山の子ども

小貝川リン子

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3 大学編

6 仲秋‐② ※

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 歩いて行ける距離にはなかったので、地下鉄で上野まで出た。ホテルのある狭い路地はスナックやキャバクラやファッションヘルスの看板が目立ち、妖しい雰囲気が漂っていた。手続きが普通のホテルと違うので手間取ったが、とりあえず適当に部屋を選んで入室した。フロントは無人で、鍵も必要ないらしかった。
 
 思っていたよりも小綺麗で豪華な部屋だ。ベッドが大きい。テレビも大きい。しかし窓はない。お風呂はどうなっているんだろう。ラブホの風呂にはテレビがついていて、浴槽が虹色に光ると聞いたことがあるが――
 浴室のドアを開けたところで後ろからぎゅっと抱きつかれたので、中を確認することはできなかった。瑞季はむっと口を尖らしてこちらを見上げる。
 
「ごめん、だってテーマパークみたいで楽しくて」
「別に、急かすつもりはないけど」
 
 そう言いつつ、パンツに手を入れてくる。
 
「ごめんって。シャワーしなくていいの?」
「いい。早く……」
 
 俺は瑞季を抱き上げて運び、海みたいに広いベッドへ寝かせた。そのまま上に覆い被さり、深く口づける。キスしたまま裾に手を入れて胸を触る。期待してるみたいに固く尖っている。くりくりと指先で抓ると、瑞季は身を捩らせて喘ぐ。
 
 服が邪魔になってきたので脱がしてしまう。厚手のトレーナーとインナーをまとめて掴んで、万歳させて脱がした。普段は帯を解いて胸元をはだけさせているので、こうやって脱がすのは新鮮だった。それから今日はボトムスを脱がす手間もある。ベルトをしていないから楽と言えば楽だけど、これも普段しないから新鮮だし変な感じだった。
 
「あれ、今日はパンツ履いてんだね」
「おれを何だと……洋装の時は履いてるって言っただろ」
「そうだけど……なんか、もしかして見るの初めてかも」
 
 下着の上から、少し盛り上がったそこを握って柔く揉んだ。
 
「あっ、ちょっと」
「期待してたんでしょ。すぐ勃った」
「お、お前が触るから……」
 
 揉んでいるうちにしっかりと固くなってきて、先っぽのところに染みができる。敏感でかわいい。
 
「もしかして電車の中でも勃ってた? ずっと我慢してたの?」
「ち、ちが……」
「ほんとぉ? さっきだって、したくてしたくてたまんないって顔でおねだりしてきたくせに」
「あ、も、いじわるだ……お前だって、期待してるくせに……!」
 
 瑞季はいきなり起き上がり、俺の服に手を掛ける。脱がしてくれるの? と問うと黙ってうなずく。
 
「じゃあいいよ。脱がして。じっとしてるから」
 
 まずはパーカー。ファスナーを開けていたので簡単に脱げる。次はシャツ。裾から瑞季の手が入ってくる。俺の真似をしてか、乳首を触ってくる。しかし慣れていないせいか、くすぐったいだけだ。思わず笑ってしまう。
 
「も、なんで笑って……」
「ごめ、くすぐったくて」
「おれは真面目にやってるんだぞ」
「じゃあさ、舐めてみてよ」
 
 俺は自らシャツを脱いで胸を差し出す。
 
「俺がよくやってるみたいにやってみて。手でするより気持ちいいかも」
 
 瑞季は一瞬躊躇いを見せたが、俺の言う通りに胸に吸い付いた。上目遣いに俺を見、これでいいのかどうかと訴えてくる。
 
 先ほどよりは気持ちいいような気がしないでもない。ぬるぬるの舌に弄ばれる感覚は悪くない。が、それ以上に視覚的なインパクトが強い。瑞季が困ったような顔でこちらの様子を窺いながら、まるで赤ん坊のように熱心に俺の乳を吸っているのだ。父性というか母性というか、そういう本能が芽生えてしまう。なのになぜか性欲が湧いてくる。
 
 我慢できず、下着の中に手を突っ込んだ。瑞季は何か言いたげな顔をするが、もっと口でしてよと俺が言うと、またちろちろと乳首を舐めてくれる。
 
「っ……んんっ、やっぱりむり」
「なんでよ。赤ちゃんみたいでかわいいのに」
「だ、って、そんなにされたら……」
 
 下着の中で竿を抜いてやる。先走りを掌に纏わせ、全体をぬるつかせる。瑞季は腰を震わせて俺の胸に縋り付く。
 
「お前ってほんとに快楽に弱いな」
「そんなこと……」
「ならちゃんとおっぱい吸って」
 
 頭を押さえて無理やり吸い付かせる。気持ちいいのかどうかわからないが癖になる。うーん、やっぱり気持ちいいのかな。下腹部に血の集まるのがわかる。
 
 瑞季は呼吸を乱しながらも必死に乳首を吸うが、途中で口を離して喘ぎ始めてしまう。本当はもう少ししてほしかったけど、あまりいじめるのもかわいそうだ。ベッドに再度押し倒し、下着を脱がせた。生まれたままの姿で、清潔なシーツに横たわる。
 
 電気を消してほしいと言われ、そういえばスイッチはどこにあるんだろうかと俺は辺りを見回した。枕元にコントロールパネルがあって、照明もそこで操作するらしかった。ただ、ボタンがいっぱいついているせいで何が何だかわからない。適当に押すと浴室の電気が消え、もう一個押すと玄関の電気が消える。
 
「柊也?」
「いやほんとごめん。わかりにくすぎるだろ、これ。何考えてんだよ」
 
 さらにもう一つボタンを押すとようやく部屋全体が暗くなったが、代わりにピンク色の妖しげな照明に切り替わる。夜のお店のネオンみたいな色だ。ちょっと派手だが、一応薄暗いしいいだろう。だけど瑞季は渋い顔をする。
 
「ううん……落ち着かない……」
「そのうち慣れるだろ。それよりこっち集中してよ」
「あっ……」
 
 枕元の小箱に入っていた使い切りローションで手指を濡らし、後孔にゆっくりと挿入する。力の抜き方を瑞季が覚えてくれたおかげで、前戯はかなり容易くなった。俺もコツを掴んできたから、中を解すのにそう苦労は要しない。蕾が開き、指の二本でも三本でも簡単に咥え込む。
 
 十分柔らかく解れた頃を見計らい、ローションと同じ小箱に入っていたコンドームを片手でくるくるっと装着して、正常位で挿入した。始めは慎重に、根元まで入ったら腰を揺すって中を馴染ませ、瑞季の呼吸が落ち着いてきたら思い切り腰を振る。ピストン運動を繰り返して中を掻き混ぜる。
 
 互いの気持ちいいところをぐちゃぐちゃに擦り合わせて混ぜ合わせ、一つに溶け合ったら止まることはできない。瑞季は必死にシーツを掴んで悶える。時折苦しそうに顔を歪ませ、その声を全く抑えようともせずに喘ぐ。もはや加減なんてできずに夢中で快楽を追い求め、俺は遂に果てた。瑞季もほぼ同時に、俺の手と自身の腹に白濁をぶち撒けた。
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