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しおりを挟む「さーて、それじゃあ出発!!」
「「おー」」
休憩を終えて、登山の再開。少し休んだことで三人娘も元気いっぱいである。
ちなみに戦利品である肉は、それぞれの荷物の中へすっぽり収まっている。
現代の冒険者にとって、【パッキング】スキルは習得必須技術なのだ。
「これから先のエリアは、これまで以上に精霊の気配が強い清らかな霊地になる」
進みながら、この先の注意事項をレクチャーしていく。
「当然、魔物はいないし、侵入ることもできない。ただし、それで安全かといえばそういうわけでもない」
こういった霊地では、穢れた障気を糧とする魔物が生きていくことはできない。
その代わりというわけではないが、こういった霊地には幻獣が生息している。
幻獣とは、言うなれば動物型の精霊であり、穢れなき地でしか生きれない、普通の人間からしたら、まさしく幻の存在なのだ。
「幻獣は善良な存在ではあるが、それと同時に人智を超越した存在でもある。たとえ相手に害意が無くとも、こちらに被害が出るということも普通にあり得る」
要は実体を持った自然現象であり、なめたらアカンという話なのだ。
「当然、ケーラルの民であるみんなは幻獣については知っているね」
「はい」「もちろん」「当然です」
ケーラルの民にとって、幻獣とは信仰の対象であり、護り敬うべき存在。
当然、そこで生まれ育った三人娘にもその意識がしっかり根付いている。
「君たちは大丈夫だろうけど、悲しいことに世の中の大半の人間はそうじゃない。幻獣の希少価値に目を付け、捕獲しようとする人間もいる」
そのため霊地を持つギルドなんかは、その地に厳しい入場制限を設けたりしている。
今回、この三人にこの依頼が入ったのも、いくつかの段階を踏んだ調査の上で問題がなかったからだろう。
そうして今回のお試し依頼に至ったというわけだ。
■
山を汚す人間には、山が害する。
山に入る冒険者や狩人の中では、広く知られている考え方である。
獲物をとりすぎない。
木を伐りすぎない。
水を汚さない。
多少の殺生は自然の営みのうちであり、山からの恵みが平地での生活を潤す。
そういった共生が両者に繁栄をもたらす。
そう教えられてきた。
山と共に生きていく地の人間は、これを長い歴史の中で実地で経験し、それを教訓としてきた。
それがこの世界の山である。
そして霊地では、それがいっそう顕著である。
山を穢す行為を侵す者に対して、霊地は容赦なく牙を向く。
空気が澱み、方向感覚が狂わされ、自然全てが怨嗟の声をあげる。その結果、穢れが生じていく。
そして、穢れを受け入れた幻獣が魔獣へと転変する。
障気から生まれる生き物が魔物ならば、精霊より堕ちた獣が魔獣。
堕ちた分、魔物よりも凶暴な魔獣は人を害し、穢れを撒き散らす。
そして、その穢れから新たに魔物が生まれていく。
その魔物が山の生態系を崩し、山の恩恵を受ける地元の民の生活にも影響が出るようになる。
だからこそ、山に入る人間は、厳選しなければならないのだ。
これは前職のときに、耳にたこができるほど聞かされたし、実地で先輩方にバチボコ教えられた。
前職の秘境管理局は、きちんとした国家公務員なので一定の信頼性があり、地元の人たちもまず話を聞いてくれる。それはこういう環境の専門家として認識されているからだ。
もちろん、そこから山に入る許可を得るには、さらに地元と関係性が出来てからということになるが、そうやってきちんと管理するのは、未曾有の災害を未然に防ぐためにも必要なことだと思う。
「つまり、ここから先は人の領域ではなく、神秘の領域というわけだ」
三人娘は神妙に頷く。
「でも、臆する必要は無いし、気構える必要もない。山を愛する人間は山に愛される、といわれるからね」
そういう人間しか入れないようにしてるし、三人娘はそれまでの活動で、最低限のマナーは身に付いているとギルドから判断されている。
「要は、普段通りでいいということさ」
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