まったり異世界観光 ~観光チートで異世界を楽しみつくす~

にしん

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この世界の竈は、前世のやつと似ているようで少し違う。
煮炊きのための設備でというのは同じだが、この世界には魔法があるので仕組みが全く違う。
この世界の竈は、直火で直接加熱するのではなく、火を触媒にして高効率の加熱魔法を発動させて煮炊きをするという仕組みとなっている。
熱源を置く火床を起点として竈全体に魔力を流すことで、熱伝導をより効率的にする一種の魔導装置みたいな造りをしているのだ。
そのため、実際の火力はそこまで必要とせず、ガンガン燃やして火力を維持したりする必要はない。
ある意味では竈も魔法陣の一種といえ、野営で簡易竈を作製するのにも、ちゃんとした作り方を覚えていないといけない。
とはいえ専門知識というほど難しいものではなく、「土を固めるときにこの場所に魔力を込める」とか、「ここに熱の通る動線をつくる」とか、そんな程度。
冒険者の場合は、こういうことを基礎知識として学んでから、外の世界に出ていくことになる。
まぁ今回作ったやつは、わりと自分の魔法知識をフル活用していて、無駄にハイスペックな竈となっている。
織火程度の弱い火でもグツグツいける超効率を実現しているんだけどね。当然、強弱も自由自在。

竈の火口に赤々と燃える薪を投入。大きいの一個もあれば、今晩の調理程度なら十分だ。
そうすると、ものの数分で竈全体に火が回り調理可能な状態に。
大きめの鍋に少しだけ水を張って、あらかじめ下処理を済ませた昼間の鹿肉のスジやモツ、ガラを入れ、ガンガンあっためる。

「おー、すっげーアクでてくる」
「こいつは一回お湯捨てるからね」

亜空間に一度汁を捨て、鍋とスジモツガラをよく洗う。
そして今度は水をたっぷり張り、再び火にかける。
酒と香草なんかも投入。
そしてついでに、時間促進の魔法をかけておく。
これさえあれば、短時間でしっかり煮込めるのだ。

「じゃあ後のアクとりをお願いしようかな。俺はその間に温泉に行かせてもらうよ」
「解りました」

ここまでいけば、後は煮えるのを待つだけ。
今の間に温泉タイムといこうかな。

「水がだいぶ減ったら足しちゃっていいからね」
「了解です」
「あっ、そうだ。余った食材でわたしたちも何か作らせてもらってもいいですか?」
「うん。どんどん好きにやっちゃっていいからね」

彼女らも何か作ってくれるらしい。楽しみだ。

「じゃあ、ちょっといってくるね」
「いってらー」

俺は三人娘に見送られながら、温泉へと向かった。



足早に温泉までの道を歩く。
日暮れまでは後一時間というところだが、足元はまだ大丈夫だ。
チートはあれど、暗くなってからの山歩きなんて絶対ごめんだ。
何というか、能力でむりくりどうにかしちゃうとか、山で生きるものの美学に反する。
拠点から見える夕焼けはきれいなので、日の入りまでには、戻るつもり。

温泉の場所までくると、硫黄の臭いが漂ってくる。
山道の奥まったところに入ると、人工的に積み上げられた岩場いっぱいに湯気が上がっている。
当然こんな場所に脱衣所なんてない。
それっぽい平たい岩のところに服を脱いで、全裸になる。
このとき、ついでに服の汚れを落としておく。
こういう便利な魔法があって、誰でも使えるぐらいに普及しているから、この世界の人は服をあまり持たない。
生涯で10着も着ないという人も、それなりにいるぐらい。
そのため服飾文化も、大量生産大量消費ではなく、いかに機能的に、いかに個性をだすか、と言う方面に偏った発展をしている。だからみんな基本的にお洒落ではある。同じデザインの服を着ている人を見たことがない。

服を脱ぐと外気の冷たさと湯気の温かさの両方を感じながら、かけ湯をする。
桶は共用のものが置いてあり、劣化防止の魔法処置がしてある。
これのかけ直しとかも、メンテナンス料としてちょっとだけ報酬が貰えたりする。
ここにいく予定があるときは、ギルドで確認しよう。

ザバァーン

勢いよく頭から湯をかぶる。
少し熱めのお湯が肌を打つ感覚。体表の汗や汚れを流してくれるようで心地いい。
そのながれで魔法で身体をきれいにして、足先から温泉に入っていく。

「……んぁぁぁあぁぁ」

すっごい、気持ちいい。
もう、語彙が無くなるレベル。
山歩きでほどよく疲労した肉体に、熱めのケーラルの湯がよくききやがる。

やっぱり、温泉は最高だね。
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