元社畜系女子が人生フルベッドで運命ガチャを回してみたら~美女の人生は一度でいい。~

いづか あい

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第1章 人生、終わった

第8ガチャ 運命ガチャ④5秒だけって、そんなのあり?!

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「ひだり、よし、みぎよし。と」

曲がり角に差し掛かったころ、私は壁にぴたりと張り付き、様子をうかがう。
…気分はさながらスパイ映画のエージェント。足音を立てないように抜き足差し足で歩いていく。
夜のお邸というのはどうも不気味でちょっと怖い。時刻は真夜中、だいぶ眠たいけど、私にはやり遂げなければならない目的があるのだ。
――それは昨日の事。
この邸に来た子供たち二人…ケディとフォーレと邸を探検中、この本邸の奥まったところに、ある部屋を見つけた。
それが…母リアーナの、寝室だったのだ。
ただ、部屋は嗅ぎかかっていてはいることができなかった。だからこそ…例の「マル秘アイテム」とやらを使ってみよう、と考えたのである。

メイド達の情報によればリアーナは元々伯爵と夫婦で同じ部屋を使っていたらしいが、ある時から体調を崩し西側の部屋に移動したという。
彼女たちの噂ベースで読みとれる内容は、母リアーナの死はどうも、不自然なところが多いということ。
このリッハシャルの記憶をたどっても、母との記憶は3歳くらいの元気だったころの記憶ばかりで、5歳の…それこそ晩年の頃の記憶はいくら思い出しても見当たらない。子供だからか、母の死因は「病気」と聞いてはいたけど…一体晩年どういった様子だったのか、何の病気を患ったのか…など、知らないことが多い。

(つまり、何らかの理由でリッハシャルはこの時すでに孤立していた。唯一の味方の母との関わりさえ失っていた、そう言うことになるのかな)

…心理学なんて知らない。
けど、幼少の頃の辛い記憶は大人になっても残るという話を聞いたことがある。それが、リッハシャルにとって計り知れないほどの「孤独」なのだとしたら。
 別に、5歳の子供で何かができるわけじゃない。でも…彼女が訴える事だけは、他でもない私が少しでも理解できるかもしれないと思ったのだ。
さて…こっちの方角であってたと思うんだけど。

夜だと雰囲気が違って、道もよくわからなくなってしまう。しかも、このお邸、本当に広くて迷路みたい。

(ここ、こっちでいいんだっけ??アレ??)

そして、案の定…迷子になってしまった。

「!」

すると、遠くの方で、足音が聞こえた。

(誰かいる…?)

いっそ道に迷っちゃった☆などとほざいて誤魔化そうかと思ったんだけど。
…その人影を見て、思いとどまる。

(あれ?!…あいつ、厨房にいた…クッキーを粉々に踏んづけた奴!!)

そいつが…なぜ、こんな時間に本邸に?

「……うーん…」

ちなみに、このルドヴィガ伯爵邸は全部で東館、北館、南館に分かれている。
一番日の当たる東館に住むのは、伯爵とその身内…今はお母さまは不在なので、伯爵と私と、ロザベーリ夫人のみ。まさか伯爵に用があるでもないし?
そうなると…夫人に用があることになるんだけど。

(ええ…まさか、ねえ?)

こんな時間に用がある大人なんて、悪巧みの相談かもしくは。

「こちらへどうぞ」
「ああ」

好奇心には勝てず、そっと様子をうかがう。
扉から顔を出したのは…多分、ロザベーリの専任メイド…ってことは。

「…遅かったじゃない」
「まあ、そう言わないで……」

ん?!この声…はやっぱり。
しかし、扉はバタンと閉じられ、中の音はおろか、様子をうかがうことは不可能だ。

ここで、ありえない糸が結びついていく。
だって、リッハシャルが6歳になる頃、弟が生れて…そこから父とはさらに疎遠になって、ロザベーリが力を持つことになるわけで。
でも、現状父とロザベーリの中は不仲で…となると。

(え?嘘でしょ。まさか…これから生まれる未来の弟って、もしかして)

…その後は、もう、限界を迎えて私は自室に戻ったのだった。

「お嬢様!顔色が良くありませんわ!」

ルルが心配そうにこちらを覗き見る。
昨日の夜見たものが、衝撃的過ぎたせいだろう。

(あまり寝れなかった…)

「うん…だいじょうぶ」
「それならいいのですが…今日は、奥様のお墓参りでしょう?黒い服をお召しに?」
「うん、お願い…」

お母さまをはじめとする、ルドヴィガ家の代々のお墓は、伯爵家の敷地内の西側の森のにひっそりと建つ。
当初は、身分やらなんだかんだを理由にして、お母様が一族内の墓に葬られるのが反発していた連中もいた。
けれども、伯爵は譲らなかった。

(本当に、二人は愛し合っていたんだよね…)

それを考えると、ロザベーリが少しだけ不憫に感じた。

「へえ…広いんだね。伯爵家って」
「!」

不意に声をかけられ、肩が跳ねた。
そう言えば…今日はエイデン家のご一行もいるんだった。
話しかけてきたのは…黒ドレスの令嬢・ケディの方。

「大丈夫?…顔色がよくないよ」
「え?あ、うん 平気」

(なんか、昨日と少し雰囲気が違うような…てか、距離近)

このケディは私との距離がやたら近い。今もほら、ぴったりと私の横に並んで立って…もしかして、私の反応を量っているの?

「どうしたの?」
「あ…ええと」
「…ケディ、近すぎ」

すると、後ろにいたフォーレがケディの方を掴んで後方に下がらせた。

「フォーレ!」
「なーに?いいじゃない、別に」
「よくない!…ほら、行くよ。君も」
「はい…」

(な、何だろう?なんか変だよね??)

遅れてやってきたのは、フォーレ。
佇まいからして、育ちの良さがにじみ出ている…なるほど、これが生粋の令息というものなのか。
さて、このケディとフォーレ…この二人のどちらかが、予想通りあの処刑前夜にやって来た『大公様』となるのは確定事項のようだけど、一体どちらが来たんだろう?
肩まである金髪に、くりくりの紺色の瞳。実はこの二人、着ている服がドレスかそうじゃないかの違いで、顔は瓜二つ…つまりは、一卵性双生児のようだ。
何となくさっと身を引くと、フォーレの表情は少しだけ曇った。
うーん…何か、気に障ることでもしたのかな??

「…ほら、手」
「う うん」

昨日は勢いで一緒にいることができたけど、私自身子供になり切れていないせいか、あんな子供とどう付き合ったらいいのかよくわからない!
それに…何かこう、昨日と今日で妙な違和感があるせいか、無意識に警戒してしまう。

「どうした?リッハシャル」
「あ…お父様…あの」
「エイデンの二人とは…その、どうだ?」
「え?」
「こう…一緒にいて楽しいとか、頼れるとか」
「??よくわかりません…けど」

私の回答が望んでいたものと違ったのか、伯爵は微妙な表情で何かを考え込むような表情をした。


「いや、うん…まだ二日だからな」

二日…というのは、どういう意味だろう。

(なーんか…怪しいよね?)

そして…滞りなく、墓参りは終了して、帰路につく途中の事。
私は夢を見る。


(…!)

ざあ、と風が吹く。
頭に被さったベールが飛ばされないよう、夢の中の私はそっと頭を押さえた。

(ベールをかぶってる、ということは…これ、もしかして)

「…なぜ、あんなことを?」
「私じゃない…私、何もしてない」

低く、鋭い声。
顔をあげた途端目に入ったのは…夜の月明かりに、金色の髪が良く映える。こちらを非難するように見つめるその男性は―――処刑前夜に来た人と、同じ人?

ぽろぽろと涙がこぼれる。
これは、どういう場面なんだろう?

『…続き、気になりますよね』
「そりゃ、気になるけど…」
『じゃあ、ガチャを引きますか?』
「?!!」

この甲高い声は…例の喋る羽根つきガチャ!

「あああ あんた…!」
『ボーナスターイム!!!今だけ限定!!過去の映像を体験できるちゃう特別ガチャ!!さあ、引きますか?!』
「過去の映像って…この場面の続き?」
『カウント開始!じゅーう、きゅうー」
「やります!!そのガチャやる!!!」

こういう時は即断即決!!
空を飛び回る羽根ガチャ機を両手で掴んで、思い切りレバーをひねる。
眩い光と共に飛び出したのは、黄金の卵。

「よっしゃゲットぉ!」

勢いでそれをこじ開けると…出てきたのは。

『ありゃ―残念!ノーマル過去の映像五秒だけ見れますよ、券です!』
「ご…五秒?!」
『では、さあ行くよ!』
「も、もう行くの?!わあ?!」

びゅう、とまるでジェットコースターのように体が浮き上がる。
この五歳に巻き戻ったのと、同じ感覚だ。
一気に視界が白く染まり、やがて様々な色が浮かび上がる。そうして…浮かび上がった先の場所は、どこかの庭園。色とりどりの薔薇が咲き乱れ、ガラス張りの窓から光が差し込む。

(これは一体どこの映像になるのよ?!)

「誰…?」

現れたのは、まるで空の色をそのまま映したような髪に、銀色の瞳。ぱちぱちと、二、三度瞬きこちらを見る。
な、何この美形男子??
誰?!答えるべきか否か悩んでいると…彼は、口の端をあげ、なんとも意地悪そうに微笑んだ。

「ふうん…君が」

え。何これ、こいつ性格悪そう。
そう思ったと同時に、劇場で行われていた演目が終わりを告げるように、天幕が落ちた。

「は!!」
「?!…大丈夫か」

思わずたらりと垂れたよだれを拭き、しばらくぼうっとする。

(あれ?ひ、膝の上…)

「…よく、寝ていたな」
「お。お父様」
「…シャル」

呼ばれて、はっとなる。

「こう、呼ばれるのは、嫌か?」
父は、どこか気まずそうに視線をそらした。

「…ううん」
「その、エイデンの二人が…そう呼んでいたから。少し、羨ましくて」

…羨ましい、だって。
胸の奥がじんわりする。

「へへ」

そのまま、父の膝の上に座ってみた。
すると、まんざらでもなさそうな様子で私を支えてくれる。

「怖い夢でも見たのか?」
「ううん……忘れちゃった」

そう、何か大事な夢を見たような気がするのに。
ただ、最後に見た性格が悪そうな綺麗な顔の男性だけは、記憶に残っていたのだった。

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