まったり異世界観光 ~観光チートで異世界を楽しみつくす~

にしん

文字の大きさ
91 / 96

90

しおりを挟む

「それは――」

息を飲んで、続きを待つ。
どんな無理難題にも応えたいという感謝からくる気持ちと、心の奥底に未だにこびりつく自分なんかでは、という不安。それらがないまぜになって、心が定まらない。
彼女のこれからの言葉で、俺の未来の指針がきまるのだ。

「特にありません」

「……へ?」

予想外の答えに、おもわず気の抜けた声が出る。

「貴方には、この世界で自由に生きて楽しんで欲しい、だそうです」

なんともまぁ俺に都合よすぎて、逆に不安になってくる。
特に信心深かったわけでもなく、前世でここまでしてもらえるようなことした覚えもない。

「神には神の都合があり、その御心を計り知ることはできません。此度のことも神にとっては何でもないようなことなのです。だから貴方が不安を抱える必要もありません」
「そういうもの、ですか」

まぁ確かに、俺がもらったチートで世界を救えといわれても、正直なところ困ってしまう。
まさに俺が望んでいたとおりの観光のためのチート能力でしかないからな。

「貴方は前世で頑張りすぎて、魂が疲れてしまったのです。一度、肩の荷を下ろして心穏やかに生きても、誰も責めませんよ。なにせ神がお認めになられているのですから」
「そうですね、そう考えることにします」
「それがいいでしょう」
『アイ!』

俺の答えに優しく微笑む大精霊。
そして黙ってやり取りを聞いていたアオイも肯定している。

うん。そうだな。
この世界で好きなように生きてみよう。
この機会を与えてくれた神に感謝をしつつ、自分なりに精一杯人生を楽しんでみたい。
心からそう思えた。




「ねぇ、貴方からみてこのケーラルの地はどうみえますか?」

大精霊は突然、そんなことを聞いてきた。
ふむ。

「お世辞抜きに素晴らしいところだと思いますよ」
「本当に?」
「ええ。自然や温泉も素晴らしいですし、料理も美味しい。そしてなにより、俺にとってはかつて生きた世界に近い部分がかなりある」
「そっか」

嬉しそうに頷く大精霊。

「私、いや私たちは、あの人の眠るこの地を、還れなかったあの人の故郷のようにしてあげたかったの」

そういえばここは勇者の隠居した地であり、その勇者伝説の中には精霊と結ばれたという話も残っている。
今目の前にいる大精霊が、まさにその当人なのだろう。
改めて考えると、すごいファンタジーだ。
そしてよく手を出したなぁ、とも思う。
だってこうして話してる今でも、節々から神々しさが漏れ出してて、畏れ多いでしょってなる。
やっぱ、勇者ってすげー。

「じゃあ、勇者様に感謝ですね。今のケーラルは彼を愛した貴女方とケーラルに生きる人々の愛と努力の結晶。彼がいたからこそ、俺は今こうしてケーラルを最高に満喫できてるというわけです」

「ふふ、ありがとう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...