ある中学生のお話

花咲 春来

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許せないこと

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「獲得性吃音病」
それは簡単に言うと言葉がなかなか出てこなくなる障害のようなもの。

「なにあいつw」「緊張してるのかなw」「変なしゃべり方w」
クラスメイト達がヒソヒソとしかしはっきりと口にしていた。
「はいはい皆静かに!」
先生が止めてくれた。
「大丈夫、ゆっくりでいいからね」
先生が安心させてくれた、しかしそれでも言葉は出てこなかった。

休み時間

「なぁお前って障害者?w」
「ち、ちがうよ!」
クラスメイトの一人が話しかけて来たと思ったらいつもこれだ。
「やっぱ障害者じゃんw」
「…」
話せば話すほどエスカレートしていく。
(なんで俺がこんな目に…)
その時はなぜこんなことになっているのか分からなかった。

それから6年後、中学生になった俺は最初からやり直そうと思った。
しかし
「よぉ手帳持ちw」
中学校になってもそう呼ばれるようになった。
「…」
もう何も動じなくなっていた。
でも一つ、許せない事があった
「お前の名前って変な名前だよなwセンスゼロw」
「…っ!」
その瞬間俺の右拳は相手の左頬に突き刺さっていた。
「ってぇ…」
もう止められなかった。
もう二度と家族を罵倒するような言葉が出てこないように首を絞めていた。
「…ぅぐぁ…あ!」

「やめなさい!」
「っ!」
先生の声のおかげで気がついた。

そのあと先生から理由を聞かれ怒られた。
理由はこうだ。
一生懸命働いてここまで育ててくれた親。
気持ちをこめてつけてくれた名前。
その大事なものを侮辱されたからやってしまったのだ。

自分でも間違っていると思う、しかし、それでも許せなかった。
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