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第十一話 真実
しおりを挟む[リニス視点]
後輩君とエーカ君と暮らし始めてから、2ヶ月が経った。
今日は後輩君がこの部屋の中にいない。
後輩君は魔物の狩りに出掛けている。
エーカ君は家の中にいる。
今日は歌姫としての仕事が休みみたいだ。
だから、僕達は紅茶を飲みながら、会話を楽しんでいた。
そろそろ昼食にしようと話していると僕達は光に包まれた。
光が収まると、僕達は知らない場所にいた。
そして、僕達の前には口から2本の牙を出し、顔色が悪い男が立っていた。
あれは吸血鬼。
何で、ここにいるんだ?
疑問を抱いているとエーカ君は黄緑色の扇を右手に持ち、僕を庇うように僕の前に立った。
「まさか、歌姫まで一緒とは。これは幸運だな」
「歌姫まで一緒?なら、狙いは僕か」
「ああ、その通りだ。脅されて、愛情を注がれなかった少女よ」
「脅されて?愛情?何を言っているんだ?僕はサーワリ侯爵家のお荷物でしかない」
「そうか、知らないのか。お前が1歳のときに脅されたのだ。この国の第1王子からな。サーワリ侯爵家の現当主と次期当主に、お前に愛情を注ぐなと。もし、愛情を注いだらお前のことを殺すと言われてな」
「それが真実だとして、何で君がそんなことを知っているんだ?」
吸血鬼はその質問には答えず、ただニヤリと笑った。
「考えてみろ」
暫し考えた僕は1つの答えが頭に浮かんできた。
「つまり、君が手伝ったと言うことか?」
「そうだ」
「でも、分からないな。契約を終わった僕を狙う意味が?」
「魔物研究者なら、吸血鬼の生態ぐらい知っているだろ?」
「僕の血か」
「正解だ。我は未熟な体の少女の血が大好きなのだ。第1王子から依頼を受けたときは2つ返事で承諾し、契約したさ。本当は第1王子を殺して、奪うつもりだったが、既に処刑されているから手間が無くなった。少し早いが、そろそろ頃合いだろう」
吸血鬼は舌で自分の唇を舐めた。
まるで、目の前にご馳走があるかのように。
「薬で体の成長を抑えて良かった。凄く美味そうだ。まぁ、お前はメインディッシュだから、先に歌姫から頂くが」
「鬼畜だな」
「何を言う?我は吸血鬼だぞ、人間のことは食料としてか見てないぞ」
「確かにそうだったな」
僕達が問答している間、ずっと警戒しているエーカ君が口を開いたのだ。
「リニス、大丈夫。私達には助けてくれる人がいる」
「そうだな、エーカ君。僕達には後輩君がいる」
「後輩?まさか、王立学園時代の後輩か?」
「ああ、そうだ」
「有り得ない。お前の後輩は召喚士で、そして1体しか契約出来ない無能の筈だ」
「僕は後輩君のことを無能だと思ったことは無いが、実力は僕達が保証する。なんせ、レッドドラゴンを一撃で倒す力を持っているからな。僕は後輩君のことを最強だと思っている」
「そんなことあるはずが」
吸血鬼が言い切る前に体が動き、立っていた場所から離れた。
その危機感知は素晴らしい。
次の瞬間、吸血鬼が元いた場所には矢が刺さっていたからだ。
速いな、君は。
本当に後輩君は素晴らしい。
前まではこの気持ちを伝えたいと思っていたけど、やっぱり君から好きと言って欲しいな。
単なる乙女心だが。
気が付けば、僕、いや、僕達を庇うように後輩君が立っていた。
元魔物研究者の僕と特殊進化したハリケーンバードのエーカ君を庇うように。
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