2 / 19
第1章 人生、終わった
プロローグ エレベーターの先は異世界でした
しおりを挟む
「ねえ前原さん。本当にさあ、もっとしっかりしてくれる?」
―――耳が痛い。
「すみません、すみません」
「謝ればいいってもんじゃないからさあ…そういうの良くないと思いますけど」
「ごめんなさい、何時も迷惑かけて…」
「はあ、もういいよ」
この会話、今まで何度も繰り返したことだろう。
上司が去っていく気配を感じるまで、汚れた黒いカーペットの床面をじっと見つめていた。
彼女の名前は、前原 律葉(28)。
大学卒業後、就職してから丁度4年目の新人…とは言えないが、中堅…とも言えない微妙な立場にいる。
残業時間は30時間超えるのは当然、一人の仕事量が半端なく多い上に、退職者が後を絶たない。
そんなブラックところかダークネスな会社になぜ4年もいるのかというと…単純に、やめる勇気がなかったからである。
(すみません、て私が悪いわけじゃないのに。口癖になっちゃった)
そんな自分がどうしようもなく情けないような、苦しい気持ちでゆっくり顔を上げる。
いつの間にか、手に力が入っていたのか、握った手のひらに爪痕が付いていた。何となくそれをぼうっと見つめていると、ころりと飴玉がひとつ転がった。
「…?」
「顔、あげなって!また怒られたの?」
恐るおそる顔を上げると、爽やかという言葉がぴったりの笑顔に思わず目がくらむ。
「井上君…」
「前原さん、謝りすぎだって。ほら、もっと自信をもって!」
「…ありがとう」
飴を寄越したこの青年は、律葉よりも二期下の上司である。
明るく人懐こい性格と気安い対応で、誰にでも声をかける。会社に友人すらいない自分にまで声をかけてくるので、そういうところが出世する人間の特徴なんだろう、とリツハは思っている。
しかし、時にはそういう光属性の人間が苦手な者もいるのまた事実。
(よくやるなあ…でも、できれば関わりたくない)
律葉はぺこりと頭を下げて足早に去る。
生まれながらの引っ込み思案に、優柔不断な性格。ただ、真面目さが災いしてか、今まで無遅刻無欠席という快挙を成し遂げている。
そんな性格を見透かされてか、中途半端な雑用、変なクレーム案件の処理…厄介な雑務は、いつの間にか律葉が担当となってしまった。
そして、ケチをつけ、上司は文句言ってすっきりプチストレス解消…がルーティンだ。「多少強く言っても、こいつ辞めないだろ」という魂胆が透けて見える。
(そんなのモラハラじゃん…でも。ああ、もう本当にこういう時自分は意気地がなくて嫌になる)
突如隕石が空から降ってきて、世界が滅亡してしまえばいい。
今の律葉はどうすれば会社に行かなくて済むようになるのだろう、と本気で考えることもある。
「はあ…つかまらないうちに帰ろう‥‥」
中途半端に残れば、また妙な雑用を言われてしまう。
鞄と上着を取りに事務所に戻ろうとすると、唯一の通り道である事務所の入り口で話し声が聞こえた。
「井上さー、随分根暗眼鏡に優しいじゃん」
「!」
そっと壁側に寄り、隠れる。
(…嫌なタイミング。根暗眼鏡って…)
律葉は、生まれつきのど近眼の為、度数が分厚い眼鏡は必須である。
どうにか改善しようと眼鏡をコンタクトに変えてみたりもしたが、不慣れなコンタクトに四苦八苦し、途中で挫折してしまった。
せめて髪色だけでも明るくしようとしても、髪はメラニンが濃すぎてうまく染まらない。…この体質は、子供のころから抱えている劣等感でもある。
今更ど金髪にしたとて、気が違ったのか思われるだけで、結局改善には至らないだろうと思う。
「いやーだってさ、いっつも俺らの仕事やってくれてるし、ご褒美上げないと」
「ご褒美ねえー?」
(ああー、もうやだやだやだ)
早く帰宅したい心と、なるべくなら関わらずに済まないかと考える心がせめぎ合う。いっそ駆け抜けてやり過ごすべきかとも考えていると…話は思わぬ方向に進んだ。
「でも、ああいう女って勘違いしそうじゃない?重そう」
「それならそれで…まあ、けっこう胸元は悪くないし?でも、俺の心は皆のものだけどね~」
「!」
その言葉を聞いた瞬間、律葉はふと我に返った。
(なんて上から目線…)
「どうすっかな~いっそ、声かけちゃう?オレ落ちる方に1万!」
「いやーああいうカタイお嬢様は、めんどくさそうだしさあ」
「…は?」
思いがけず声が出て、慌てて口元を抑える。
「でもさ、そう言う固めの女って、面白いくらいコロッと落ちたりするかもよ?」
「それはそれで…好きなように教育できるのも悪くないよな」
―――何言ってるんだろう、こいつ。私があんたごときに惚れているとでも本気で思っているんだろうか?
と、喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。
残念ながら、彼がそういう人間だというのは以前からリツハは見抜いていた。人の顔色を窺うのが慣れたせいか、良くも悪くも空気と人間性を見抜く力は確かなのである。
徐々に話は下世話な方向へと進んでいく。
いつもなら耐えて終わらせるところだが、今日はなぜか違った。
(人間って、ストレスが過ぎると何もかもどうでもよくなる日が来る‥‥って誰かが言ってた)
そう思うと同時に、体の底から嫌悪感のような物が沸き起こり、勝手に足が動いた。そして…わざとヒールのかかとを鳴らして彼らの元へ一目散に向かっていく。
その音を聞いてぎょっとした彼らだったが、顧みず飴玉を胸元に突き出した。
「これ、いらない」
「あ、ああ…ええと、」
思わずのけ反る井上だったが、半ば押し付けるようにして胸元のポケットに放り込む。
「私、甘い物嫌いなんだ」
「そ、そお?」
ひきつった笑顔で受け取ったのを見届けると、一度ひと睨みし踵を返した。
胸を張り、前を向いて颯爽と律葉は自分のコートと鞄を持ち出し事務所を後にする。
「あ!ちょうどよかった!前原さ」
「お先に失礼しまーす」
「え…あ」
デブの上司をシカトしつつ、ずかずかと歩いていくと、入り口前の男共がさっと道を開ける。ぽかんと間抜け面をしている二人の間を通り抜け、くるりと右に曲がり、エレベータのボタンを押す。
確実に閉じたのを確認して…リツハは一人、エレベーター内に座り込んだ。思わず口元が緩む。
「ふふ…いえた。やった!言えるじゃん私……!!!よっしゃあ!」
ぐっとこぶしを天に向かって突き上げると…同時にぱあっと辺りが白い光に包まれた。
「へ?」
電気でも切れたのか?
ふと上を見上げると…そこには、一面の青い空が広がっていた。
「…エエト、アレ?」
茫然としていると、銀色の扉は当然のように開き、律葉に降りろ、と急かす。
一歩踏み出すと、爽やかな風が頬を撫でる。都心にあるオフィスビルの中には似つかわしくない、雨上がりのような土の匂いは律葉の心を静かに取り乱せた。
「足元を見ると…うん、やっぱりエレベーター。てんじょうは…ボタンが、ない。」
あ、気持ちいいなあなどとのんきなことを考えながら、静かに混乱する。チン、と聞きなれた音が聞こえると、エレベーターの扉は静かに閉じて、まるで煙のように消失してしまった。
「え、どういうこと??」
ひゅうう、と音を立てて突風が吹き、同時に黒い影が頭上を横切る。
「わぁ‥‥」
甲高い鳴き声とと共に、金色の鳥が群れを成して飛んでいく。思わずぼうっと見とれていると、見たことのない青緑色の花が一面に咲いている花畑に出た。
青い花の絨毯は見渡す限りどこまでも続いていて、やや離れた場所に小さな川が流れているが、なぜかその向こうは霧がかかって何も見えない。
あまりに見慣れない景色に、しばし茫然自失状態だったが、突然覚醒して腕時計を見た。
「時計…止まってる、スマホも…消えてる」
冷静を装いつつも、内面はがくがくしている。
服装と持ち物は変わらないのに、自分が今どこで何をしているのか確認する術がない。
(いいえ、おかしいっていうか、変。私はもしかして死んでしまって、ここはあの世なのかしら。ほら、向こうに河も見えるし、もしかしてあれは三途の川?)
すると、遠くに見えていた三途の川らしき場所に一層の黄金に輝くボートのような小型の船がやって来た。
「…なんとメルヘンな世界」
よく目を凝らしてみると、そのボートにはどうやら人が乗っているらしい。
「あ‥‥にんげ」
言いかけて、やはりためらう。
人型をしているけど、何かが違う。耳が尖っていて、律葉が好きな小説やゲームの中から飛び出してきたような、美しい女性。その異様さは、律葉の不信感を煽る。
「こんにちは!!」
「?!」
しかし、そんなことはお構いなしといった具合に、その美しい女性はにっこり微笑んだ。
メリハリのついたゴージャスなスタイルに、腰まで伸びた白い絹糸のように、長く美しい髪の女性。薄布一枚で大事なところはしっかり隠されているが、下品さのようなものを一切感じないから、不思議なものだ。
(きれい…)
凡庸な感想を抱きつつも、こくこくと頷く。
すると女性は大きな目を更に瞬き、興味深げにこちらを見た。
「あら!…珍しい恰好。あなたはどこから来たの?」
「どこからって…に、にほん」
「にほん?!そこがあなたの世界?」
「セ、世界?」
世界というスケールの大きい単語に、何となく嫌な予感を感じる。
「私の名前は、アリアドネ…私が紡ぐ糸は、全ての世界と場所につながっているの」
「ありあどねさん…ええと、その、ここ こここは、ど、どこでしょうか」
「ここはね、ビフレスト…世界と世界を繋ぐ時空の世界なのよ」
「じくうのせかい」
これは夢だろうか。それとも実は交通事故に遭って、病院のベッドで寝ているのかもしれない。
あまりの情報量の多さに、律葉の脳は理解が追い付かない。
「あ――…あはは、私の知らない世界 です ねっ ?」
「そう!よくわかったわね!!アナタは、選ばれたのよ?」
「え?」
「神様の実験に!!」
実験という言葉を聞き、思わず後ずさる。
―――耳が痛い。
「すみません、すみません」
「謝ればいいってもんじゃないからさあ…そういうの良くないと思いますけど」
「ごめんなさい、何時も迷惑かけて…」
「はあ、もういいよ」
この会話、今まで何度も繰り返したことだろう。
上司が去っていく気配を感じるまで、汚れた黒いカーペットの床面をじっと見つめていた。
彼女の名前は、前原 律葉(28)。
大学卒業後、就職してから丁度4年目の新人…とは言えないが、中堅…とも言えない微妙な立場にいる。
残業時間は30時間超えるのは当然、一人の仕事量が半端なく多い上に、退職者が後を絶たない。
そんなブラックところかダークネスな会社になぜ4年もいるのかというと…単純に、やめる勇気がなかったからである。
(すみません、て私が悪いわけじゃないのに。口癖になっちゃった)
そんな自分がどうしようもなく情けないような、苦しい気持ちでゆっくり顔を上げる。
いつの間にか、手に力が入っていたのか、握った手のひらに爪痕が付いていた。何となくそれをぼうっと見つめていると、ころりと飴玉がひとつ転がった。
「…?」
「顔、あげなって!また怒られたの?」
恐るおそる顔を上げると、爽やかという言葉がぴったりの笑顔に思わず目がくらむ。
「井上君…」
「前原さん、謝りすぎだって。ほら、もっと自信をもって!」
「…ありがとう」
飴を寄越したこの青年は、律葉よりも二期下の上司である。
明るく人懐こい性格と気安い対応で、誰にでも声をかける。会社に友人すらいない自分にまで声をかけてくるので、そういうところが出世する人間の特徴なんだろう、とリツハは思っている。
しかし、時にはそういう光属性の人間が苦手な者もいるのまた事実。
(よくやるなあ…でも、できれば関わりたくない)
律葉はぺこりと頭を下げて足早に去る。
生まれながらの引っ込み思案に、優柔不断な性格。ただ、真面目さが災いしてか、今まで無遅刻無欠席という快挙を成し遂げている。
そんな性格を見透かされてか、中途半端な雑用、変なクレーム案件の処理…厄介な雑務は、いつの間にか律葉が担当となってしまった。
そして、ケチをつけ、上司は文句言ってすっきりプチストレス解消…がルーティンだ。「多少強く言っても、こいつ辞めないだろ」という魂胆が透けて見える。
(そんなのモラハラじゃん…でも。ああ、もう本当にこういう時自分は意気地がなくて嫌になる)
突如隕石が空から降ってきて、世界が滅亡してしまえばいい。
今の律葉はどうすれば会社に行かなくて済むようになるのだろう、と本気で考えることもある。
「はあ…つかまらないうちに帰ろう‥‥」
中途半端に残れば、また妙な雑用を言われてしまう。
鞄と上着を取りに事務所に戻ろうとすると、唯一の通り道である事務所の入り口で話し声が聞こえた。
「井上さー、随分根暗眼鏡に優しいじゃん」
「!」
そっと壁側に寄り、隠れる。
(…嫌なタイミング。根暗眼鏡って…)
律葉は、生まれつきのど近眼の為、度数が分厚い眼鏡は必須である。
どうにか改善しようと眼鏡をコンタクトに変えてみたりもしたが、不慣れなコンタクトに四苦八苦し、途中で挫折してしまった。
せめて髪色だけでも明るくしようとしても、髪はメラニンが濃すぎてうまく染まらない。…この体質は、子供のころから抱えている劣等感でもある。
今更ど金髪にしたとて、気が違ったのか思われるだけで、結局改善には至らないだろうと思う。
「いやーだってさ、いっつも俺らの仕事やってくれてるし、ご褒美上げないと」
「ご褒美ねえー?」
(ああー、もうやだやだやだ)
早く帰宅したい心と、なるべくなら関わらずに済まないかと考える心がせめぎ合う。いっそ駆け抜けてやり過ごすべきかとも考えていると…話は思わぬ方向に進んだ。
「でも、ああいう女って勘違いしそうじゃない?重そう」
「それならそれで…まあ、けっこう胸元は悪くないし?でも、俺の心は皆のものだけどね~」
「!」
その言葉を聞いた瞬間、律葉はふと我に返った。
(なんて上から目線…)
「どうすっかな~いっそ、声かけちゃう?オレ落ちる方に1万!」
「いやーああいうカタイお嬢様は、めんどくさそうだしさあ」
「…は?」
思いがけず声が出て、慌てて口元を抑える。
「でもさ、そう言う固めの女って、面白いくらいコロッと落ちたりするかもよ?」
「それはそれで…好きなように教育できるのも悪くないよな」
―――何言ってるんだろう、こいつ。私があんたごときに惚れているとでも本気で思っているんだろうか?
と、喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込む。
残念ながら、彼がそういう人間だというのは以前からリツハは見抜いていた。人の顔色を窺うのが慣れたせいか、良くも悪くも空気と人間性を見抜く力は確かなのである。
徐々に話は下世話な方向へと進んでいく。
いつもなら耐えて終わらせるところだが、今日はなぜか違った。
(人間って、ストレスが過ぎると何もかもどうでもよくなる日が来る‥‥って誰かが言ってた)
そう思うと同時に、体の底から嫌悪感のような物が沸き起こり、勝手に足が動いた。そして…わざとヒールのかかとを鳴らして彼らの元へ一目散に向かっていく。
その音を聞いてぎょっとした彼らだったが、顧みず飴玉を胸元に突き出した。
「これ、いらない」
「あ、ああ…ええと、」
思わずのけ反る井上だったが、半ば押し付けるようにして胸元のポケットに放り込む。
「私、甘い物嫌いなんだ」
「そ、そお?」
ひきつった笑顔で受け取ったのを見届けると、一度ひと睨みし踵を返した。
胸を張り、前を向いて颯爽と律葉は自分のコートと鞄を持ち出し事務所を後にする。
「あ!ちょうどよかった!前原さ」
「お先に失礼しまーす」
「え…あ」
デブの上司をシカトしつつ、ずかずかと歩いていくと、入り口前の男共がさっと道を開ける。ぽかんと間抜け面をしている二人の間を通り抜け、くるりと右に曲がり、エレベータのボタンを押す。
確実に閉じたのを確認して…リツハは一人、エレベーター内に座り込んだ。思わず口元が緩む。
「ふふ…いえた。やった!言えるじゃん私……!!!よっしゃあ!」
ぐっとこぶしを天に向かって突き上げると…同時にぱあっと辺りが白い光に包まれた。
「へ?」
電気でも切れたのか?
ふと上を見上げると…そこには、一面の青い空が広がっていた。
「…エエト、アレ?」
茫然としていると、銀色の扉は当然のように開き、律葉に降りろ、と急かす。
一歩踏み出すと、爽やかな風が頬を撫でる。都心にあるオフィスビルの中には似つかわしくない、雨上がりのような土の匂いは律葉の心を静かに取り乱せた。
「足元を見ると…うん、やっぱりエレベーター。てんじょうは…ボタンが、ない。」
あ、気持ちいいなあなどとのんきなことを考えながら、静かに混乱する。チン、と聞きなれた音が聞こえると、エレベーターの扉は静かに閉じて、まるで煙のように消失してしまった。
「え、どういうこと??」
ひゅうう、と音を立てて突風が吹き、同時に黒い影が頭上を横切る。
「わぁ‥‥」
甲高い鳴き声とと共に、金色の鳥が群れを成して飛んでいく。思わずぼうっと見とれていると、見たことのない青緑色の花が一面に咲いている花畑に出た。
青い花の絨毯は見渡す限りどこまでも続いていて、やや離れた場所に小さな川が流れているが、なぜかその向こうは霧がかかって何も見えない。
あまりに見慣れない景色に、しばし茫然自失状態だったが、突然覚醒して腕時計を見た。
「時計…止まってる、スマホも…消えてる」
冷静を装いつつも、内面はがくがくしている。
服装と持ち物は変わらないのに、自分が今どこで何をしているのか確認する術がない。
(いいえ、おかしいっていうか、変。私はもしかして死んでしまって、ここはあの世なのかしら。ほら、向こうに河も見えるし、もしかしてあれは三途の川?)
すると、遠くに見えていた三途の川らしき場所に一層の黄金に輝くボートのような小型の船がやって来た。
「…なんとメルヘンな世界」
よく目を凝らしてみると、そのボートにはどうやら人が乗っているらしい。
「あ‥‥にんげ」
言いかけて、やはりためらう。
人型をしているけど、何かが違う。耳が尖っていて、律葉が好きな小説やゲームの中から飛び出してきたような、美しい女性。その異様さは、律葉の不信感を煽る。
「こんにちは!!」
「?!」
しかし、そんなことはお構いなしといった具合に、その美しい女性はにっこり微笑んだ。
メリハリのついたゴージャスなスタイルに、腰まで伸びた白い絹糸のように、長く美しい髪の女性。薄布一枚で大事なところはしっかり隠されているが、下品さのようなものを一切感じないから、不思議なものだ。
(きれい…)
凡庸な感想を抱きつつも、こくこくと頷く。
すると女性は大きな目を更に瞬き、興味深げにこちらを見た。
「あら!…珍しい恰好。あなたはどこから来たの?」
「どこからって…に、にほん」
「にほん?!そこがあなたの世界?」
「セ、世界?」
世界というスケールの大きい単語に、何となく嫌な予感を感じる。
「私の名前は、アリアドネ…私が紡ぐ糸は、全ての世界と場所につながっているの」
「ありあどねさん…ええと、その、ここ こここは、ど、どこでしょうか」
「ここはね、ビフレスト…世界と世界を繋ぐ時空の世界なのよ」
「じくうのせかい」
これは夢だろうか。それとも実は交通事故に遭って、病院のベッドで寝ているのかもしれない。
あまりの情報量の多さに、律葉の脳は理解が追い付かない。
「あ――…あはは、私の知らない世界 です ねっ ?」
「そう!よくわかったわね!!アナタは、選ばれたのよ?」
「え?」
「神様の実験に!!」
実験という言葉を聞き、思わず後ずさる。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件
fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。
チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!?
実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。
「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる