まったり異世界観光 ~観光チートで異世界を楽しみつくす~

にしん

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「らっしゃい」

出迎えた野太い声の主は、強面の大男。
鍛え上げた身体はカウンター越しからでも、歴戦の迫力を醸し出して、威圧感を放っている。
寡黙な職人タイプの店主。
コイツは期待できそうだ。

「ウチは一品しかやってないが、大丈夫かい?」

そう言って壁掛けのメニューを示す。
メニューには、煮込み。客席から見える大鍋をみた感じ、トマトベースのスープっぽい。

(あぁ、そそる匂いだ)

了承の意を示し、頷く。

「今日はワイルドボアのモツ煮込みだ」

いいねぇ、煮込み。
酒に良く合いそうだが、さすがに朝から飲む気はないので、定食で注文する。
定食にはパンとピクルスがついてくるみたいだ。

「無料で大盛りにできるが、ウチの客は冒険者が多いから、普通でも量が多めだ。どうする?」
「じゃあ普通の方で」
「あいよ」

大きめのパンを2切れほど、焼き台で炙って焦げ目をつけながら、その間に大鍋から深めの皿に煮込みをよそう。
煮込みの皿に刻んだ香草をかけて、焼き上がったパンと共にトレイに乗せる。
熟練の流れるような動きで、前のカウンターから――、

「はいお待ち」

注文してから、あっという間の提供完了。
この早さもグッドだ。
ちなみにピクルスは目の前にある卓上の壺から取り放題。
何種類かあるので、全種類ひとつづつとってみるか。
色とりどりのピクルス、そのうちのひとつをパクりといってみる。
これはパプリカかな、爽やかな酸味にシャキっとした食感。
あっさりめの浸かり具合が野菜本来の甘味をより引き立てている。うまい。

これは本丸も期待大だな!
さぁお熱いうちに、いってみよう。

眼前には熱々で湯気を放つ、鮮やかな赤をまとった煮込み料理。
熱の入ったトマトとタップリのニンニク、そこに刺激的なスパイスの香りが加わった、暴力的に胃袋を興奮させる湯気。
具材は大きめのモツとクタクタに煮込まれた野菜、それとごろっとしたイモも入っている。
これで600イェンだとか。
そうとうにコスパがいいぞ、この店。

まずは、ぷりっとしたモツをスプーンですくい、そのままパクッと一口。
口の中にジュワっと脂のうまみが溢れて、トマトベースのスープと融合する。
処理が上手いのか、内臓の臭みはほとんどしない。

「うまい・・・」

思わず感嘆の声がもれる。
ここにエールでもあれば最高なんだが、こればっかりは仕方ない。
ならばと、さっと焼きめのついた固めのパンをひっちぎりスープにたっぷり浸す。
そして、すべてのうま味を吸い込んだ塊をいただく。
下品だがこれがいい。これでいい。
固く焼き締めたいかにも安っぽいパンだか、ライ麦の強い香りが、煮込みの味の強さと上手く合わさっていて、ベストマッチだ。

「パンのおかわりが必要なら言ってくれ」

なんと、おかわりまでオッケーなのか。
これは若い冒険者たちに人気のはずだ。
でもおかわりは止めておいた。
普通盛りでも十分な量あるから、これ以上は食いきれなくなる。
とりあえず、今は目の前の料理を味わい尽くそう。

煮込み、パン、煮込み、パン、ピクルス、煮込み。
まるでティーンのように、目の前にがっつく30前のおっさん予備軍。
ただ、このウマさは食べるのを止められない。
一気に食べ尽くしたい。
そんな料理だ。
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