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「とりあえず、俺の後を付いてきてね。今回は霊地での歩き方を感じてくれればいいから」
「「「はいっ」」」
未知なる地を前にして、改めて気合いを入れる三人。
ここから先の道は、俺が再び先導していくことになる道が険しくなったとかはないが、気をつけなければならないことも多いのだ。
霊地での歩き方を示しながら、ついでにいくつかの素材の採集などを実地で見せていこうと思う。
そうやって登っていくと、だんだんと空気が変わってくるのがわかる。
「ここら辺までくると、かなり空気が違うのがわかる?」
「はい、なんか明らかに質が違うというか。どう違うかは解んないですけど」
「おいしい!!」
「魔力が濃い感じの空気と似てるような気がします」
「この空気を感じたら、そこはもう霊地に足を踏み入れている証拠だね」
本来、山の上の高地などは空気が薄いはずだが、この辺りの空気は、それを感じさせない位に空気の質がまったく違う。
マリーも何となくは感じてはいたようだが、魔法の習熟度の差でナツメの方がよりはっきりと感じていた。
ナツメの言う魔力が濃いという感覚は、実のところほぼほぼ間違っていない。
ただ、正確に言えば,魔力ではなく、源素が濃いというのが正しい。
源素とは、目に見えない超常的エネルギーの源泉みたいなものである。
魔力、霊力、神力といったものは、源素をそれぞれのチカラの性質に合わせて変容させているものなので、もとを辿れば全て同じ源素というルーツに行き着くのだ。
その豊富な源素を用いて、精霊が自ら造り上げる領域のことを、人は霊地と呼ぶ。
後、カリンの空気が清く澄んでいて、おいしいというのも、これはこれで間違いではない。
シチュや精神的要素も加わって、実際、うまいんだ。
これは登ってみればきっとわかる。
結局のところ、俺という人間はそういう楽しみが好きなので、苦労しながらも山に登ってしまうのだ。
「はい、ストップ! その足元にあるのがシズクタケだね」
道の脇の木々の合間、足元のうっそうとした草をかき分けると、そこには水のように、透き通った半透明のキノコが群生している。
その見た目から、目視での発見は極めて難しいこのキノコは、カサから発する微弱な水属性の魔力を察知しなければならない。
「うはー、スケスケだ」
珍しいキノコにカリンがウキウキで声をあげる。
「シズクタケは、高級素材の一つだね」
シズクタケは、豊富な滋養強壮成分があり、高い回復効果がある素材である。
シズクタケの煮汁を煮出した上で濃縮させると、それだけで上級回復薬並みの回復効果ある液体となる。
さらにシズクタケのスゴいところは、その回復効果に加え、他の素材との相性が抜群で、シズクタケ液を調合に加えると、他の素材の効果を損ねることなく,より高い品質の薬効が期待できるのだ。
「採るんですか?」
ワクワクを隠しきれない声でマリーが問う。他の2人も同じ様な目でこちらを見てる。
だが、彼女たちの期待通りにはならない。
「いや、今回はとらない」
「えっ、なんで?」
カリンが素の声を出す。
基本的に冒険者なんて、取れるものがあれば取れるだけとるのが普通だ。
あまりに成長してないものはさすがに見逃したりもするが、ここにあるシズクタケはしっかりと大きくなっている様にみえる。
「シズクタケはね、こうして群生しているんだけどね。成長しきった後、群生が一つの個体に合流していくんだ」
シズクタケは、空気中の水分を栄養に変えて成長する特性を持つ、水気の多い土地などに生息しているキノコの一種である。そこに豊富な源素を含んだ水分を吸収することで、生命力溢れる個体へと成長するのだ。
そんなシズクタケには独特の生態がある。
群生体の中で成長しきった個体が出ると、その個体が生命力を伴った胞子を空気中に放出し、繁殖していく。
胞子を出しきった個体は、群生の中に一つだけいる特殊個体に残りの命を託すように水のように触れ混じり、やがて合流する。
そしてその特殊個体だけは、胞子を排出する機能を持たない。
ただただその生命力を溜め込み続ける。
やがて、全ての個体が吸収された後にその個体が、人や獣に刈り取られることで、シズクタケの育った後の場所に収まりきらなかった分の生命力が氾濫し、その土壌が豊かになる。
そういったサイクルを理解し、採るべきものを採る。
それが大事。
「というわけで、今回はスルーします」
「「「はいっ」」」
未知なる地を前にして、改めて気合いを入れる三人。
ここから先の道は、俺が再び先導していくことになる道が険しくなったとかはないが、気をつけなければならないことも多いのだ。
霊地での歩き方を示しながら、ついでにいくつかの素材の採集などを実地で見せていこうと思う。
そうやって登っていくと、だんだんと空気が変わってくるのがわかる。
「ここら辺までくると、かなり空気が違うのがわかる?」
「はい、なんか明らかに質が違うというか。どう違うかは解んないですけど」
「おいしい!!」
「魔力が濃い感じの空気と似てるような気がします」
「この空気を感じたら、そこはもう霊地に足を踏み入れている証拠だね」
本来、山の上の高地などは空気が薄いはずだが、この辺りの空気は、それを感じさせない位に空気の質がまったく違う。
マリーも何となくは感じてはいたようだが、魔法の習熟度の差でナツメの方がよりはっきりと感じていた。
ナツメの言う魔力が濃いという感覚は、実のところほぼほぼ間違っていない。
ただ、正確に言えば,魔力ではなく、源素が濃いというのが正しい。
源素とは、目に見えない超常的エネルギーの源泉みたいなものである。
魔力、霊力、神力といったものは、源素をそれぞれのチカラの性質に合わせて変容させているものなので、もとを辿れば全て同じ源素というルーツに行き着くのだ。
その豊富な源素を用いて、精霊が自ら造り上げる領域のことを、人は霊地と呼ぶ。
後、カリンの空気が清く澄んでいて、おいしいというのも、これはこれで間違いではない。
シチュや精神的要素も加わって、実際、うまいんだ。
これは登ってみればきっとわかる。
結局のところ、俺という人間はそういう楽しみが好きなので、苦労しながらも山に登ってしまうのだ。
「はい、ストップ! その足元にあるのがシズクタケだね」
道の脇の木々の合間、足元のうっそうとした草をかき分けると、そこには水のように、透き通った半透明のキノコが群生している。
その見た目から、目視での発見は極めて難しいこのキノコは、カサから発する微弱な水属性の魔力を察知しなければならない。
「うはー、スケスケだ」
珍しいキノコにカリンがウキウキで声をあげる。
「シズクタケは、高級素材の一つだね」
シズクタケは、豊富な滋養強壮成分があり、高い回復効果がある素材である。
シズクタケの煮汁を煮出した上で濃縮させると、それだけで上級回復薬並みの回復効果ある液体となる。
さらにシズクタケのスゴいところは、その回復効果に加え、他の素材との相性が抜群で、シズクタケ液を調合に加えると、他の素材の効果を損ねることなく,より高い品質の薬効が期待できるのだ。
「採るんですか?」
ワクワクを隠しきれない声でマリーが問う。他の2人も同じ様な目でこちらを見てる。
だが、彼女たちの期待通りにはならない。
「いや、今回はとらない」
「えっ、なんで?」
カリンが素の声を出す。
基本的に冒険者なんて、取れるものがあれば取れるだけとるのが普通だ。
あまりに成長してないものはさすがに見逃したりもするが、ここにあるシズクタケはしっかりと大きくなっている様にみえる。
「シズクタケはね、こうして群生しているんだけどね。成長しきった後、群生が一つの個体に合流していくんだ」
シズクタケは、空気中の水分を栄養に変えて成長する特性を持つ、水気の多い土地などに生息しているキノコの一種である。そこに豊富な源素を含んだ水分を吸収することで、生命力溢れる個体へと成長するのだ。
そんなシズクタケには独特の生態がある。
群生体の中で成長しきった個体が出ると、その個体が生命力を伴った胞子を空気中に放出し、繁殖していく。
胞子を出しきった個体は、群生の中に一つだけいる特殊個体に残りの命を託すように水のように触れ混じり、やがて合流する。
そしてその特殊個体だけは、胞子を排出する機能を持たない。
ただただその生命力を溜め込み続ける。
やがて、全ての個体が吸収された後にその個体が、人や獣に刈り取られることで、シズクタケの育った後の場所に収まりきらなかった分の生命力が氾濫し、その土壌が豊かになる。
そういったサイクルを理解し、採るべきものを採る。
それが大事。
「というわけで、今回はスルーします」
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