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終わりへの旅
124 魔族領入り/デニス(2)
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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…前世(前・魔王討伐隊『英雄』のアシュリー)の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女
・デニス…Sランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。栗色の髪の長身の青年
・シアン…前・魔王討伐隊の一人で、今回の討伐隊の顧問役。リリアンに執心している。栗毛短髪の青年
・ジャスパー(メルヴィン)…教会の魔法使い。黒髪長身のメルヴィンの姿に化けている。
・ニール(ニコラス)…王族の一人で、前『英雄』クリストファーの息子。金髪翠眼の少年
・マーニャ(マーガレット)…教会の魔法使いで、先代の神巫女。金髪に紫の瞳を持つ美女
・アラン…ニールの元教育係の騎士。灰髪に紺の瞳の青年
====================
「これ以降は荷物が負担になる。無理ない速度で進もう。できるだけ糧食も大事にしていかないとな」
シアンさんの指示通り、昨日よりは無理のない速度で道を進む。だが、先ずジャスパーの息が上がり始めた。
魔法使いは、俺たちと違って体を動かすのは苦手だ。仕方ないだろう。
さほど進まぬうちに、少し早めの休憩をとる事になった。
「ジャスパー、少し荷物を持とうか?」
そうジャスパーに声をかけると、皆に菓子を配っていたリリアンがこちらを向いた。
「それでしたら、私が少し持ちましょうか?」
「いや、リリアンは自分の荷物で手いっぱいだろう?」
彼女は元々、かなりいいマジックバッグを持っていた。効果が切れている今は、普段との差で感じる負担もかなり大きいだろう。
だがリリアンは、少し首を傾げてみせた。
「いえ。私のは大丈夫です」
うん? 何が大丈夫なんだ??
「リリアンの荷物は少ないのか?」
なんとなく会話が聞こえたのだろう。試す様にニールがリリアンの背負っているバッグを軽く持ち上げた。
「え!? すげえ軽いぞ!!」
その声に、皆がリリアンの方を見た。
「リリアン、お前のマジックバッグは使えているのか?」
「そうみたいです。何故だか、理由はわかりませんが……」
「マジックバッグに使われているのは、私たち教会の魔法使いだけの魔法なのよ。私たちのバッグが使えるのなら、まだわかるのだけど」
腕を組みながら、マーニャが言った。
世の中に出回っているマジックバッグには2種類ある。
一つはダンジョンなどで見つかる物。性能はピンからキリまであって、良い物ほど当然高い値が付く。
もう一つは教会で作られる物。教会の魔法使いが作って売っている物もあれば、多額の寄付と一緒に鞄を持ち込む事で効果を付与してもらえる。でもこれらはダンジョンで見つかるもの程性能は良くはない。
「そう言えばリリアン、転移の時に『座標の魔法』を使っていたわよね。あれも本来なら教会だけの魔法なのだけど。貴女、もしかして私たちと同じ魔法を使えるの?」
「……はい、少しですが」
リリアンが言い難そうに出した答えに、マーニャは少し首を傾げた。
「この魔法は誰にでも使えるものではないわ。貴女、教会の『赤いお酒』は飲んでないわよね?」
『赤いお酒』?
俺には何の事だかはわからないが、リリアンはそれが何かを知っているようで、訊き返すでもなく黙って頷いた。
「私は元から使えるんです。教会の皆さんのように外部から取り入れたりせずとも……」
「どうして?」
「……おそらくですが、『獣人の神』の加護を受けているからではないかと……」
「今まで何百年と生きているけれど、そんな話は聞いたことがないわ。ジャスパー」
マーニャに名を呼ばれると、座り込んで休んでいたジャスパーがマーニャの横に来た。
「彼女の魔力を確認してみて」
「はい」
おもむろにリリアンの手を取ると、ぐいと引きよせる。
止める間もなかった。
あっという間にジャスパーの腕の中に捉えられ、彼女の小さな唇はジャスパーの唇で塞がれた。
====================
(メモ)
口移し(#50、#66)
神秘魔法(#29)
・リリアン…前世(前・魔王討伐隊『英雄』のアシュリー)の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女
・デニス…Sランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。栗色の髪の長身の青年
・シアン…前・魔王討伐隊の一人で、今回の討伐隊の顧問役。リリアンに執心している。栗毛短髪の青年
・ジャスパー(メルヴィン)…教会の魔法使い。黒髪長身のメルヴィンの姿に化けている。
・ニール(ニコラス)…王族の一人で、前『英雄』クリストファーの息子。金髪翠眼の少年
・マーニャ(マーガレット)…教会の魔法使いで、先代の神巫女。金髪に紫の瞳を持つ美女
・アラン…ニールの元教育係の騎士。灰髪に紺の瞳の青年
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「これ以降は荷物が負担になる。無理ない速度で進もう。できるだけ糧食も大事にしていかないとな」
シアンさんの指示通り、昨日よりは無理のない速度で道を進む。だが、先ずジャスパーの息が上がり始めた。
魔法使いは、俺たちと違って体を動かすのは苦手だ。仕方ないだろう。
さほど進まぬうちに、少し早めの休憩をとる事になった。
「ジャスパー、少し荷物を持とうか?」
そうジャスパーに声をかけると、皆に菓子を配っていたリリアンがこちらを向いた。
「それでしたら、私が少し持ちましょうか?」
「いや、リリアンは自分の荷物で手いっぱいだろう?」
彼女は元々、かなりいいマジックバッグを持っていた。効果が切れている今は、普段との差で感じる負担もかなり大きいだろう。
だがリリアンは、少し首を傾げてみせた。
「いえ。私のは大丈夫です」
うん? 何が大丈夫なんだ??
「リリアンの荷物は少ないのか?」
なんとなく会話が聞こえたのだろう。試す様にニールがリリアンの背負っているバッグを軽く持ち上げた。
「え!? すげえ軽いぞ!!」
その声に、皆がリリアンの方を見た。
「リリアン、お前のマジックバッグは使えているのか?」
「そうみたいです。何故だか、理由はわかりませんが……」
「マジックバッグに使われているのは、私たち教会の魔法使いだけの魔法なのよ。私たちのバッグが使えるのなら、まだわかるのだけど」
腕を組みながら、マーニャが言った。
世の中に出回っているマジックバッグには2種類ある。
一つはダンジョンなどで見つかる物。性能はピンからキリまであって、良い物ほど当然高い値が付く。
もう一つは教会で作られる物。教会の魔法使いが作って売っている物もあれば、多額の寄付と一緒に鞄を持ち込む事で効果を付与してもらえる。でもこれらはダンジョンで見つかるもの程性能は良くはない。
「そう言えばリリアン、転移の時に『座標の魔法』を使っていたわよね。あれも本来なら教会だけの魔法なのだけど。貴女、もしかして私たちと同じ魔法を使えるの?」
「……はい、少しですが」
リリアンが言い難そうに出した答えに、マーニャは少し首を傾げた。
「この魔法は誰にでも使えるものではないわ。貴女、教会の『赤いお酒』は飲んでないわよね?」
『赤いお酒』?
俺には何の事だかはわからないが、リリアンはそれが何かを知っているようで、訊き返すでもなく黙って頷いた。
「私は元から使えるんです。教会の皆さんのように外部から取り入れたりせずとも……」
「どうして?」
「……おそらくですが、『獣人の神』の加護を受けているからではないかと……」
「今まで何百年と生きているけれど、そんな話は聞いたことがないわ。ジャスパー」
マーニャに名を呼ばれると、座り込んで休んでいたジャスパーがマーニャの横に来た。
「彼女の魔力を確認してみて」
「はい」
おもむろにリリアンの手を取ると、ぐいと引きよせる。
止める間もなかった。
あっという間にジャスパーの腕の中に捉えられ、彼女の小さな唇はジャスパーの唇で塞がれた。
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(メモ)
口移し(#50、#66)
神秘魔法(#29)
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