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第四章
閑話3 アリアのおねだり(後編)
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テラスにある丸テーブルを、アリアちゃんとヴィーさんと僕との3人で囲むように座った。ここから見える光景の素晴らしさと、これから食べるケーキへの期待で、アリアちゃんはずっとニコニコとしっぱなしだ。
ヴィーさんとアリアちゃんが、一つのメニューを覗き込んでいるのを見て、僕もメニューを広げた。
といっても、ご馳走になる身だし、遠慮してほどほどにしないとな。そう思っていた僕の心配を余所に、二人はあれこれと、僕の分も含めて注文するものを決めていく。尋ねられたのは紅茶にミルクを使うかどうかくらいだった。
しばらくして、給仕の女性が2人がかりで持ってきた皿を見て、ついごくりと唾を飲み込んだ。
目の前に置かれた白い皿には、ふわっふわのパンケーキが。その上にたっぷりのクリームとベリーの赤いソースがかかっている。
隣の皿に載っているのはチョコレートのケーキだ。これには酒が使ってあるそうで、アリアちゃんの前には代わりにイチゴのタルトが置いてある。
3人で食べる分だろう、テーブルの真ん中に置かれたのは果物の盛り合わせだ。見たことが無い果物まで盛ってある。
目の前で注いでくれた紅茶に砂糖を入れようとして、ヴィーさんに止められた。
「ケーキを食べてからの方がいいかもしれないぜ」
クリームをたっぷり載せたパンケーキをほおばる。口に甘さが広がった所で、まだ少し熱い紅茶をふぅと吹いて口に少し注いだ。
なるほど。パンケーキはもちろん美味しいのだけれど、たくさんのクリームの甘さが口の中に絡みつく。そこでストレートの紅茶を含んで口の中の甘さを馴染ませると、次の一口も甘さを楽しめる。
ヴィーさんが紅茶に砂糖を入れるのを止めたのはこういう理由かと、納得した。
「今日はいつもより、たくさんだねぇ」
アリアちゃんは口の横にベリーのソースをつけたまま、フォークに刺したパンケーキをもう一口頬張った。
「そうだなあ」
ヴィーさんは、ニコニコと笑いながら一言だけ答えた。
いつもなら、やけに雄弁なヴィーさんがそれだけしか言わなかったのが、ちょっとだけ気になった。
* * *
夜、ヴィーさんはいつものように酒場に飲みに出かけた。アリアちゃんが風呂で席を外しているタイミングで、セリオンさんに話しかける。
「今日はありがとうございます。すみません、僕までごちそうになってしまって」
「ああ、本当にいいんだ。気にするな」
セリオンさんはそう答えてから、少し考えるようにして、もう一度僕の方を見た。
「実はこういう時の為に、ジャウマからアリアの分の金を預かっている」
「へっ!?」
驚いて、ジャウマさんの方を見る。壁際で装備の手入れをしていたジャウマさんは、顔をあげて答えた。
「ああ、その通りだ。アリアの買い物をするのは大抵はヴィーの役目になるからな。でも最初からアイツに金を渡しておくと、全部飲み代で使ってしまう」
ああ、それはよくわかる。きっとその通りだ。
「でもって、アイツは懐が軽くなると、アリアをダシにしてセリオンに金をせびるんだ」
「まあ、いつものことだな。二人と違って、私は夜の酒場には行かないので、金を余らせていると思われているらしい」
「だから、最初からその分を見越して、セリオンに余計に金を渡してある。だから、あれはちゃんと元からアリアの為の金だ。アリアが望んで、アリアが喜んだのならそれでいいんだ」
二人の話を聞いて、合点がいった。
朝にはヴィーさんのことを調子よく上手くやってるもんだなあと思っていた。でも違った。ジャウマさんとセリオンさんの方が何枚も上手だ。
セリオンさんがふっと軽く鼻で笑ってから言う。
「といっても、飲み代や自分の為の金を私にねだってくるようなことはしない。求めてくるのはいつもアリアの為に使う金だ。まあ、ヴィジェスなりにそこはきちんとラインをひいているのだろう」
その時、扉の開く音がして、風呂上がりで濡れ髪のアリアちゃんが部屋に飛び込んできた。
「なあにー? アリアの話ー?」
「ああ、今日のケーキの話をしていた。美味しかったか?」
そう尋ねるジャウマさんに、アリアちゃんが嬉しそうにしがみつく。
「うんー、おいしかったーー」
「アリア、髪が塗れたままだと風邪をひく。乾かしてやるから、こちらに来なさい」
その言葉に、今度はセリオンさんの膝にちょこんと座る。セリオンさんもほんの少しだけど、表情を緩めている。
ジャウマさんたちパパ3人のアリアちゃんへの接し方はそれぞれ違っている。でも3人ともが、皆アリアちゃんを大切に思っていることを、僕は良く知っている。
そう言えば、アリアちゃんは僕のことを「ラウルおにいちゃん」と呼ぶ。でも僕のことを「兄」だと思っているわけではないみたいだ。
アリアちゃんにとって、僕はいったい何なんだろう……
セリオンさんが風魔法でアリアちゃんの髪を乾かしている様子を見ながら、ふとそんなことを考えた。
====================
ギルバート様(@Gillbert1914)より
ヴィーさんとアリアちゃんが、一つのメニューを覗き込んでいるのを見て、僕もメニューを広げた。
といっても、ご馳走になる身だし、遠慮してほどほどにしないとな。そう思っていた僕の心配を余所に、二人はあれこれと、僕の分も含めて注文するものを決めていく。尋ねられたのは紅茶にミルクを使うかどうかくらいだった。
しばらくして、給仕の女性が2人がかりで持ってきた皿を見て、ついごくりと唾を飲み込んだ。
目の前に置かれた白い皿には、ふわっふわのパンケーキが。その上にたっぷりのクリームとベリーの赤いソースがかかっている。
隣の皿に載っているのはチョコレートのケーキだ。これには酒が使ってあるそうで、アリアちゃんの前には代わりにイチゴのタルトが置いてある。
3人で食べる分だろう、テーブルの真ん中に置かれたのは果物の盛り合わせだ。見たことが無い果物まで盛ってある。
目の前で注いでくれた紅茶に砂糖を入れようとして、ヴィーさんに止められた。
「ケーキを食べてからの方がいいかもしれないぜ」
クリームをたっぷり載せたパンケーキをほおばる。口に甘さが広がった所で、まだ少し熱い紅茶をふぅと吹いて口に少し注いだ。
なるほど。パンケーキはもちろん美味しいのだけれど、たくさんのクリームの甘さが口の中に絡みつく。そこでストレートの紅茶を含んで口の中の甘さを馴染ませると、次の一口も甘さを楽しめる。
ヴィーさんが紅茶に砂糖を入れるのを止めたのはこういう理由かと、納得した。
「今日はいつもより、たくさんだねぇ」
アリアちゃんは口の横にベリーのソースをつけたまま、フォークに刺したパンケーキをもう一口頬張った。
「そうだなあ」
ヴィーさんは、ニコニコと笑いながら一言だけ答えた。
いつもなら、やけに雄弁なヴィーさんがそれだけしか言わなかったのが、ちょっとだけ気になった。
* * *
夜、ヴィーさんはいつものように酒場に飲みに出かけた。アリアちゃんが風呂で席を外しているタイミングで、セリオンさんに話しかける。
「今日はありがとうございます。すみません、僕までごちそうになってしまって」
「ああ、本当にいいんだ。気にするな」
セリオンさんはそう答えてから、少し考えるようにして、もう一度僕の方を見た。
「実はこういう時の為に、ジャウマからアリアの分の金を預かっている」
「へっ!?」
驚いて、ジャウマさんの方を見る。壁際で装備の手入れをしていたジャウマさんは、顔をあげて答えた。
「ああ、その通りだ。アリアの買い物をするのは大抵はヴィーの役目になるからな。でも最初からアイツに金を渡しておくと、全部飲み代で使ってしまう」
ああ、それはよくわかる。きっとその通りだ。
「でもって、アイツは懐が軽くなると、アリアをダシにしてセリオンに金をせびるんだ」
「まあ、いつものことだな。二人と違って、私は夜の酒場には行かないので、金を余らせていると思われているらしい」
「だから、最初からその分を見越して、セリオンに余計に金を渡してある。だから、あれはちゃんと元からアリアの為の金だ。アリアが望んで、アリアが喜んだのならそれでいいんだ」
二人の話を聞いて、合点がいった。
朝にはヴィーさんのことを調子よく上手くやってるもんだなあと思っていた。でも違った。ジャウマさんとセリオンさんの方が何枚も上手だ。
セリオンさんがふっと軽く鼻で笑ってから言う。
「といっても、飲み代や自分の為の金を私にねだってくるようなことはしない。求めてくるのはいつもアリアの為に使う金だ。まあ、ヴィジェスなりにそこはきちんとラインをひいているのだろう」
その時、扉の開く音がして、風呂上がりで濡れ髪のアリアちゃんが部屋に飛び込んできた。
「なあにー? アリアの話ー?」
「ああ、今日のケーキの話をしていた。美味しかったか?」
そう尋ねるジャウマさんに、アリアちゃんが嬉しそうにしがみつく。
「うんー、おいしかったーー」
「アリア、髪が塗れたままだと風邪をひく。乾かしてやるから、こちらに来なさい」
その言葉に、今度はセリオンさんの膝にちょこんと座る。セリオンさんもほんの少しだけど、表情を緩めている。
ジャウマさんたちパパ3人のアリアちゃんへの接し方はそれぞれ違っている。でも3人ともが、皆アリアちゃんを大切に思っていることを、僕は良く知っている。
そう言えば、アリアちゃんは僕のことを「ラウルおにいちゃん」と呼ぶ。でも僕のことを「兄」だと思っているわけではないみたいだ。
アリアちゃんにとって、僕はいったい何なんだろう……
セリオンさんが風魔法でアリアちゃんの髪を乾かしている様子を見ながら、ふとそんなことを考えた。
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ギルバート様(@Gillbert1914)より
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