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しおりを挟む「サイトさんじゃないですか!?」
突然の再会に驚きの声を上げる女性冒険者。
「どうも。この間ぶりだね」
そう、ミクリさんに連れられてきたのは、行きの馬車で同乗したマリーとそのパーティーメンバー2人だ。
「あれ、お知り合いですか?」
ミクリさんが俺たちのリアクションを見て、不思議そうに聞く。
「ええ。王都からマゴットまでの馬車で乗り合わせまして」
「サイトさんの魔法にはだいぶお世話になったんですよ」
このパーティのリーダーで、剣士のマリー。実家が接客業のためか、人当たりも良く人間性も評価できる。
「クッキーおいしかったよー。ありがとね」
パーティメンバーの1人、ショートカットの元気っ娘斥候カリン。人懐っこいネコみたいな子。
「そう言えば、ケーラルで湯治をするとおっしゃってましたね」
おしとやかな黒髪ロングの回復術士ナツメ。勉強熱心で道中で魔法の意見交換などもした。
ケーラルが地元とは聞いていたけど、こんなにすぐに再会するとは思わなかった。
「マゴットに着いてすぐ、馴染みの商人から商隊の護衛依頼が急遽入って、休む間もなくこっちにですよ」
「あらまぁ」
「それでおとといこっち着いて。せっかく地元戻ったし、ちょっと休もうと思ったら、怖い地元の先輩に呼び出されて、働かされそうになっているとこです」
そう言って泣いたふりをするマリー。
「ちょっと!! 人聞き悪いわよ」
マリーの言葉を必死で否定するミクリさん。
いつもと違って言葉遣いも崩れているし、本当に近しい関係なのだろう。
「でも、じじつ」
「ですわね」
「――あなたたち、ちょっと黙りましょうか」
「「「はい」」」
悲しいことに、どんなに外で成長したところで地元の力関係ってのは絶対なのだ。
「お互いに知り合いなら、話は早いですね。今回の依頼、どうでしょうか?」
軽く再会の雑談をした後、ミクリさんが両者を見回して問う。
「俺は大丈夫ですよ。接した期間こそ長くないですが、冒険者としての実力もちゃんとあって、人格面もみんな真面目でいい子ですし」
「こちらとしても、今回の提案は元々メリットしかなかった上に、来てくれるのがちゃんとした人だったので、正直ラッキーって感じです。サイトさんの魔法の手際も見ていますし、前職の話も聞いてるので安心です」
俺とパーティを代表してマリーが答える。
別に100の信頼とは言わないが、お互いに変なことにはならないだろう程度の共通した認識を持っている。
冒険者をやっていると、この感覚はとても大事で、割と短い時間でもそういうとこはきちんと見る様になる。
彼女たちの仕事ぶりは、若いなりにもしっかりこなしてて、交流してても嫌なとこがなかったので、覚えていた。
「じゃあ決まりね。サイトさんの希望で契約とかはないので、今日はこのまま顔合わせで終わりです」
「解りました。あっ、サイトさん。この後明日の集合時間とか決めましょう」
「了解」
面倒なことはすっぽかしで、なぁなぁで話を詰めていく。休暇中の雑事なのでこの程度でいいのだ。
「そうそう。マリーたちは、この後リストにある用具や奉納品とかをもらってきてもらうからね」
「「「はいっ」」」
俺にとってはまさに物見遊山だが、彼女たちにとっては依頼料の発生する仕事。その分やることも多いが、これも経験だと思って頑張ってほしい。
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