まったり異世界観光 ~観光チートで異世界を楽しみつくす~

にしん

文字の大きさ
69 / 96

68

しおりを挟む
「それじゃあ次は祠の清掃にはいろう」

山頂でやることを済ませたので、山肌の階段を下りていく。
階段の途中で山頂へ向かう道と分かれるとこがあり、そのさきには小さな洞窟がある。
そこにあるのが、精霊を祀る祠である。
洞窟の入口には朱色の鳥居があり、そこから奥へ進むと、石造りの整地されたスペースが見えてくる。
その中央には小さな祭壇が鎮座し石灯籠がそれを囲む。そして幻獣の石像が、祭壇を護るように二体並んで控えている。
少し離れたところに湧水の水場もあり、洞窟内には水のせせらぎだけがやさしく響いている。

「じゃあ魔力灯着けるよ」
「あっあかるくなった」
ここにきた人間用に設置された側壁の魔力灯に、一斉に魔力を送り灯りをともす。
魔法使いなら遠隔からのスイッチオンも楽勝である。

「ここはいわば、精霊のプライベートスペースみたいなものだね」

だからこそ、最初の挨拶が肝心なのだ。いきなりずけずけとやってくる客人など、だれも仲良くしたくないだろう。

「まずは普通に掃除をします。掃除道具は持ってきてるね?」
「はい、昨日言われて用意しました」

箒やチリトリ、モップなどの掃除用具をパッキングから取り出して準備万端の様子。

「吹きさらしだから、チリひとつなくとまでは言わないけど、丁寧に心を込めて作業するように」
「「「はいっ!」」」
「じゃあ、だいたい終わるくらいにまた来るんで、それまで作業を進めておいて。清掃が終わったら、次の工程を説明するから」
「えっ、いっしょにやんないの?」

ちょっと非難がましい目を向けるカリン。

「これは一応、君ら三人への依頼だからね。俺はその間に夕飯の仕込みとかしとくので」

そういって三人をおいて、一度洞窟を出た。



あれから一時間ほど、夕飯の食材の下ごしらえをしたり、近場で野草などを採集したりして、頃合いをみて祠に戻ることにする。
実は霊地とのパスで、あちらの作業の進み具合は確認していたので、タイミングはばっちり。
いや、覗いていたとかではないので、安心してほしい。
精霊にも感情があって、祠を掃除をしてもらえたら嬉しいものなので、そのあたりの空気の動きを読み取っていただけである。
日はだんだんと落ちてきて、空気も冷たくなってきた。
後一刻もすれば、夕焼けの絶景を拝めることだろう。その前には彼女らの仕事も終わる。
色々とやることはあるとはいえ、なんだかんだ一番時間がかかるのが普通の清掃だ。
これさえ終われば、後は決めごとを守りながら一つ一つの工程をなぞっていくだけで、作業自体はそんなにかからない。

「またせたね」

作業終わりで休憩していた3人に声を掛ける。

「あっ、サイトさん!」
「だいぶきれいにしたよー」
「ちょっと前に終わったところです」
「うん、お疲れ様。きれいにしてもらって、精霊様もだいぶ喜んでくれているみたいだ」

真面目にやってくれたようで、空気がきちんと整って空間内に霊気が満ちている。

「わかるんですか?」
「ああ、空気がそういっているよ」
「よかったー。やりなおしとかになんなくて」

さっき祈祷でかましておいたおかげか、三人もそれを素直にことばを受け取り、安堵していた。
それじゃあ、予定通り次の工程に進むとしますか。

「じゃあまずはここにある隠し戸を開けて、魔力を注ぎます」

側壁の一部の岩肌に擬装した隠し戸を開くと、そこには幾何学的な紋様が刻まれた水晶が置かれている。

「じゃあマリーが魔力を注いで」
「解りました。けど、何で私何ですか?」

このパーティにおけるこういう魔法系の一番手は、基本的にナツメがつとめるので、そういった疑問が当然出てくる。ちな、カリンは論外。

「この後にもう少し色々と魔力を使うとこがあるから、ナツメにはそこを担当してもらう」
「なるほど、了解です」
「解りました」

両者納得したようだ。

「わたしは?」
「大丈夫、力仕事もあるから!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん
ファンタジー
主人公は俺、43歳独身久保田トシオだ。 人生に疲れて自ら命を絶とうとしていた所、それに失敗(というか妨害された)して異世界に辿り着いた。 最初は夢かと思っていたこの世界だが、どうやらそうではなかったらしい、しかも俺は魔物使いとか言う就いた覚えもない職業になっていた。 おまけにそれが判明したと同時に雑魚魔物使いだと罵倒される始末……随分とふざけた世界である。 だが……ここは現実の世界なんかよりもずっと面白い。 俺はこの世界で仲間たちと共に生きていこうと思う。 これは、そんなしがない中年である俺が四苦八苦しながらもセカンドライフを楽しんでいるだけの物語である。 ……分かっている、『図鑑要素が全くないじゃないか!』と言いたいんだろう? そこは勘弁してほしい、だってこれから俺が作り始めるんだから。 ※他サイト様にも同時掲載しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...