 次こそ……!」



「“軽くて丈夫な棒!”」

 ――ボフン!

 今度は手に収まる鉄棒が出現。さっきよりはるかにマシだ。俺は思い切って振りかぶる。

「うおおお!」

 ガツン! ゴブリンに当たったが、致命傷にはならない。逆に怒った小鬼が反撃してくる。

「ひぃぃ! “大きな盾!”」

 ――ボフン!

 出てきたのは……直径四十センチの鉄板。

「やっぱ鍋フタかよ!!」

 情けなく叫びながら構えると、ゴブリンの棍棒をギリギリ弾き返した。腕がしびれるが、なんとか持ちこたえた。



「今だ!」

 トーマが飛び出し、金槌でゴブリンを殴り倒す。ミラは素早く短剣を投げ、もう一匹を牽制。最後の一匹も二人の連携で仕留めた。

 俺は盾代わりの鉄板を抱えたまま、地面にへたり込む。

「……俺、役に立ったか?」

「フタ一枚で粘ったんだ。上出来だろ」トーマが笑う。
「特徴をもっと工夫すれば、ちゃんと武器になるわよ、アヤセ」ミラが優しく頷く。

 その時だった。

 俺の腕にあった鍋フタが、ふいに光を帯びて――シュウッと音を立てて霧のように消えていった。

「え、えぇぇ!? 消えた!?」

 慌てて剣も確認する。さっきの鉄棒も、同じように光の粒子となって空気に溶けていった。

「なんだこれ……寿命つき!?」

「ははっ、面白ぇな。便利すぎると思ったらそういう制限か」トーマがニヤリと笑う。
「でも逆に言えば、戦闘が終わるくらいは持つってこと。十分役立つわ」ミラは冷静だ。

 ――そうか。無限に使えるわけじゃない。時間が経てば消える。

昨夜生成した剣は消滅したのか。

 鉄屑と鍋フタしか出せなかった俺のスキルは、まだまだ制約だらけだ。
 それでも、ライターとして磨いた“言葉選び”を工夫すればきっと強くなる。

「次は……“まともな剣”を出してみせる」

 俺は夕焼けに拳を握り、心に誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...