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しおりを挟む「ふぅ~、気持ちよかった」
温泉から出て、山道を歩きながらベースキャンプへと戻る。
山頂の湯の効能は、疲労、打ち傷、擦り傷、肩こり、腰痛、関節痛、食欲不振、魔力障害など、万病に効くヒーラー要らずの温泉といわれる。
泉質がヤズヤの湯とよく似ているがより源泉に近い分、こちらの方が成分が濃くて温度が高い。
なので、あまり長時間湯に浸かると、逆に身体に悪いらしい。
今回もわりと短く入っただけだが、身体の芯からぽかぽか似なって、額に汗がじんわりにじむ。
風呂上がりの水気は魔法で乾かしているが、それでもじわじわ汗をかくので、タオルをあてていく。
でもこの火照りに高地の爽やかな風が気持ちいい。
『アイ!』
歩いていると、どこからともなくアオイの気配がして、俺の側に寄ってきた。
「アオイ。もういいのか?」
『アイ!』
山頂で挨拶を済ませた後、アオイは精霊のそばに残って、おしゃべりをしていた。
嬉しそうなアオイの様子に話はだいぶ盛り上がったらしい。
『アイ!』
「わかった。明日のご来光のときだな」
『アイ!』
精霊が俺とも話したいらしく、明日の夜明けのころに会うことになった。
もともとご来光を拝むつもりだったので、ちょうどいい。
「それじゃ戻ろうか」
『アイ!』
そういえば、3人にはアイのこといってなかったな。
特にナツメは見えるようになっているから、アイを見たら驚くだろうな。
■
「えっ!? あっ、はわわゎゎゎぁぁ」
「ナツメ?」
「どしたの?」
一人の少女の驚声がケーラルの山脈にこだまする。
アイと共に風呂から戻った俺は、和気あいあいと作業する三人に迎えられる。
ところが俺を見たナツメが、驚愕し、悲鳴をあげた。
正確には、俺ではなく俺のすぐ隣だけど。
「落ち着いて、ナツメ。いま説明するから」
「……はっ、はぃ~」
「なんかした?」
「どーゆうことですか?」
事態を理解できてない二人が俺を元凶だと思ったのか、胡乱な眼差しを向けてくる。
「俺の側にはいま、精霊の卵みたいな子がいるんだ」
「へ?」
「いないよ?」
俺の告白に首を傾げる2人。
「そりゃ、普通の人じゃ感じとることはできないよ神秘に対する感受性が高くなきゃ」
基本的に普通の人間は、神秘への感受性が低い。
稀にいる高い人間はそれを活かして、聖職や神職につくことが多い。
神秘を理解する聖職者とか、どこ行っても引っ張りだこになるくらいには希少性が高い。
魔法と神秘は似て非なるものなので、お互いにとっての周辺領域みたいなもの。
なので、魔法についての造詣が深くなると、神秘を感じ取れなくても違和感を感じたりして、神秘にたいしてあたりをつける位のことはできるようになる。
何か違和感を感じる、ちょっと前のナツメがこのあたりのレベルだった。
「さっき精霊の祝福を受けたことで、ナツメは精霊の存在を認識できるようになったわけだ。そうだろ?」
「はい。サイトさんの近くにものすごい大きな光みたいなものが見えて、驚いてしまいました」
精霊の卵とはいえ、自然のエネルギーが凝縮した結晶体であり、超常の存在。
そんなものがすぐ近くに突然現れてびっくりしたのだろう。
「ナツメ、もう平気なの?」
「ええ。もう、大丈夫です。それよりサイトさん、その方について、ちゃんと教えてください」
「ああ、もちろん」
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