ある中学生のお話

花咲 春来

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家族

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小学1年生のころ入学したときはとてもワクワクしていた。
入学する前は毎日留守番していた。
とてもつまらなくその時の俺はとても寂しかった。
指定された教室に行き、説明を聞いて、説明が終わった頃には友達を作っていた。
すぐに友達を作るほどその時の俺は寂しかったのだろう。
家に帰ると早速明日の学校の準備を始めた。
教科書を入れ、ノートを入れる、とても楽しみだった。

次の日新しいできた友達と話していた。
「なぁ真守今日俺の家に来る?」
初めて家に誘われた。
今まで友達がいなかった俺にとってはとてつもない喜びだった。
「…!もちろん行くよ!」
俺は家に帰るとランドセルを置いてすぐに家を飛び出した。
母は朝から仕事だから許可を取れない。

遊びから家に帰ると母が怒った顔で待っていた。
「ただい…」
「どこに行ってたの!?」
ただいまと言う前に言葉を遮られた。
「なんで遊びに行くって言わなかったの!?」
「だってお母さん家にいなかったし…」
「言い訳はしないで!」
あぁ、まただアレが来る。
母は勢いよく俺の顔の横の耳を人差し指と親指でつまむと、血が出るほど引っ張った。
「いたぁぁぁい!!!!」
母は問答無用で引っ張り続けた。
「次からはちゃんと許可を取りなさい‼」
そんなことを俺の耳元で、しかも大声で言った。
鼓膜が破れそうになった。
「わかったから離して!」
ようやく離してくれた。両手で引っ張られた耳を押さえると指と指の間から血がだらだらと溢れてきた。

母は教育だと言い張るが俺にとっては逆効果だった。

怒られた日に明日遊びに行ってもいいかと聞いて許可をもらった。

次の日、遊びから帰るといきなり耳を引っ張られた。
「な…なんで…?」
痛みで全然声が出なかった。

理由は許可をとっていないから。

ふざけるなちゃんと許可はとったはずだ。
おそらく何気ない会話だと思ってかるく返事をしたのだろう。

母はとにかく人のせいにして、自分は正しいと言い張る。

いつもそうだ、何か失敗したら全部俺のせいにする。
兄は遊びに行っているから悪くない。
でも、だからといって全部俺のせいになるのはおかしいだろう。

もういやになった。皿が割れたのも、大事な書類が無くなったのも全部俺のせいになり、そのたびに耳を引っ張られた。

おかしくなり始めたのはそのころからだろうか。
なにもかも自分から「僕のせいです」と言っていた。
明らかに自分じゃないのに「僕のせいです」と言っていた。

学校で自己紹介の時言葉が出にくくなっていた、言葉がつまる感覚だ。
「ぼ、ぼぼ僕のなな名前は…」(あれ…?声が…)
いつもならすぐでる声がなかなか出ない。

今ならわかる、中学3年生になった今でも苦しめられている。獲得性吃音病だ。

幼い頃に過度なストレスを受けると発症してしまうらしい。

そこから俺の人生は狂い始めた。
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