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彼女の側に居たい僕が選んだ転生先はぬいぐるみだった
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手違いで死んだ僕を転生させてくれると、女神様は言った。
転生先はどんなものでも良いと。なんなら無生物でもかまわないそうだ。
「なら、僕はぬいぐるみになりたいです」
「えっ?!」
僕には好きな女の子が居た。でも陰キャの僕には告白どころか話しかける事すらできなかった。
彼女と友達との会話を漏れ聞いて、彼女がぬいぐるみが好きで、いつも話し掛けたり、あまつさえ一緒に寝てるのだとも知った。
いいなぁ、羨ましい。だから、僕は……
「ぬいぐるみになって、彼女の一番近くに居られるようにしてください」
「ふーーん、変わった願いだねぇ。でも女神に二言はないよ。叶えてあげよう!」
そう言った女神様の手が光ると、僕の意識はすぅと遠のいて行った。
* * *
どうやら、僕は無事にぬいぐるみに転生出来たらしい。気がつくとまわりもぬいぐるみで囲まれていた。
でもなんだか、予想していたのと雰囲気が違う。てっきり、おもちゃ売り場でにも並べられるのだと思ってたのに。
ガラス越しに見える世界はやたらと賑やかで明るくて、でもおもちゃ屋の賑わいとはまた違う。そして自分は並べられているというより、転がされている感じだ。まわりのぬいぐるみの上に雑に置かれている。
学生のカップルらしい二人連れが、僕の居るガラスケースの中を覗き込んだ。
「ねー、アタシ、アレ欲しいーー」
「よっし! オレがとってやるよ!」
こ、これは……
ゲーセンのクレーンゲームだ!!
僕はクレーンゲームの景品のぬいぐるみに転生してしまった!!
上から僕を目掛けてクレーンのアームが襲いかかる。
僕がぬいぐるみになったのは、彼女の近くに居るためなんだ。ここで取られてたまるか!!
動かない筈のぬいぐるみの体をむりやり動かそうとあちこちに力をいれてみる。
アームに体があたった衝撃で、いい案配に転げてアームの届かぬ場所に行くことができた。
(いたっ)
うん?
転げた先で何かの声が聞こえたような気がした。
(誰か、ここにいるの?)
思わず、言葉にならない心の声で話しかけてみる。
(あ、あなたの声が聞こえる。もしかして、あなたも以前は人間だったの?)
声?の主は、僕が転げてぶつかった先にあるぬいぐるみだった。
そのぬいぐるみが告げた名前を聞いて驚いた。僕の好きな、あの彼女だった。
彼女も不慮の事故で亡くなったのだそうだ。
前世では優等生であるべく勉強ばかりさせられていた。もうそんな人生はいやだ。それなら大好きなぬいぐるみに転生させてもらいたい。そして、どうせなら行ったことのない場所に行きたいと、そう願った結果ここに置かれていたのだそうだ。
(ずっと勉強ばかりで、ゲーセンなんて行ったことがなかったから)
彼女はそう言った。
僕は名乗る事はできなかった。あの頃の陰キャだった頃の僕を知られたら、もうこんな風に彼女と話はできなくなるかもしれない。だから自分が誰だったかは覚えていないふりをして、彼女の話をたくさん聞いた。
僕らはクレーンから逃げながら、ショーケースの中でずっとずっと一緒に居た。
こうして、予想もしていなかった形で僕の願いは叶った。
あの日までは。
転生先はどんなものでも良いと。なんなら無生物でもかまわないそうだ。
「なら、僕はぬいぐるみになりたいです」
「えっ?!」
僕には好きな女の子が居た。でも陰キャの僕には告白どころか話しかける事すらできなかった。
彼女と友達との会話を漏れ聞いて、彼女がぬいぐるみが好きで、いつも話し掛けたり、あまつさえ一緒に寝てるのだとも知った。
いいなぁ、羨ましい。だから、僕は……
「ぬいぐるみになって、彼女の一番近くに居られるようにしてください」
「ふーーん、変わった願いだねぇ。でも女神に二言はないよ。叶えてあげよう!」
そう言った女神様の手が光ると、僕の意識はすぅと遠のいて行った。
* * *
どうやら、僕は無事にぬいぐるみに転生出来たらしい。気がつくとまわりもぬいぐるみで囲まれていた。
でもなんだか、予想していたのと雰囲気が違う。てっきり、おもちゃ売り場でにも並べられるのだと思ってたのに。
ガラス越しに見える世界はやたらと賑やかで明るくて、でもおもちゃ屋の賑わいとはまた違う。そして自分は並べられているというより、転がされている感じだ。まわりのぬいぐるみの上に雑に置かれている。
学生のカップルらしい二人連れが、僕の居るガラスケースの中を覗き込んだ。
「ねー、アタシ、アレ欲しいーー」
「よっし! オレがとってやるよ!」
こ、これは……
ゲーセンのクレーンゲームだ!!
僕はクレーンゲームの景品のぬいぐるみに転生してしまった!!
上から僕を目掛けてクレーンのアームが襲いかかる。
僕がぬいぐるみになったのは、彼女の近くに居るためなんだ。ここで取られてたまるか!!
動かない筈のぬいぐるみの体をむりやり動かそうとあちこちに力をいれてみる。
アームに体があたった衝撃で、いい案配に転げてアームの届かぬ場所に行くことができた。
(いたっ)
うん?
転げた先で何かの声が聞こえたような気がした。
(誰か、ここにいるの?)
思わず、言葉にならない心の声で話しかけてみる。
(あ、あなたの声が聞こえる。もしかして、あなたも以前は人間だったの?)
声?の主は、僕が転げてぶつかった先にあるぬいぐるみだった。
そのぬいぐるみが告げた名前を聞いて驚いた。僕の好きな、あの彼女だった。
彼女も不慮の事故で亡くなったのだそうだ。
前世では優等生であるべく勉強ばかりさせられていた。もうそんな人生はいやだ。それなら大好きなぬいぐるみに転生させてもらいたい。そして、どうせなら行ったことのない場所に行きたいと、そう願った結果ここに置かれていたのだそうだ。
(ずっと勉強ばかりで、ゲーセンなんて行ったことがなかったから)
彼女はそう言った。
僕は名乗る事はできなかった。あの頃の陰キャだった頃の僕を知られたら、もうこんな風に彼女と話はできなくなるかもしれない。だから自分が誰だったかは覚えていないふりをして、彼女の話をたくさん聞いた。
僕らはクレーンから逃げながら、ショーケースの中でずっとずっと一緒に居た。
こうして、予想もしていなかった形で僕の願いは叶った。
あの日までは。
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