母ちゃんとオレ

ヨッシー

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母ちゃんとオレ

5話

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バイトが休みの日は、母ちゃんが仕事出かけるとヒマだから
ユウトくんたちと遊ばない時は
YouTubeを見てる
そんで、2チャンネルってSNSの書き込みを動画にしたやつをたまたま見た
不倫とか、浮気とか、弁護士とか
それでオレふと思った
母ちゃんは今何の仕事なんだろうって
夜働いてる
女が夜働いてる仕事って…
いくら世間知らずなオレでも
さすがにわかってきた
どうしよう…風俗とかだったら…
オレはすごく嫌な気持ちになった
せめてホステスとかであってくれ

でも…

それでも知ったら…いつも通りに出来るのかな…

オレはとても不安になった
ユウトくんに相談しようかな
いや、ユウトくんに迷惑かかるかな…
でも、ユウトくんしか頼りに出来る人いない

オレはユウトくんに電話した

「よお、どした?…電話は珍しいじゃんw」
「うん…あのさ」
「なんだ?…暗いじゃん?…母ちゃんとケンカでもした?」
「ううん…母ちゃんさ、いつも夜働いてるんだよ」
「ああ…」
「どんな仕事だと思う?」
「カオくん、今まで知らなかったのか?」
「うん…そういうもんだと思って、なんも考えてなくて…でも…」
「ふと、思っちゃったわけか」
「うん…」
「カオくんはどう思う?…その暗さだと…女の商売とか?」
「う、うん」
「どうかねぇ…母ちゃんいくつだっけ?」
「40歳」
「その歳でそういう商売ってするのかね…オレもわかんねえけど…」
「ユウトくんもわかんないか…」
「ごめんな、オレも大人じゃねえし…ただ、カオくんの母ちゃんが、普通におばさんぽいおばさんだったら、『ありえねえよw』って言えっけど、カオくんの母ちゃん、結構美人だしな…」
「そ、そうなんだ…」
「オレは…カオくん励ましてえけど、変に期待持たせる事は言えねえ…覚悟だけはしとけよ…」
「覚悟…」
「ああ…知る覚悟と…知った後の覚悟な…カオくんはなにより母ちゃんが大事だろ?」
「うん…」
「その気持ちって、母ちゃんがもし風俗嬢とかしてたらなくなっちまうもんなのか?」
「ううん…けど、オレ…どう接していけばいいか…」
「普通でいいんだよw…今まで通りさ…自分の彼女がそんなんしてるわけじゃねえんだからさ」
「普通に…で、出来るかな…」
「いいか?…母ちゃんは女手一つでさ、慰謝料払って、お前を育ててる…それには金がどうしたっている…だろ?」
「うん」
「でも、カオくんの事が大好きだから、カオくんと一緒の時間を持てるようにしたいと思った」
「うん」
「そうするなら金の稼ぎがいい仕事するしかない…だろ?」
「うん」
「そんで母ちゃんは朝帰って、昼に起きるんだろ?」
「うん」
「それって睡眠時間めちゃくちゃ少ないじゃん」
「あ…うん」
「なのに、カオくんの為に昼ごはんと、晩ごはん作ってさ…」
「うん…グス」
「そんなにまでしてても、いつもあんなに明るいんだぜ?」
「うう…グス」
「そんな母ちゃんの思いをさ、カオくんが一番わかってやらねえとさ…母ちゃんかわいそうじゃね?」
「そうだぁ…グス…かわいそうだ…」
「まあ、オレはカオくんの立場じゃねえから、カオくんの気持ちわかんねえけどさ…けど、大事っていつも胸張って言ってんなら、自分が傷つくの怖がってんのは情けねえよ」
「うん…グス…うん」
「カオくんも男なら、知ったとしても、普通にいつも通りにしろよ…それが覚悟ってやつじゃねえの?」
「うん…グス…そうだぁ」
「オレも普段通りにするし」
「うん…」
「ハルには言わねえし」
「うん…」
「男だろ?…カオくんよ」
「うん!」
「で、どうする?…カオくんはさ…」
「うん」
「母ちゃんがどんな仕事してるか…知りたいのか?」
「…し、知りたい…」
「そうだな…知っておく方がいいかもな…」
「聞いたら答えてくれるかな…」
「いや、もしほんとに風俗嬢とかなら答えねえよ…だからさ、もし知りてえなら、後つけろよ…母ちゃんが仕事行く時な」
「あ、そうか…」
「ただ、やるならバレるなよ?」
「う、うん」
「オレが言えるのはこんぐらいだな…悪いな、あんま力になってやれなくて」
「そんな事ない!…ユウトくんに聞いて良かった!…ありがとう!…グス…ほんとにいつもありがとう…いつも助けてくれてありがとう…グス」
「ダチだろw…泣くなよw…じゃあ頑張れ」
「うん…ありがとう…おやすみ」
「おやすみ」

ユウトくんと話せて良かった
本当に救われた
どうして同い年なのに、あんなにしっかりしてるんだろう
あんなにカッコいいんだろう
本当に尊敬する

よし!
オレは母ちゃんがどんなでも、今まで通り大事にする!
ようし…
オレはそう意気込んで考えた
後をつけるのバレないようにする
オレは考えて、もう一度ユウトくんに電話した

「おうw…どしたよw」
「あのね…ずうずうしいお願いなんだけどね」
「うん」
「オレね、後をつけるのバレないようにするの考えてさ」
「うんうん」
「オレ、いつもと違うカッコしたらいいと思うんだ」
「ああ~、そりゃいいね…なるほどねw…で、オレの服とか貸してくれってか?」
「う、うん…どうしてそんなわかるの?」
「わかるだろw…普通w」
「そ、そうかな…」
「いいよ~、全然…ていうか、もう着てないやつとかあるし、やるよ」
「え!…いいよ~、悪いよ!」
「別に?…もう着てねえから引き取ってくれると逆に助かるんだが…服とか捨てるの面倒だしw」
「じゃあ、買うよ」
「そう?…じゃあ1,000円な?」
「え?!…安いよ」
「じゃあ2,000円w」
「ほんとカッコいいなあ…ユウトくん」
「カオくん、いつも思うけど、よくそんな同い年のダチを素直に『カッコいい』とか堂々と言うよなw」
「え?…だってそう思う…変かな」
「変だなw…けどいいやつw…カオくんだから特別価格って事にしとけ」
「…ありがとう…オレまた泣きそう」
「泣くなよw…今度火曜日は?」
「休み」
「じゃあまたサイゼなw…そこで渡すわ」
「うん」
「じゃあ、またな」
「また」

本当にカッコいい
オレが女だったら確実に惚れてる

そうして、ユウトくんから買った服
服だけじゃなくて、帽子や靴も入ってた
この気前の良さと男らしさが本当にカッコいい
ハルさんはかわいいけど、どちらかというと、ハルさんの方がラッキーだと思う

そんで次の休みの日、オレはバイト行くふりして、母ちゃんより先に家を出た
アパートのかげで、服を着替えて、母ちゃんが仕事に行くのを待つ
すごくドキドキする
10分くらいすると母ちゃんは出てきて
オレはバレないように、けっこう後ろからつけた
母ちゃんは駅に着くと、ロッカーからデカい荷物を取り出してた
あのバッグの中に、母ちゃんの商売道具とか入ってるのかな
オレは母ちゃんの乗った車両の隣の車両に乗って、窓越しに見てた
1人で電車に乗る母ちゃんは、寂しそうに見えた
母ちゃんは目的の駅に着くと、女トイレに入ってった
きっと、ケバいカッコになるんだろう
オレはドキドキして待った

でも、出てきた姿はもっと驚いた

白いヘルメットを被って、紺色の上下を来てて、赤い棒を持ってた
身体には無線機みたいなのついてる
それが母ちゃんてわからなかったほどだ
持ってたバッグが同じじゃなかったら、絶対気づかなかった
母ちゃんはバッグをまた、その駅のロッカーにしまって、歩いてった
歩いていった先は、工事中の河川敷だった
オレはなんだかホッとした
あやしい商売じゃなかった
嬉しかった
でも、それならどうして言ってくれなかったんだろ
オレは気になって、母ちゃんに話しかけた

「母ちゃん」
「…え?!…カオくん?」
「うん」
「え?…どしたの、その服w…もしかして、母ちゃんの後つけたの?」
「うん…ごめんね…どんな仕事なのかと思って…」
「ああ~!…もしかして…変な仕事してると思ったでしょ?w」
「うんw…警備員…だよね?…これ」
「そうw…この河川敷のね、堤防を作る工事なのね…で、これが出来るまで期間が長くてねw」
「そっかあ…でも、どうして言ってくれなかったの?」
「だって、夏は暑いし、冬は寒いし、言ったらカオくん、心配しちゃうかなあって」
「…たしかに…でも…風俗とかじゃなくて良かった」
「あははw…こんなおばちゃんがそんなのしても、稼げないよw…それに稼げてたんなら、引越ししてるよw…お風呂付きのとこw」
「そっかあw…良かったあ…グス」
「心配かけてごめんねw…ナデナデ…カオくん、その服似合ってるよw」
「そ、そう?…これ、ユウトくんから売ってもらった…」
「ああ~…ユウトくんカッコいいねえ」
「うん、カッコいい///」
「ねえ、カオくん…今ね、母ちゃんお仕事中だからねw…あんまり話せないんだよ」
「あ、そっか…ごめんね」
「ううん…カオくんに会えて嬉しいw」
「毎日会ってるのにw」
「いつでも嬉しいよw…母ちゃんだもん」
「母ちゃん…ウル…オレも」
「待って待って…泣いちゃうからw…カオくんごめんだけど…あっちにね、スーパー銭湯があるんだよね…『さとみの湯』ってとこ」
「うん」
「お金あげるから、そこで寝て待ってて」
「お金はあるよ」
「いいからいいからw…一緒に帰ろ?…母ちゃんカオくんと一緒に帰りたいw」
「うん!」

そんでオレは、母ちゃんが普通の仕事してたのが嬉しくて
一緒に帰るのも嬉しくて
ついでにお風呂に入るのも嬉しくて
さとみの湯をスマホで地図探してなんとか見つけて
お風呂入って、なんだか寝っ転がれるとこで寝た
寝てたら朝の4時くらいに、母ちゃんやってきて起こされて
まだ始発の電車の時間じゃないからって、母ちゃんは風呂入ってから
オレの寝てるマットレス?に入ってきた
オレはタオル生地の薄いかけるやつ
母ちゃんにかけて、一緒に朝まで寝た

「カオくん、カオくん…ユサユサ…起きて、帰るよ…ヒソヒソ」
「うーん…」

「母ちゃん…ギュ」
「あれあれw…ギュ…ナデナデ」
「あ///」

オレはなんだか安心してたのか、寝ぼけてたのか
思わず母ちゃんに抱きついてた
誰も見てなかったけど、すげえ恥ずかしかった
でも
あったかかった

さとみの湯から駅まで歩く時
母ちゃんはオレの手を握ってきた
人が少なかったから、オレも握って
さすがにたくさん居たら、オレもちょっと恥ずかしいけど
でもオレは母ちゃんが大事だから
恥ずかしくても握ったと思う
駅に着いて、母ちゃんは着替えて
それから電車に乗る
ガラガラだったから、並んで座った

「母ちゃんと一緒に電車乗るの久しぶりすぎだね」
「だなぁw…ていうか、オレは電車に乗るのがほとんどない」
「そっか、そうだよね…バイトもあそこだし、高校も行ってないしねw」
「うん…ごめんね…オレ…勉強もしないで家に引きこもって…母ちゃんの苦労も知らないでね」
「いいのよw…母ちゃんが悪いんだもん」
「母ちゃん…どうしていつも、自分が悪いって言うの?」
「だって…元は母ちゃんがその…浮気…したからだもん」
「母ちゃん…それが悪い事だとしても…オレは少しも気にしてないから///…だから…その…そんなふうに思わんで///」
「…うん///…グス…ありがとう///」
「ううん…オレみたいなやつ…ずっと見捨てないでくれて…ウル…あり…がと…」
「何…グ…言って…カオくんが…いたから…グス…母ちゃんも…頑張れ…たの」

それからは何も喋れなくなって
手を握って
オレも母ちゃんもうつむいて
ボロボロと泣いてた
電車の中で恥ずかしいけど
空いてて良かった

地元の駅でロッカーにバッグをしまって
そこからアパートまでまた手を握って歩いた

「母ちゃんね…浮気」
「うん」
「なんでしちゃったかね…」
「うん」
「カオくんのお父さんは、すごく立派な人だったのよ」
「うん」
「お金もたくさん稼いでて、若くても期待されてて」
「うん」
「けど、仕事が忙しくて、いつも家に居なかったからね」
「うん」
「母ちゃん寂しくなっちゃって…」
「うん」
「そんでね…母ちゃんのパート先の人とね…」
「うん…母ちゃんは…」
「うん」
「母ちゃんは、そのパート先の人と父さんと…どっちが好きだった?」
「父さんだよ」
「ほんと?」
「うん…大好きだった」
「今は?」
「今はもう、なんとも思ってないw」
「オレはあまり父さんと話した思い出がないから…好きか嫌いかもわからない」
「そっか…」
「慰謝料って…どのくらい?」
「…この際だから…ちゃんと話すね」
「うん」
「慰謝料は300万円…最初は150万円だったけど…カオくんをどうしてもってお願いしたら300万円になったの」
「そんな…どうしてそこまでして…」
「カオくんが母ちゃんを好きって言ってくれたからw…母ちゃんも大好きだから…どうしても一緒に居たかったの」
「母ちゃん…グス…」
「…あとね、その浮気相手とは会ってもいけないし…会う気はないけどw…父さんに近づくのもダメ…もしなんか連絡とりたい時は、弁護士さんを通さないと、罰金がかかるのw」
「…一度結婚した人に、そこまでするの酷くない?」
「ううん、それが普通だよw…父さんは母ちゃんたちの為に働いてくれてたのに…母ちゃんが『寂しい』って思いだけで裏切っちゃったんだもん」
「…そっか…」
「うん」
「けど…いけなくても…実際に寂しいって思うのも仕方ないと思う」
「優しいねえ」
「ううん…オレも寂しかったから」
「そっか…ごめんね…」
「ううん…今は楽しいから」
「母ちゃんもw」
「話してくれてありがと」
「聞いてくれて…許してくれてありがと」
「育ててくれてありがと///」
「そばに居てくれてありがと…グス」
「オレも…ありがと…グス」

それからまた声が出なくなって
すぐアパートについて
昼までまた一緒に寝た
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