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第五章
閑話5 狭間にて見る夢
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「そんでね、その時にジャウパパがねーー」
僕と料理をしている時も、アリアちゃんは良く話して良く笑う。
主に野営の時、皆の食事の準備をするのは僕とアリアちゃんの仕事だ。驚くことに、大人の男性3人は、料理が殆どできない。
「アリアー、肉を持って来たぞ」
その3人で狩ってきた獣の肉を捌くのはジャウマさんの役目だ。ジャウマさんはアリアちゃんたちと出会う前には冒険者をしていたそうだ。獲って来た魔獣を捌く役目も担っていたそうで、今日のワイバーンも、手早く綺麗に捌いてくれた。
これが料理をする段になると、何故か不器用になるから本当に不思議だ。
ヴィーさんは水汲みをしてくれたけど、その後すぐにアリアちゃんに追い払われた。
「ヴィーパパはつまみ食いしようとするから邪魔なんだもん」
口を尖らせてアリアちゃんが言う。それ、もしもヴィーさんに聞こえてたら、泣いちゃうんじゃないかなぁ。
セリオンさんも料理は苦手らしい。というか、自分で料理をした事がなかったらしい。皆と出会ってから、生まれて初めて料理をしたのだそうだ。その結果がどうだったかは、今のこの状況を見ればお察しだろう。
「ラウルおにいちゃんは料理も上手だよね。私、一緒にお料理できてうれしいーー」
アリアちゃんは僕に向かって満面の笑みを見せる。
少しだけ、ほんの少しだけ、その笑顔で妹のことを思い出した。
あの頃……この仲間たちと出会うもっと前。まだ僕には家族が居た。孤児だった僕を引き取ってくれた、優しい両親。そして僕と同じく引き取られた、血の繋がらない妹。
全て、失ってしまった思い出たちだ。今の僕には、その両親も妹もいない。
それどころか妹の正体は『黒い魔獣』で、僕の妹としてそばにいることで、僕の力を奪っていたらしい。そしてその妹に優しかった両親は殺され、『黒い魔獣』の正体を現した妹は、ジャウマさんたちに倒され……
僕は独りぼっちになった。
そして独りぼっちになった僕を、彼らは『仲間』だと言って受け入れてくれた。
* * *
「あー、食った食った!」
ジャウマさんが満足そうに言うと、「お前は食いすぎなんだよ」とヴィーさんのツッコミが入る。そう言うヴィーさんも僕の倍は食べていたけれど。
セリオンさんは、アリアちゃんにペースを合わせるようにゆっくりと食べている。アリアちゃんが食べ終わるのを見て、ようやく器を置くと僕に向けて声をかけた。
「ラウルくん。美味しい料理をありがとう。後はあいつらに片付けさせよう」
「いやいや、後片付けも僕がやりますよ。皆さんのおかげで、僕は付いていくだけで済んでますから、少しでも休んでいてください」
「そっかあ? 悪いな」
僕の言葉に、ヴィーさんがニヤニヤとしながら応えた。
「代わりに、じゃあないが、何か足りない物や欲しい物があったら、遠慮せずに言ってくれ。ラウルも仲間なんだからな」
ジャウマさんの申し出に、うーんと少し考える。
「それなら、料理用の買い物がしたいです」
「おかいもの!!」
「うん、今まで使ってなかったような、スパイスとかあると嬉しいんだけど……」
こうして料理を任せてくれているんだし、せっかくだし皆には美味しい料理を作って食べてもらいたい。
「よし、じゃあ次の町で色々と見に行こうな!」
そう言ってヴィーさんはアリアちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。あんなに強く撫でたら、髪がぐちゃぐちゃになっちゃうんじゃないかな? でもアリアちゃんはとっても嬉しそうだった。
* * *
「今夜は俺たちが交代で見張りをするから、ラウルは早めに寝るといい」
今夜は、とジャウマさんは言ったけれど、今日の夜だけのことではない。僕の故郷を出てからの毎晩、そんな風に言って、夜には僕がしっかりと休めるようにしてくれる。
今日もセリオンさんが寝る場所を支度してくれた。どこから出したのか、いつの間にか柔らかそうな毛布が用意してある。
「ラウルおにいちゃん、一緒にねようー?」
そう言って、アリアちゃんが僕の手をとって誘った。
「一緒だと、あたたかいよーー」
アリアちゃんの隣に横になると、そう言って僕にすりよってくる。自分にかかっている毛布をかけてあげると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
そのまま、僕の頬をぺろりと舐める。
うん? ……ぺろり?
「クゥ!」
……その声でぼんやりと意識を取り戻す。これはアリアちゃんの声じゃない。
そっと目を開けると、目の前にクーの鼻面があった。どうやら、僕の頬を舐めたのはコイツらしい。
「起きたか。まだかかるからな、もう少し寝ていてもいいぞ」
まだ眠い目をこする僕に、セリオンさんが声をかけた。
そっと起き上がって、今いる場所を確認するように周りを見回す。
ここは馬車の中。馬車と言っても、馬に引かれているわけではないし、街道を走っているわけでもない。
僕の隣で眠るアリアちゃんをじっと見る。あれから、まだ彼女はずっと眠っている。
眠りっぱなしのアリアちゃんをそっと運ぶ為に、ジャウマさんたちはどこからか中古の馬車を都合してきた。
そして大鳥の姿になったヴィーさんが、その馬車を大きな足で掴んで飛び上がった。
つまり、ここは空の上だ。
空気の冷たさで、ぶるりと体が震える。夜でもここまで冷えるような季節ではないはずだ。むしろ毛布一枚で過ごせるくらい、まだまだ温かいはずなのに。
「空の上は、地上よりも空気が冷たいんだ。その上、寒い地方に向かって飛んでいるからな」
そう言ってセリオンさんは、マジックバッグからもう一枚毛布を取り出して、手渡してくれる。アリアちゃんと、自分にかかる様に毛布を広げると、僕らの間にクーがごそごそと入り込んできた。
「空の上ではやれることは特にないからな。いまのうちにもう少し休んでおくといい。城が近くなったら声をかけてあげよう」
……城……
僕らは今、アリアちゃんの城に向かっているのだそうだ。
皆にとっては『帰る場所』で、僕とっては『初めての場所』だ。
わくわくして嬉しいような、でも何故か少しだけ寂しいような。そんな複雑な気持ちを抱きながら、もう一度毛布にくるまって目を閉じた。
===============
みつなつ様(@TBvqOeLVDKbS0UO)より
天乃月姫様(@shouseru1)より
僕と料理をしている時も、アリアちゃんは良く話して良く笑う。
主に野営の時、皆の食事の準備をするのは僕とアリアちゃんの仕事だ。驚くことに、大人の男性3人は、料理が殆どできない。
「アリアー、肉を持って来たぞ」
その3人で狩ってきた獣の肉を捌くのはジャウマさんの役目だ。ジャウマさんはアリアちゃんたちと出会う前には冒険者をしていたそうだ。獲って来た魔獣を捌く役目も担っていたそうで、今日のワイバーンも、手早く綺麗に捌いてくれた。
これが料理をする段になると、何故か不器用になるから本当に不思議だ。
ヴィーさんは水汲みをしてくれたけど、その後すぐにアリアちゃんに追い払われた。
「ヴィーパパはつまみ食いしようとするから邪魔なんだもん」
口を尖らせてアリアちゃんが言う。それ、もしもヴィーさんに聞こえてたら、泣いちゃうんじゃないかなぁ。
セリオンさんも料理は苦手らしい。というか、自分で料理をした事がなかったらしい。皆と出会ってから、生まれて初めて料理をしたのだそうだ。その結果がどうだったかは、今のこの状況を見ればお察しだろう。
「ラウルおにいちゃんは料理も上手だよね。私、一緒にお料理できてうれしいーー」
アリアちゃんは僕に向かって満面の笑みを見せる。
少しだけ、ほんの少しだけ、その笑顔で妹のことを思い出した。
あの頃……この仲間たちと出会うもっと前。まだ僕には家族が居た。孤児だった僕を引き取ってくれた、優しい両親。そして僕と同じく引き取られた、血の繋がらない妹。
全て、失ってしまった思い出たちだ。今の僕には、その両親も妹もいない。
それどころか妹の正体は『黒い魔獣』で、僕の妹としてそばにいることで、僕の力を奪っていたらしい。そしてその妹に優しかった両親は殺され、『黒い魔獣』の正体を現した妹は、ジャウマさんたちに倒され……
僕は独りぼっちになった。
そして独りぼっちになった僕を、彼らは『仲間』だと言って受け入れてくれた。
* * *
「あー、食った食った!」
ジャウマさんが満足そうに言うと、「お前は食いすぎなんだよ」とヴィーさんのツッコミが入る。そう言うヴィーさんも僕の倍は食べていたけれど。
セリオンさんは、アリアちゃんにペースを合わせるようにゆっくりと食べている。アリアちゃんが食べ終わるのを見て、ようやく器を置くと僕に向けて声をかけた。
「ラウルくん。美味しい料理をありがとう。後はあいつらに片付けさせよう」
「いやいや、後片付けも僕がやりますよ。皆さんのおかげで、僕は付いていくだけで済んでますから、少しでも休んでいてください」
「そっかあ? 悪いな」
僕の言葉に、ヴィーさんがニヤニヤとしながら応えた。
「代わりに、じゃあないが、何か足りない物や欲しい物があったら、遠慮せずに言ってくれ。ラウルも仲間なんだからな」
ジャウマさんの申し出に、うーんと少し考える。
「それなら、料理用の買い物がしたいです」
「おかいもの!!」
「うん、今まで使ってなかったような、スパイスとかあると嬉しいんだけど……」
こうして料理を任せてくれているんだし、せっかくだし皆には美味しい料理を作って食べてもらいたい。
「よし、じゃあ次の町で色々と見に行こうな!」
そう言ってヴィーさんはアリアちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。あんなに強く撫でたら、髪がぐちゃぐちゃになっちゃうんじゃないかな? でもアリアちゃんはとっても嬉しそうだった。
* * *
「今夜は俺たちが交代で見張りをするから、ラウルは早めに寝るといい」
今夜は、とジャウマさんは言ったけれど、今日の夜だけのことではない。僕の故郷を出てからの毎晩、そんな風に言って、夜には僕がしっかりと休めるようにしてくれる。
今日もセリオンさんが寝る場所を支度してくれた。どこから出したのか、いつの間にか柔らかそうな毛布が用意してある。
「ラウルおにいちゃん、一緒にねようー?」
そう言って、アリアちゃんが僕の手をとって誘った。
「一緒だと、あたたかいよーー」
アリアちゃんの隣に横になると、そう言って僕にすりよってくる。自分にかかっている毛布をかけてあげると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
そのまま、僕の頬をぺろりと舐める。
うん? ……ぺろり?
「クゥ!」
……その声でぼんやりと意識を取り戻す。これはアリアちゃんの声じゃない。
そっと目を開けると、目の前にクーの鼻面があった。どうやら、僕の頬を舐めたのはコイツらしい。
「起きたか。まだかかるからな、もう少し寝ていてもいいぞ」
まだ眠い目をこする僕に、セリオンさんが声をかけた。
そっと起き上がって、今いる場所を確認するように周りを見回す。
ここは馬車の中。馬車と言っても、馬に引かれているわけではないし、街道を走っているわけでもない。
僕の隣で眠るアリアちゃんをじっと見る。あれから、まだ彼女はずっと眠っている。
眠りっぱなしのアリアちゃんをそっと運ぶ為に、ジャウマさんたちはどこからか中古の馬車を都合してきた。
そして大鳥の姿になったヴィーさんが、その馬車を大きな足で掴んで飛び上がった。
つまり、ここは空の上だ。
空気の冷たさで、ぶるりと体が震える。夜でもここまで冷えるような季節ではないはずだ。むしろ毛布一枚で過ごせるくらい、まだまだ温かいはずなのに。
「空の上は、地上よりも空気が冷たいんだ。その上、寒い地方に向かって飛んでいるからな」
そう言ってセリオンさんは、マジックバッグからもう一枚毛布を取り出して、手渡してくれる。アリアちゃんと、自分にかかる様に毛布を広げると、僕らの間にクーがごそごそと入り込んできた。
「空の上ではやれることは特にないからな。いまのうちにもう少し休んでおくといい。城が近くなったら声をかけてあげよう」
……城……
僕らは今、アリアちゃんの城に向かっているのだそうだ。
皆にとっては『帰る場所』で、僕とっては『初めての場所』だ。
わくわくして嬉しいような、でも何故か少しだけ寂しいような。そんな複雑な気持ちを抱きながら、もう一度毛布にくるまって目を閉じた。
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みつなつ様(@TBvqOeLVDKbS0UO)より
天乃月姫様(@shouseru1)より
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