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第一章
1.ムルルカ島の巫女
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遥か南洋の海。
明るい太陽。
風に揺れる椰子の木。
軽快な太鼓の音に合わせ、働き、踊り、生きる喜びと悲しみに歌う人々──
ムルルカ島はそんな人々の暮らす、豊饒な実りと敬虔な神への祈りに支えられた島だった。
ある朝──
その島の小さな砂浜で、ひざまずき大きく手を広げる一人の少女がいた。
濃い褐色の肌。
明るい栗色の巻き毛。
胸帯に隠された膨らみかけの胸に、腰蓑が包むほっそりした腰つき。
見た者に忘れることを許さない、印象的な紫色の瞳──
「ナリラ!」
少女を呼ぶ声がした。
大きな瞳が振り返って、椰子の木の下を見る。
「ああ、ノルシラ」
木陰から現れたのは、果物のカゴを抱えた娘だった。
だが、ナリラと呼ばれた少女と同じくその島の娘らしい簡素な装束に包まれた体は、ナリラよりもはるかに豊満だった。
島の娘たちは皆そうだ。
十五も過ぎれば皆、その体が海の女神に例えられるような豊満さを見せる。
薄く細い胸帯の下にはち切れんばかりの豊かな乳房。
短く刈り込まれた腰蓑に包まれる大きな腰の揺れ。
見え隠れする褐色の太腿は、男の目を惹きつけずにはおかない。
この南の海で、ムルルカの女たちはとりわけ美しく魅力的であるという評判があった。
「朝のお勤め?」
「うん。でももう終わったの」
ナリラは供物を片付けて袋に入れると、立ち上がってノルシラの元に向かった。
「私は神殿にお供え持っていくの。一緒に行こ」
神殿へ登っていく坂道を歩きながら、娘たちは話し続けた。
「ナルラはお祭りで踊るの?」
ノルシラが聞いた。
お祭りとは、もうすぐ開かれる収穫祭のことだった。
年に一度、漁や畑での収穫を島の女神〈ムロシャラ〉に感謝するために行われる。
その日と夜、人々は仕事を休み、広場で太鼓を鳴らし燃え盛る炎を囲んで踊り明かす。
「うん、踊るよ。神殿の中庭でだけど」
「なんだー。ナリラも広場で踊ればいいのに」
「それはだめよ……」
「まあ、巫女さんには無理かもねー」
収穫祭の間、広場がどんな様子になるかは、ナリラも知っていた。
この島の主神、女神ムロシャラへの感謝をする祭りではあったが、あまりにも賑やかで猥雑な雰囲気に包まれるのだ。
ムルルカの島は、普段から解放的で性愛にもおおらかな土地柄だった。
男も女も、夫婦の契りを交わすまでは何人かの相手と情を交わすのが普通なのだ。
そして、収穫祭の夜はその風潮がさらに顕著になる。
人々が踊る広場の隅、椰子の木陰、海岸の岩場の陰などで、まぐわう男女の姿がいくつも見られる。
それは、女神に仕える巫女の身であるナリラにとっては、避けるべきものだった。
ナリラは赤子の頃、この島に流れ着き、島の神官に引き取られ巫女として育てられた孤児だった。
十代も折り返してだいぶ経つが、成熟の手前で戸惑い立ち止まったようなほっそりした体つきも、巫女に相応しく思われていた。
顔立ちは美しく、この島には見られない神秘的な紫色の瞳は、まるで海の妖精のようだと言う者もいた。
そして、この歳になるまで男には手も触れたことがないほどの清女でもあった。
「ナリラはちょっとかわいそうだね。お祭りの時くらい、誰かに抱いてもらえればいいのに」
「いいよ。私はそういうの。それより、ノルシラは誰かに抱いてもらえそうなの?」
「うん!」
ノルシラはうれしそうに答えた。
「粉屋のサナタがね、私を欲しいって。メリリたちとも集まってどこかで一緒に……しようかなって」
あっけらかんと打ち明ける友人が、すでに何人かの少年と経験を済ませた「女」であることはナリラも知っていた。
この島では当たり前のことだが、ナリラはそういう話を聞くたびに自分が置いてけぼりにされたような気がしてちょっと寂しかった。
「ああ、楽しみだなあ! サナタ上手だといいな。顔はすごくいいんだけど」
ノルシラは子供のように飛び跳ねた。
大きな胸が揺れ、首飾りが音を鳴らす。
「そ……そんなに楽しみなの?」
ナリラはあまり関心がないようなフリをして言ったが、ノルシラはイタズラっぽい笑顔を浮かべて友の顔を覗き込んだ。
「ナリラも来る? こっそり」
巫女は身をすくめて、大きく首を振った。
「バカ言わないで! 神殿から追い出されちゃう」
ノルシラはさらにナリラに近づき、肩を擦り寄せながら耳元にささやいた。
「男の子はいいよ……上手な子は優しい言葉で心を先に溶かしてから、一番感じやすいところに触れてくるんだ。もう、思い出してだけで濡れてきちゃう……」
「濡れる?」
「そっか。わからないんだ……」
ノルシラは出し抜けにナリラの手をつかむと、自分の腰蓑の奥へとそれをつっこんだ。
「ちょっと!」
慌てて手を引っ込めたナリラは、その前にはっきり感じた。
一瞬触れたノルシラの、茂みに包まれた秘所がしっとりと濡れていたのを。
「ね! 男の子を迎える時、これがもっとあふれるんだよ」
屈託なく笑う友に、ナリラは頬を染めながら顔を背けた。
「わかったから、もうやめて……」
これ以上、色恋の話をしていると、変な気持ちになってくる……
ナリラは自分の腹の下に不思議な熱がたまってくるのを感じた。
あとで熱を冷まさないと……。
明るい太陽。
風に揺れる椰子の木。
軽快な太鼓の音に合わせ、働き、踊り、生きる喜びと悲しみに歌う人々──
ムルルカ島はそんな人々の暮らす、豊饒な実りと敬虔な神への祈りに支えられた島だった。
ある朝──
その島の小さな砂浜で、ひざまずき大きく手を広げる一人の少女がいた。
濃い褐色の肌。
明るい栗色の巻き毛。
胸帯に隠された膨らみかけの胸に、腰蓑が包むほっそりした腰つき。
見た者に忘れることを許さない、印象的な紫色の瞳──
「ナリラ!」
少女を呼ぶ声がした。
大きな瞳が振り返って、椰子の木の下を見る。
「ああ、ノルシラ」
木陰から現れたのは、果物のカゴを抱えた娘だった。
だが、ナリラと呼ばれた少女と同じくその島の娘らしい簡素な装束に包まれた体は、ナリラよりもはるかに豊満だった。
島の娘たちは皆そうだ。
十五も過ぎれば皆、その体が海の女神に例えられるような豊満さを見せる。
薄く細い胸帯の下にはち切れんばかりの豊かな乳房。
短く刈り込まれた腰蓑に包まれる大きな腰の揺れ。
見え隠れする褐色の太腿は、男の目を惹きつけずにはおかない。
この南の海で、ムルルカの女たちはとりわけ美しく魅力的であるという評判があった。
「朝のお勤め?」
「うん。でももう終わったの」
ナリラは供物を片付けて袋に入れると、立ち上がってノルシラの元に向かった。
「私は神殿にお供え持っていくの。一緒に行こ」
神殿へ登っていく坂道を歩きながら、娘たちは話し続けた。
「ナルラはお祭りで踊るの?」
ノルシラが聞いた。
お祭りとは、もうすぐ開かれる収穫祭のことだった。
年に一度、漁や畑での収穫を島の女神〈ムロシャラ〉に感謝するために行われる。
その日と夜、人々は仕事を休み、広場で太鼓を鳴らし燃え盛る炎を囲んで踊り明かす。
「うん、踊るよ。神殿の中庭でだけど」
「なんだー。ナリラも広場で踊ればいいのに」
「それはだめよ……」
「まあ、巫女さんには無理かもねー」
収穫祭の間、広場がどんな様子になるかは、ナリラも知っていた。
この島の主神、女神ムロシャラへの感謝をする祭りではあったが、あまりにも賑やかで猥雑な雰囲気に包まれるのだ。
ムルルカの島は、普段から解放的で性愛にもおおらかな土地柄だった。
男も女も、夫婦の契りを交わすまでは何人かの相手と情を交わすのが普通なのだ。
そして、収穫祭の夜はその風潮がさらに顕著になる。
人々が踊る広場の隅、椰子の木陰、海岸の岩場の陰などで、まぐわう男女の姿がいくつも見られる。
それは、女神に仕える巫女の身であるナリラにとっては、避けるべきものだった。
ナリラは赤子の頃、この島に流れ着き、島の神官に引き取られ巫女として育てられた孤児だった。
十代も折り返してだいぶ経つが、成熟の手前で戸惑い立ち止まったようなほっそりした体つきも、巫女に相応しく思われていた。
顔立ちは美しく、この島には見られない神秘的な紫色の瞳は、まるで海の妖精のようだと言う者もいた。
そして、この歳になるまで男には手も触れたことがないほどの清女でもあった。
「ナリラはちょっとかわいそうだね。お祭りの時くらい、誰かに抱いてもらえればいいのに」
「いいよ。私はそういうの。それより、ノルシラは誰かに抱いてもらえそうなの?」
「うん!」
ノルシラはうれしそうに答えた。
「粉屋のサナタがね、私を欲しいって。メリリたちとも集まってどこかで一緒に……しようかなって」
あっけらかんと打ち明ける友人が、すでに何人かの少年と経験を済ませた「女」であることはナリラも知っていた。
この島では当たり前のことだが、ナリラはそういう話を聞くたびに自分が置いてけぼりにされたような気がしてちょっと寂しかった。
「ああ、楽しみだなあ! サナタ上手だといいな。顔はすごくいいんだけど」
ノルシラは子供のように飛び跳ねた。
大きな胸が揺れ、首飾りが音を鳴らす。
「そ……そんなに楽しみなの?」
ナリラはあまり関心がないようなフリをして言ったが、ノルシラはイタズラっぽい笑顔を浮かべて友の顔を覗き込んだ。
「ナリラも来る? こっそり」
巫女は身をすくめて、大きく首を振った。
「バカ言わないで! 神殿から追い出されちゃう」
ノルシラはさらにナリラに近づき、肩を擦り寄せながら耳元にささやいた。
「男の子はいいよ……上手な子は優しい言葉で心を先に溶かしてから、一番感じやすいところに触れてくるんだ。もう、思い出してだけで濡れてきちゃう……」
「濡れる?」
「そっか。わからないんだ……」
ノルシラは出し抜けにナリラの手をつかむと、自分の腰蓑の奥へとそれをつっこんだ。
「ちょっと!」
慌てて手を引っ込めたナリラは、その前にはっきり感じた。
一瞬触れたノルシラの、茂みに包まれた秘所がしっとりと濡れていたのを。
「ね! 男の子を迎える時、これがもっとあふれるんだよ」
屈託なく笑う友に、ナリラは頬を染めながら顔を背けた。
「わかったから、もうやめて……」
これ以上、色恋の話をしていると、変な気持ちになってくる……
ナリラは自分の腹の下に不思議な熱がたまってくるのを感じた。
あとで熱を冷まさないと……。
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