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第一章
1-4 依頼を受けてもらえる
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目の前の光景にごくりと唾を飲み込んだ。
テーブルの上には、彼らが頼んだ料理が山と並べられている。
様々な獣の串焼き肉。しかも味付けは1種類ではなく、塩コショウのものとハーブをきかせたものとがあるらしい。ハーブの爽やかな香りが肉の脂の匂いと混ざって食欲をそそる。
その隣の皿にはハムやソーセージが山と盛られている。チーズやドライフルーツが盛られた皿もあり、アリアちゃんが嬉しそうに手元の皿に取り分けている。
パンもふんわりとした白パンが盛られ、果実で作ったジャムが添えてある。あれは贅沢品だ。
僕がいつも食べているのは一番安い日替わりの定食で、ローストした肉かソーセージに黒パンが添えてある。あとは野菜がたっぷり入ったスープが付いてきてそれで腹を膨らせている。
「はい、これラウルおにいちゃんの分ーー」
アリアちゃんが、たった今盛り付けていた皿を僕の目の前に置いてくれた。
「ええ?! いいの?」
「ここは俺たちの奢りだ。アリアを助けてくれたそうだな。セリオンから聞いた」
ジャウマと名乗った赤毛の男が、エールのジョッキを傾けながらそう言った。
その隣で黙って白ワインに口を付けていたセリオンさんは、視線をこちらに向けて軽く会釈をした。
アリアちゃんは僕の隣の席にちょこんと座る。そして僕が皿の料理に手をつけるのを期待するような目で待っている。
彼女を挟んでその隣の席には、あの怖そうに見えていた薄茶の髪の男――ヴィジェスさんが座り、アリアちゃんの皿に載った肉を一口大に切ってあげている。今は全く怖そうには見えない。
どうやらアリアちゃんはセリオンさんだけでなくこの3人全員を『パパ』と呼んでいるらしい。でも彼らの誰もアリアちゃんとは似ていない。4人とも髪の色も瞳の色も違う。何より種族が違う。男3人は見た感じは人間で、アリアちゃんは兎の耳を持つ獣人だ。
なんだか不思議な光景だ……
一度そう思ってから、いやいやと心の中で首を振った。
僕の家族だって互いに似ていなかったし、彼らと同じように種族だって違っていた。僕と妹は黒い髪。でも両親は二人とも茶色の髪で。僕と両親は人間だったけれど、妹に至ってはアリアちゃんのように獣人だった。
血のつながりだけが家族じゃあない。きっと事情があるんだろう。
彼らの言葉に甘えて、何よりもアリアちゃんの期待のまなざしに負けて、遠慮なくご相伴に与ることにした。
食事をしながら話を聞くと、4人はやはり旅の途中で、3人共Aランクの冒険者だそうだ。すごい……
雄弁に話しているのは主にヴィジェスさんとアリアちゃんで、ジャウマさんも相槌を打ちながらほど良く話に加わっているけれど、セリオンさんは殆ど口を挟まない。3人に話を振られてようやく口を開く感じで、賑やかに話をするのはあまり得意ではないらしい。
テーブルの料理があらかた無くなった頃に、ジャウマさんがご機嫌顔で僕に話しかけてきた。
「そうだ、坊主。礼も兼ねて、さっきの依頼、俺たちが受けてやろうか?」
さっきのって…… あれが僕が出した依頼だと、バレていたのか……
「それは有難いですけど…… 僕にこれ以上の報酬は出せませんから……」
『悪魔の森』の奥への護衛依頼。危険が伴う為、必須ランクはA以上。確かに彼らはその条件に合う。
でもこの依頼の報酬として用意している額は、護衛一人分のものだ。彼らは二人組どころか、三人組で。尚更この金額じゃあ割に合わないだろう。
「俺たちはアリアも連れていく。一人分はこいつの守り役だ。だから、実際に護衛の役をできるのは、俺とあともう一人だろう。まあ、その分はアリアを助けてくれた礼だと思ってくれ」
ジャウマさんもそう言ってくれる。でもそれでも破格すぎるし、良いんだろうか……
「あと、護衛の最中に倒した魔獣の肉はこっちで貰ってもいいか? 何せうちには大食らいが居るからな」
そう言って、ヴィジェスさんはジャウマさんを指さす。指をさされた彼は不満そうに眉を顰めた。
本当なら、護衛の最中に倒した獲物は雇い主の物になる。それを彼らに渡すという条件なら確かに依頼報酬の代わりにもなるだろう。
「それで、いいのなら……」
「決まりだな」
ヴィジェスさんがニヤリと笑うと、まるで悪人のような笑い顔になった。
* * *
「泊まる場所まで世話してもらって。悪いな」
「いえ。どうせこの家には僕しかいませんから」
そう言って、彼らを町の外れにある僕の家に迎え入れる。壁に付いている照明のスイッチに軽く魔力を流すと、家の中に明かりがついた。
一階の部屋はがらんとしていて殆ど家具もない。かろうじて大きめのテーブルと椅子だけは置いてあるくらいだ。
「この部屋の家具はみんな売ってしまったんです…… でも風呂は使えますし、二階の部屋には寝具が残っています」
「家族は…… 今は居ないのか?」
ジャウマさんが部屋を見回しながら言った。
「……はい」
「訳ありなんだな?」
その言葉に、黙って頷いた。
テーブルの上には、彼らが頼んだ料理が山と並べられている。
様々な獣の串焼き肉。しかも味付けは1種類ではなく、塩コショウのものとハーブをきかせたものとがあるらしい。ハーブの爽やかな香りが肉の脂の匂いと混ざって食欲をそそる。
その隣の皿にはハムやソーセージが山と盛られている。チーズやドライフルーツが盛られた皿もあり、アリアちゃんが嬉しそうに手元の皿に取り分けている。
パンもふんわりとした白パンが盛られ、果実で作ったジャムが添えてある。あれは贅沢品だ。
僕がいつも食べているのは一番安い日替わりの定食で、ローストした肉かソーセージに黒パンが添えてある。あとは野菜がたっぷり入ったスープが付いてきてそれで腹を膨らせている。
「はい、これラウルおにいちゃんの分ーー」
アリアちゃんが、たった今盛り付けていた皿を僕の目の前に置いてくれた。
「ええ?! いいの?」
「ここは俺たちの奢りだ。アリアを助けてくれたそうだな。セリオンから聞いた」
ジャウマと名乗った赤毛の男が、エールのジョッキを傾けながらそう言った。
その隣で黙って白ワインに口を付けていたセリオンさんは、視線をこちらに向けて軽く会釈をした。
アリアちゃんは僕の隣の席にちょこんと座る。そして僕が皿の料理に手をつけるのを期待するような目で待っている。
彼女を挟んでその隣の席には、あの怖そうに見えていた薄茶の髪の男――ヴィジェスさんが座り、アリアちゃんの皿に載った肉を一口大に切ってあげている。今は全く怖そうには見えない。
どうやらアリアちゃんはセリオンさんだけでなくこの3人全員を『パパ』と呼んでいるらしい。でも彼らの誰もアリアちゃんとは似ていない。4人とも髪の色も瞳の色も違う。何より種族が違う。男3人は見た感じは人間で、アリアちゃんは兎の耳を持つ獣人だ。
なんだか不思議な光景だ……
一度そう思ってから、いやいやと心の中で首を振った。
僕の家族だって互いに似ていなかったし、彼らと同じように種族だって違っていた。僕と妹は黒い髪。でも両親は二人とも茶色の髪で。僕と両親は人間だったけれど、妹に至ってはアリアちゃんのように獣人だった。
血のつながりだけが家族じゃあない。きっと事情があるんだろう。
彼らの言葉に甘えて、何よりもアリアちゃんの期待のまなざしに負けて、遠慮なくご相伴に与ることにした。
食事をしながら話を聞くと、4人はやはり旅の途中で、3人共Aランクの冒険者だそうだ。すごい……
雄弁に話しているのは主にヴィジェスさんとアリアちゃんで、ジャウマさんも相槌を打ちながらほど良く話に加わっているけれど、セリオンさんは殆ど口を挟まない。3人に話を振られてようやく口を開く感じで、賑やかに話をするのはあまり得意ではないらしい。
テーブルの料理があらかた無くなった頃に、ジャウマさんがご機嫌顔で僕に話しかけてきた。
「そうだ、坊主。礼も兼ねて、さっきの依頼、俺たちが受けてやろうか?」
さっきのって…… あれが僕が出した依頼だと、バレていたのか……
「それは有難いですけど…… 僕にこれ以上の報酬は出せませんから……」
『悪魔の森』の奥への護衛依頼。危険が伴う為、必須ランクはA以上。確かに彼らはその条件に合う。
でもこの依頼の報酬として用意している額は、護衛一人分のものだ。彼らは二人組どころか、三人組で。尚更この金額じゃあ割に合わないだろう。
「俺たちはアリアも連れていく。一人分はこいつの守り役だ。だから、実際に護衛の役をできるのは、俺とあともう一人だろう。まあ、その分はアリアを助けてくれた礼だと思ってくれ」
ジャウマさんもそう言ってくれる。でもそれでも破格すぎるし、良いんだろうか……
「あと、護衛の最中に倒した魔獣の肉はこっちで貰ってもいいか? 何せうちには大食らいが居るからな」
そう言って、ヴィジェスさんはジャウマさんを指さす。指をさされた彼は不満そうに眉を顰めた。
本当なら、護衛の最中に倒した獲物は雇い主の物になる。それを彼らに渡すという条件なら確かに依頼報酬の代わりにもなるだろう。
「それで、いいのなら……」
「決まりだな」
ヴィジェスさんがニヤリと笑うと、まるで悪人のような笑い顔になった。
* * *
「泊まる場所まで世話してもらって。悪いな」
「いえ。どうせこの家には僕しかいませんから」
そう言って、彼らを町の外れにある僕の家に迎え入れる。壁に付いている照明のスイッチに軽く魔力を流すと、家の中に明かりがついた。
一階の部屋はがらんとしていて殆ど家具もない。かろうじて大きめのテーブルと椅子だけは置いてあるくらいだ。
「この部屋の家具はみんな売ってしまったんです…… でも風呂は使えますし、二階の部屋には寝具が残っています」
「家族は…… 今は居ないのか?」
ジャウマさんが部屋を見回しながら言った。
「……はい」
「訳ありなんだな?」
その言葉に、黙って頷いた。
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