元社畜系女子が人生フルベッドで運命ガチャを回してみたら~美女の人生は一度でいい。~

いづか あい

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第2章 あれ、人生やればできるかも?

第18ガチャ そして始まるペナルティ 【SR: 継続的な精神的疲弊券】

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「新入生?」

「あ、はい…」

「ふうん…」



(あ、また)



今日で何度目だろう。

よほどこの学校の人たちはこの黒い髪が珍しいのだろう。不躾にじっと見つめる人も多く、まるで珍獣になった気分だ。

しかも、先ほどの騒動も相成って一躍注目の的。

ああ、これはこの学園生活…友達はできなさそうね。



「あら、あなら」



ほら、また



「とても綺麗な髪ね」

「!」



思わず振り返ると…そこには、燃えるような赤い髪の先輩らしき人が私をじっと見ていた。同じようなシンプルな制服を着ているはずなのに、この人からにじみ出る気品のような物は先ほどのエルメア嬢とは比べ物にならない程。

張り付いた笑みは仮面のようで、素顔がうかがい知れない不気味さがある。



(赤い髪…ということは、この人)



このアズレア王国に置いて、赤い髪の家系は一つしかない。そう…【ヴァラモ家】だ。



「ごきげんよう。…ルビエル=ヴァラモ令嬢」

「あら。私の事をご存じでいらっしゃるのね?…さすが、ルドヴィガ令嬢」



分かってて声をかけたな、こいつ。

この高圧的な雰囲気は、幼少の頃一度目にした覚えがある。

継母ロザベーリの家であるあの家門は、このアズレアを裏で支配していると言っても過言ではない。彼女たちは美しくあれ、と教育され力のある家門に嫁ぐのが宿命だという。

現在の直系分家はいくつかあるけど…ここまで鮮やかな赤い髪は、ヴァラモ直系の末娘…ルビエル嬢しかいない。



(ええと、確か、このほか私が在学中に遭遇するであろうヴァラモ家は…いた。もうひとり)



「ルビィ、誰と話しているんだい?」

「あら、お兄様。…この方、リッハシャル=ルドヴィガ嬢。勿論ご存じでいらっしゃいますわよね」



やって来たのは…来期で卒業するというルビエル嬢のすぐ上の兄君。

これまた見事な燃えるような赤い髪で、天使が現世に舞い降りたと噂される超絶美形の公子様だ。そのほほえみをひとたび見た女性は皆虜になり、沼にはまりまくるという…。



「ご紹介に預かりました、リッハシャル=ルドヴィガと申します」

「…うん、いい所作だ。僕はセフィール=ヴァラモ…会えてうれしいよ、リッハシャル。」

「!!」



なんとも甘いとろけるような微笑み…なんだけど、私の後ろの女生徒たちがみんなその光に当てられているだろう。「あっ」とか「うぅ」とか、うめき声も聞こえるし。



(私からすればこの人たちは関わりたくない人たちの集まりだわ)



「光栄にございます。…それでは、失礼いたします」

「あ…」



ここは逃げるが勝ち、とばかり私はそそくさと退場する。





「ふうん…いいね。あの反応」

「あら、お兄様ってば…本当に美しくもとげのある花がお好きよね」

「ただ美しいだけでは枯れてしまうばかりだからね…あれくらい、ではないと」



そう言って、セフィールはいつまでもリッハシャルを見つめていたが…当の本人は知る由もなかった。



(あー…もう、なんか味の濃い連中ばっかりいるわ。胸やけしそう)



もう誰かと友情をはぐくむのは絶望的かな。

とりあえず、大人しく穏便に目立たず空気のように過ごそう…そう誓った。

その後、式は滞りなく終了したもの、私は帰る頃、あることに気が付いた。



「!リボン…外れてる」



そう言えば…もうすっかり忘れてたけど、朝のガチャで「落とし物に気をつけろ」って言っていたのは、このことかもしれない。



「くぅう…~ガチャめ」



本当に、あのガチャは一体いつまで強制的にひかされ続けないとならないんだろう?

一生続いて、運に振り回されるのは御免だ。

でも、実際アレの正体も分からずじまいだし、これまた調べようがないわけで。一度、ガチャをとっ捕まえてハンマーで壊そうとしたことがあったけど、結局逃げられてしまったのだ。

以来、奴はガチャを引かせたらとっとと羽根をばたつかせ、逃走してしまう。

それがまた、人間らしくて…とても気持ちが悪い。



(はあ…それよりリボンどこ行ったんだろ)



「うーん…一度来た道を戻ってみて…」

「ねえ、君」



…また、か?

今日は何度も知らない人に声を掛けられる。あまり、いい気分ではない。

振り返らずにスルーしようかとも考えたけど、そう言うわけにもいかないので振り返る。



「なんですか…」

「コレ」

「!」



さら、と銀色の刺繍が太陽の光を反射させる。



「君のリボン?」

「!そ、そそうです!」

「はい。…そこに落ちてたよ」

「ほんと?よかったあ…!」



ん?でも彼が指さす場所、先ほど探したばかりだったような気がするけど??



「大切なモノ?」



(あれ?会話が続くの?)



「あ、はい」



私が顔をあげると…茶色の髪の男性はにっこりと笑って見せた。

タイが翠…ということは、一学年上だ。



「…?」

「ごめん、じゃあ気を付けて」

「あ。は、はい…?」



くるりと彼は背を向け、そのまま歩き出す。

連続して面倒くさい声のかけられ方をしていたから…あまりにもあっさりしていて、なんだかとても印象に残るような、そんな気持ちで後姿を見送った。



「……うん。帰ろ」



こうして、怒涛の入学式が終了した。

できればもう少し、フォーレとケディと話したかったけれど…この貴族社会の縮図みたいな学校内では、それも難しいかもしれない。



(身分とか爵位とか…くだらないって思う私は、やはり生まれた場所が違うからかもしれないな)



この学校に入学するにあたり、ルドヴィガ家ではお父様が直々にある教育をしてくれた。

それが…ざっくり言うと、「貴族社会の中で、荒波にもまれてもいけていけるサバイバル術」だった。



「さて、シャル。我がルドヴィガは、由緒ある家柄ではあるが、爵位は三位…よく言えば中間、悪く言えば、上の下、となる」

「上の下…って、なんとも無理やりな区切りですね」

「仕方なかろう。下位二爵からすれば、上位階級の仲間入りとして見られ…上位二爵から見れば下位の仲間入り、だからな。だからこそ、究極はどちらにもなびかず、独自の地位を確保することができる、という利点もある」

「た、確かに」



お父様の話はこうだ。

貴族の集団の中では、常に俯瞰し渦中にならないように努める事、噂を信じぬこと、同様に何かを知っても見て見ぬふりを貫き、常に中立としての立場を忘れぬように振る舞え。と言うことらしい。

そして、それを遂行するために、と…私は約三か月ほど時間をかけ、全ての爵位の貴族の名前と家門の形、今回入学するにあたり、遭遇するであろう大貴族をピックアップし、完全に覚えるという地道な作業を続けたのである。



(あの日々は辛かった…)



ある程度、不自由さの中で自由に生きていた現代生まれの私は、やはりこの世界と見えない剥離のようなものを感じることもある。

それが少しだけ、寂しく感じたりするのであった。



そして次の日。



「あーら!まさか同じクラスだなんて!」

「ええ…本当に」



教室に入ってすぐに私の目に飛び込んできたのは、ずらりと並んだ取りまきと、その中心にいるカレンシアの姿だった。



(まさかの同じクラスになってしまうとは。うわー毎朝このウザがらみが続くのかあー)



とりあえず、適当にやり過ごして、目立たないところに座るとしようか。と思い、一番奥にある窓際の席を見ると…先客がいた。すると、その子と目が遭う。



「!!」

「?」



(あれ?よく見れば…この子、私が知ってるアズレアの貴族の中にいない子だ)



困りマロ眉…という感じの眉に、緑の瞳。髪は金色だけど…なんだか違和感がある。

生え際が黒く見えるのは気のせいだろうか?



「あの…」

「ひゃっ」



え?ひゃあ?

その子は、目をぐるぐる回し教科書で顔を覆ってしまった。



(取り付く島もない…)



もしかして…異国の、留学生だったりして?!

ドキドキと高鳴る胸を押さえつつ、声をかけようとしたのだけど…完全拒否といった感じで、声すらかけられない…。



(うん、機会があれば…)



『運命ガチャを引きませんか?』

「!!」



突如、開いた窓から例の羽根つきガチャがやって来た。

今は授業中だし、無視を決めてやろうと、目をそらしたままでいた。すると…突然ガチャは赤く点滅し始める。



「…なに」

『この運命ガチャは拒否できません。拒否の場合はペナルティの対象となります」



(ペナルティ…って、そんなの、今までなかったはず。どういうこと?!)



『それでも、このガチャを拒否しますか?』

「……」



いや、いっそ、ここで一度試してみるのもいいかもしれない。



『拒否をするんですね。では、強制的に一番バッドなガチャ玉が排出されます』

「!?ちょ…どういうこ」

『パンパカパ――ン!残念!正真正銘最悪・SR:継続的な精神的疲弊券げっとーぉ☆』

「な…ちょっと!」



け、継続的な精神的疲弊って?!

あまりにも恐ろしい言葉に身震いする。



『では、あなたの健康と無事をお祈りしまーーす!』



そして…ガチャは去っていった。

同時に、排出されたチケットも同様にビリビリに引き裂かれ、空中に消えていった。

それから、その放課後。

私は、このガチャの意味を身をもって知ることとなる。



それが―――



「あなた、気に入らないわ」

「……」



想像を絶するほどの、お貴族様たちのいわゆる『いじめ』だったのだ。

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