まったり異世界観光 ~観光チートで異世界を楽しみつくす~

にしん

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俺が連れてかれたのは、鬱蒼とした雑木林の中にある小さな水溜まり。
そこに汲み取り用の魔道具が設置してある。
仕込みの時期になると、空間魔法で汲み取り口を酒造内と繋げて利用するのだそうだ。
すごいハイテクである。
そして水溜まりの傍には、小さな膝元ぐらいまでの大きさの古い祠。
それ以外のものは何もない、極めて寂しい場所である。

「正直、意外でしょう?」

サダヨシさんの言葉につい、頷きそうになる。
確かにあれだけの酒を産む水なのだから、もう少し雰囲気のあるところを想像していた。
だが、実際に目の前にあるのは、なんていうか・・・ショボい。

「ですが、サイトさんならば、視れば解ると思いますよ」

楽しげに意味深なことを言うサダヨシさん。
とりあえずその言葉に従い、水溜まりを視る。た
だ視るのではなく、瞳に魔力を纏わせ、活性化させる。
これは鑑定や分析のスキルを使用するときのやり方。
こうやって対象を分析し、多くのの情報を得ることかできる。

「こっ、これは・・・」

鑑定用の魔力を纏わせて視た水源は、先ほど見たみすぼらしい水溜まりではない。
空気は清らかで、陰陽のバランスもいい。
妖精が寄ってきそうなくらいに豊富な水属性の魔力を持ちながらも、その他の属性も欠けてない。
ここまで完璧なバランスの水源というのは、どこを探してもそうそう見当たらないだろう。
ただ俺が驚いたのは、そういった水質うんぬんではない。
これと似たようなモノを、既に知っているからだ。
それは昨日の秘密基地の泉。
これに似ている部分を感じたのだ。

「これって、奥町の」
「そこまでお解りになりますか」

俺のその言葉に、今度は逆にサダヨシさんの方が驚いたような顔をする。
「ウチの酒造のルーツは勇者一族の分家で、もともとは奥町で身内向けに細々とやっていた酒蔵だったのです」

だが、ケーラルの発展と外でのケーラル文化ブームのおかげで、ケーラル酒の人気が沸騰し、需要に対して生産が間に合わなくなってしまった。
そこでサダヨシさんの曾祖父にあたる人物が、大規模な生産拠点を建設し、移転した。
それが現在の本町近くの場所である。

「本家の伝で王都の一流水魔導師に協力してもらい、奥町の水源とほとんど変わらない条件を持つ土地を探し出し、水の精霊様の一部に移住していただいたといいます。
 更には魔法的に様々な手を入れ、より酒造りに向く水が湧く水場へと造り変えていきました」

サダヨシさんの話を聞いて、納得がいった。

「確かに、いくらか人の手が入った感じがあります。あまりにも、全体のバランスが整いすぎていたので」
「今となっては、水源を新たに造り出す魔法やその周辺領域の魔法は失伝してしまっていて、今の水源を維持していくだけで精一杯でして」

魔法というものは個人特有のものが多く、ごく基礎的な技術以外は、その本人にしか使えないという場合も少なくない。
この水源を造った魔法も失伝して、今はそれをどうにか維持して使っている。
その維持にすら上級の水魔法使いの力量が求められるのだから、この魔法使いのレベルがいかに隔絶したものだったかが解る。
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